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異世界彼女は純和風  作者: 凪沙一人
O.E.D.O.
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卅葉 ‡ 潜入

 後北条家と聞いて思い当たる人物は一人しか居ない。だが、それは僕の居た世界の人だ。

「その風間さんが僕に何の用だ? 」

「夜汰でいい。普段からそう呼んで貰わないとボロが出るからな。」

 確かにミッチーやリッキーは、こちらでは呼び直す事も少なくない。夜汰朧は更に続けた。

「表向き、風魔一族は主家滅亡後、盗賊に身をやつし、密告によって捕らえられた… 事になっている。」

「つまり事実は違うと? 」

 すると夜汰朧は大きく頷いた。

「滅びし一族を警戒する者は居るまい? 」

「それを明かしたと云うことは、敵ではないと? 」

 油断させる為の罠とも限らない。

「もちろんでさぁ。あっしが、お仕えしているのは、鍋島殿がよく御存知の北条美雲様でさぁ。」

 そんな予感がしなくはなかった。だが、実際に突きつけられると、やはり意外と言わさざるを得ない。そもそも、北条さんについて知っている事と云えば大友には不釣り合いなセレブリティな彼女というくらいだ。それでも夜汰朧については信じても良さそうな気はする。此方に来てからも天草たちの前でも北条さんのフルネームを口にした事はなかった。僕については分からないが、少なくとも北条さんについて調べるような奴らとも思えなかった。

「それじゃ、北条さんの? 」

「そう。でなけりゃ、忍びが身を明かしたりしませんよ。」

 確かにそうなのだろう。ただ、北条さんが風魔一族に何を命じたのか、北条さんは何者なのか。疑問を挙げればキリがない。それでも今は旗本の方を何とかしなくてはいけない。町民たちに理不尽な無理難題を押しつけては迷惑を掛けていたのは浪人一味と変わらない。一方を捕らえたからといって、おとなしくなるとも思えない。ここは、裁きを受けて貰うべきだろう。そして忍びが居てくれるのは都合が言い。とはいえ確認はした方がいいだろう。

「僕を手伝って貰えると思っていいのかな? 」

「はい。鍋島殿に何かあれば色葉さんが悲しむ。それは、あってはならぬとのことで。」

 相変わらず北条さんらしい。

「なら、白薙組の本拠地に乗り込みたい。手引きを頼めるか? 」

「自ら… ですか? やれと言われれば白薙組の壊滅でも旗本の三男の暗殺でもやってのけますぜ? 」

「おいおい、物騒だな? 風魔一族は盗人集団でもなけりゃ、暗殺集団でもないだろ? この件は僕が奉行所から預かったんだ。ちゃんと法の裁きを受けさせる。」

「… 承知した。夕刻、白薙組の本拠地、E.D.O.屋敷前で待たれよ。」

 それだけ言うと夜汰朧は姿を消した。夕刻と云えば、半時は後だろうか。今は信じるしかないだろう。そういえば風魔一族を仕う事に問題は無いのだろうか? そもそも、この世界にも伊賀や甲賀は居るのだろうか。やはり情報が足りない。こんな時に北条さんが居てくれれば… なんて考えても仕方ない。色葉は、そんな事、知らないだろうし。

「あ、こんな所に居た。」

「筝葉!? 」

「筝葉じゃないわよ。お姉ちゃんに心配掛けないでよね。」

「いや、これには… 」

「事情は竜紋さんから聞いた。お姉ちゃんには知らせると余計に心配するから、奉行所の用事としか言ってない。それより、お客さん。」

 筝葉の後ろに居た人物の顔を見て僕は自分の眼を疑った。

「北条さん!? 」

「なぁに、その驚きと困惑と安堵の入り交じった顔は? 」

 ほぼ当たっている。北条さんがO.E.D.O.に居る事の驚きと、どうしたらいいのかという困惑と不思議な安堵感。

「どうして… というか、どうやって… ? 」

「もう夜汰には会った? 」

「え? えぇ。」

「彼の報告を聞いてから日光に翔んで関白に送って貰ったの。どうも君は面倒に自分から巻き込まれに行くタイプみたいだから。筝葉ちゃんの話しじゃ、また色葉ちゃんに心配掛けてるようだし。」

 言われてみれば、風魔一族が北条さんに仕えているなら、こちらの状況を知っていても不思議はない。僕の将軍や奉行との関係に、北条さんと関白の関係が近いとすれば、あり得ない話しではない。取り敢えず、夜汰朧の事は信じてもよさげだ。

「リッキー、筝葉ちゃんを送ってあげてね。」

「えぇ、あたしも美雲お姉様と一緒に… 」

「これ以上、色葉ちゃんの心配事を増やさないでちょうだい。」

「はぁい。」

 筝葉は渋々とリッキーに連れられて帰って行った。色葉と北条さんの言うことには素直に聞くんだけどな。

「それで、北条さんはこれからどうするんですか? 」

「そりゃ、旗本のE.D.O.屋敷に一緒に潜入するわよ。その為に来たんだから。」

「いや、この件は… 」

「私の事なら心配要らないわよ。鍋島さんと一緒に居る限り、魔法は当たらないんだから。」

 確かに一緒に居た方が北条さんについては守りの意識を割かないで済む。この能力の対象者が何故、色葉ではないのだろう。しかし、もし色葉なら危険な場所に連れて歩くなんて出来ない。北条さんならいいと云う訳ではないのだが。

「ほら、行きましょう。早すぎても見つかるけど、遅すぎても機を失うわよ。」

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