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異世界彼女は純和風  作者: 凪沙一人
O.E.D.O.
31/38

卅壱葉 ‡ 捜査

「ここ? 」

 さすがに旗本のE.D.O.屋敷となると大きい。と言っても北条さんの実家とそう変わらないか。裏の木戸がスッと開くと、中から夜汰朧が顔を出して手招きした。

「今、屋敷には旗本と三男が居ります。嫡男と次男は国本の様子。如何なされますか? 」

 如何と言われても、いきなりお縄という訳にはいかない。そもそも、僕には肩書きは有るが旗本を直接捕縛する権利は無い… 多分。素直に評定所に出頭するようなら、奉行たちも苦労はしないだろう。

「まずは親が三男の所業を知っているか確認だな。それによって詮議の内容も変わる。」

「それについては調べがついておりまする。旗本より寺社奉行、勘定奉行には根回しがされております。」

「つまり親もグルなのね。動かぬ証拠って奴が要るわね。」

 北条さんの言うことも尤もなのだが、ここまで来てそれも無い気はする。それに先に捕らえた元旗本の方も大人の事情で解き放たれたら、またO.E.D.O.の町に迷惑が掛かるというものだ。

「乗り込むか。」

 それが色葉の元に帰る最短距離な気がした。

「じゃ、そうしましょ。私も早く色葉ちゃんに会いたいしね。」

 どうやら、お見通しらしい。これだから北条さんは、侮れない。僕らのやり取りを夜汰朧はどう思っていたのやら。顔には全く出さないので量れない。まずは気づかれないといけない。僕は堂々と中庭に出た。まぁ、こっそり忍び込んでおいて、今さら堂々もないものだが。

「貴様、何奴!? ここを旗本、椿野四十郎様の屋敷と知っての狼藉かっ! 」

「その椿野と三男坊に用がある。呼んで来てもらえるかな? 」

「怪しい奴め。えぇぃ、曲者じゃ。出合え、出合えっ! 」

 騒ぎを聞きつけ襖が開き、中から三男坊が現れた。

「また会ったな。」

「貴様、あの時の!? 皆の者、此奴怪しげな魔法を使いおる。心して掛かれっ! 」

「源三郎様、此奴等から魔力など感じませぬが? 」

「儂も以前、そう思ってしてやられたのだ。」

 三男坊、源三郎の言葉に家来たちも身構える。自分たちより魔力が上の源三郎が、してやられたと言うのだから、そりゃ警戒もするか。

「どうせなら、椿野四十郎も呼んでもらえるかしら。」

 誰が相手でも、相変わらず北条さんはぶれないな。

「父上を呼び捨てにするとは無礼であろう。女、其処へ直れ。手撃ちにしてくれるっ! 」

「あら、前にしてやられたんでしょ? 学習能力が無いのかしら? 撃てるものなら撃ってらっしゃい。」

 北条さん、煽るなぁ。でも、挑発に乗ってくれれば、こちらの思うつぼだ。

「えぇぃ、騒がしい。何を騒いでおる? 」

 源三郎の後ろから裃姿の男が現れた。おそらく、彼が四十郎だろう。

「父上、此奴がお話しした怪しき魔法使いにございます。」

 僕は魔法使いじゃないんだがな。

「なるほど。その方ら、当家に仕官する気はないか? 」

「父上!? 」

 そりゃ、源三郎でなくても驚く。あ、北条さんは別のようだが。

「なぁに、見れば町人。我が子を驚かす程の魔力があるのなら何かの役にも立とう。何なら貴様らの祝言を当家で行ってやるぞ? 」

 これには、さすがの北条さんも噴いた。

「悪いけど、彼の許嫁は別に居るの。私たちが付き合ってるように見えるなんて見る目、無いのね。」

「僕も、その町人を苦しめるような悪人なんかに仕官するつもりは無いな。」

「おのれ、余を愚弄するとは不届き千万。真の旗本の魔力を思い知らせてくれようっ! 」

 多分、三男坊の源三郎より強いと言いたいんだろうな。

「あんたの魔力が通じると思うか? 」

「貴様は怪しげな魔法を使うらしいが、そっちの娘はどうかな? 」

 四十郎はいきなり北条さん目掛けて攻撃魔法を連発した。が、当たる訳もない。お陰で外壁に穴が空いてしまった。

「あらあら。下手な魔法は数撃っても当たらないみたいね? 」

「さては貴様ら、御禁制のバテレン妖術使いかっ!? 」

 やっぱり僕の持っている懐鏡の能力は旗本でも理解の範疇ではないらしい。

「おやおや、何の騒ぎですかな? 町方より大きな音がしたとの知らせに来てみれば壁に大穴とは。」

「よい所に来た。遠山、此奴等め、当屋敷に忍び込んだ賊じゃ。おそらくは御禁制のバテレン妖術使いに違いない。捕らえて手柄にするがよい。」

 四十郎が扇子で指した僕らを見て奉行は平伏した。だいぶ芝居掛かってはいるが椿野親子の同様した様子からして効果はあったようだ。

「これは、これは鍋島殿。そのような身形みなりで御忍びであられますか? 」

「と、遠山? 」

 四十郎は更に驚いたように奉行を覗き込んだ。

「えぇぃ、控えおろう。こちらに御座すを何方と心得る? 上様御声掛、鍋島直人殿、関白御目見、北条美雲殿にあらせられるぞ。頭が高いっ! 」

 奉行の言葉に椿野親子は慌てて庭に降りると平伏した。これが時代劇なら解決が近いんだけどな。

「椿野源三郎。その方、徒党を組み、白薙組などと称して町民の生活を脅かしたること、明白である。」

 確か、こんな感じだ。

「御恐れながら申し上げる。白薙組は奉行所では手に負えぬ黒縄組なる一味を取り締まらんと、善意にて結成したるもの。決して町民の生活を脅かしたりなど、しておりませぬ。」

「そうかしら? 黒縄組同様に縄張りを主張し、みかじめ料と称して金品をせしめていた事は私の手の者が調べをつけてあるわ。それに四十郎。貴方が寺社方に賄賂を送って、息子の評定所の審議を有利に運ぼうとした事も明白よ。」

 さすが北条さん。しっかり裏は取ってあると云う訳か。

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