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異世界彼女は純和風  作者: 凪沙一人
始まりは夏
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玖葉 ‡ 色葉を守る

色葉だけのHERO

 朝、出たのが早かった分、上野に日帰りで戻れた。スマホで時間を見ると17時。電車の中で検索したら上野東照宮は、この時季は参拝だけなら17時半まで開いているはずだ。辿り着くと、チャラそうな男と目が合ってしまった。無視して通り過ぎようとして呼び止められた。絡まれている時間は無い。

「おいおい、急いで何処行きなさる? 」

 !? 見た目に反して今時ではない。

「貴方が将軍の言っていた… 」

 慌てて男に口を抑えられた。

「いけねぇなぁ。奴に聞かれたら元も子もねぇ。こっちの遊び人ってぇのは、こんな格好でいいのかい? 」

 格好は、これでいいが言葉遣いはダメダメだ。だからと言ってチャラ男の知り合いなんて居ない。イヤホンを渡してスマホで動画サイトのアニメやバラエティー、ドラマのそれっぽいシーンを見せた。

「なんだい、こいつは? 魔鏡みてぇなもんかい? 」

 言葉遣いを直させるのは、諦めた方が良さそうだ。

「で、どうすればいい? あと2日しかないんだ。」

「何もしなくていいぜ。」

「え? 」

「上様にも言われたろ。お前ぇさんは、自分の一番大切な人を守ればいい。今日は顔合わせだ。しっかり、やんな。」

 ドンと僕の背中を叩いて、男は姿を消した。結構、強めに叩かれたので転ぶかと思った。もう日も長い。夕暮れとはいえ、誰かに見られたら、どうするつもりだろう。消えたあいつはいいが、こっちは説明のしようがない。そういえば、名前を聞いてなかったな。そこから、真っ直ぐアパートに帰って玄関を開けた。

「何をしているっ! 」

 部屋の中には益田が居た。思わず名前を呼びそうになって止めた。僕が名前を知っている事を悟られてはいけない気がしたから。

「何って、君がその娘を連れて歩いていたから待ってたんだよ。こっちは魔法使いだ。こんな結界も無い場所、出入り自由に決まっているだろ? 」

 こっちの世界じゃ他人の家に勝手に出入りしちゃ駄目に決まっているだろうと言ってやりたいが、言うだけ無駄なのは目に見えている。

「期限は2日後だろ? 」

「それが予定が変わってね。いや、君が変えたと言うべきかな。何やらコソコソ動き回っていたようじゃないか。魔法も使えない劣等種が何をしようと知らないが、一応、念のため。この建物ごと消し去ってもいいんだけど、目立つ事はしたくないからね。そこの公園で待ってるよ。すぐに来い。」

 それだけ言って益田は姿を消した。

「な…直、短い間でしたが色葉は… 色葉は幸せ者でしたっ! 」

 いきなり声がしたかと思うと急須から色葉の気配が消えた。拙い。色葉はこっちの作戦なんか知らない。たとえ知っていたとしても、上野で会った男との予定は2日後だ。どうなるかは、分からない。それでも色葉を守るのは僕しかいない覚悟を決めて家を飛び出した。



「おやおや、一人で来たのかい? あの劣等種はどうした? 」

「あなたの目的は、あたしでしょ? おとなしく、ついていくから、この世界には関わらないでっ! 」

 色葉の叫びに益田は溜め息を吐いた。

「この世界には手を出さないさ。だけど、あの男は別だよ。色々と知り過ぎたからね。消えて貰わないと。都合良く、向こうから来たみたいだし。そうだ、君もどうせ消す予定だったから二人仲良く、一緒に消してあげるよ。優しいだろ? 」

「色葉っ! 」

「直、来ちゃ駄目っ! 」

 自分の一番大切な人を守る。どうするのか聞いてなかったな。でも、いちいち考えている場合じゃない。僕は色葉の前に飛び出すと両手を広げていた。

「どうして… どうして来たんですか… あたしなんかの為に… 」

「僕の一番大切な人だから。」

 色葉は僕背中に顔を埋めて泣いていた。

「ごめんなさい… 」

「なんで色葉が謝るんだ? 」

「あたしの魔力じゃ直を守れない… 」

 そんなやり取りを見ていた益田は痺れを切らしたらしい。

「こっちも忙しいんでね。そろそろ消すよ。魔瘴弾っ! 」

「せめて… 」

 僕の前に出ようとした色葉を僕は抱きすくめた。二人とも消されるなら、一緒にと。… 何も起きない? 振り返ると益田が倒れていた。そういえば将軍がくれた物は懐に入れたままだ。よく分からないけど、効果はあったみたいだ。

「きっ、貴様、何をした!? 」

 今、種明かしをする訳にはいかないと思った。

「言った筈だよ。色葉は僕が守るって。」

 僕は努めて冷静に言った。その方が自信ありげで、益田が焦ると思ったからだ。そして、それは案の定だった。益田は鬼のような形相をして立ち上がった。

「おのれ… おのれ劣等種。消えろ… 消えろ消えろ消えろぉ~っ! 」

 幸い益田はところ構わずではなく、確実に僕を狙っていた。そして、その攻撃の全てが同じ軌道を辿って益田に襲い掛かっていた。

「ハァハァ… 劣等種… いや、わずか1日で、何があったのか知らないが、抹殺、抹消ではなく、勝負だ。残りの全魔力を叩き込んでやる。反せるものなら反してみよっ! 」

 益田の放った魔力の塊は、やはり同じ軌道を逆戻りして益田を飲み込んだ。

「ゲフッ… きょ、今日の処は引き下がってやる。だ、だが、次こそは… 」

「おっと、手前ぇに次は無ぇよっ! 」

 それは上野の東照宮で聞いた声だった。季節外れの桜吹雪が巻き起こり、益田を巻き上げて時空の彼方へ消えて行った。

「2日後だって聞いてたから、遅れちまった。すまなかったな。お前ぇさんたち、怪我は無かったかい? 」

 どうやら、色葉を守る事は出来たようだ。

「益田は? 」

「あぁ、あいつはO.E.D.O.で縛に就く筈だ。お前さんのお陰で魔力、使い果たしてくれたからな。楽に送り返せたぜ。」

「あんたもO.E.D.O.の人間なんだろ? それなら、あんたも違法なんじゃないのか? 」

「おいおい、俺らまで違法になったら、あいつらは誰がお縄にするんだい? 逃げ放題になっちまうじゃねぇか。」

 確かに、こっちの警察が手に終える相手じゃない。それに捕まえたとしても、こちらから送り返す方法がないしな。

舞台が関東ローカルで_(._.)_

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