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僕と嫁とunknown

作者: 橘 六六六



 30代後半になり、周りは完全に家庭を築きかつての遊び仲間は誘っても誘っても遊びには出て来なくなった。


 親類や周りの先輩からもいい加減に結婚しないと、一生独身でいるのか?とクドクドと独り身で居る悲惨さやデメリットを僕に説明してくる。何回も聞いているので大して心も動きやしない。


特にこれと言って魅力も取り柄も持ち合わせて居ない30代後半のおっさんに誰が好意を持って結婚などしてくれるものか。


「よし!俺は妄想の中で素敵な嫁と家族を作りリアリティーに幸せになってやる!」


――――――嫁、妄想中


 僕は仕事が終わってクタクタで家へと帰った。家にはやはり笑顔で嫁に居て欲しい。その方が家に帰るのが楽しいじゃないか。笑顔で居てもらう為には嫁には好きな物と趣味がハッキリとしている事が重要だ。


 別に趣味が同じで無くても嫁が幸せそうにしているなら良いじゃないか!そう!それが例え世の中から受け入れられない趣味だとしても。僕は甘んじて受け入れよう!


「ただいまー!」


あれ?返事が無い。僕は家の中へ入り、もう一度「ただいまー!」と言った。


『返事がない。ただの屍のようだ。』


いや違う!ここは俺の妄想。ちゃんと嫁が居る筈だ!しかも幸せそうにしている嫁が!僕が奥へ行くと部屋で一生懸命にパソコンゲームをしている嫁が居る。しかし、ゲームに飽きたのかパソコンゲームの画面は点いてはいるが、手には薄い本を持って読み更けている。


「ただいまー!」


僕は声をかけた。嫁は


「今、読書中だから静かにして!」


と少し顔をしかめた。しかし、薄い本を広げるとうっとりとした表情で実に幸せそうにしている。僕は『そうだな。僕の注文通り幸せそうにしている嫁だ問題ない。』と、台所へ向かった。僕の独断と偏見だが女性はみんな餃子が好きだ。よし!餃子を作ろう!


 冷蔵庫には挽き肉も白菜も葱もにんにくも有る。刻んで挽き肉と合わせ塩コショウと胡麻油で風味付けをし、隠し味にナッツを砕いて合わせ少しタネを寝かせ1つ1つ皮へと包み胡麻油をひき熱したフライパンに並べた。パチパチと皮が焼けている。そこへ出汁水を注入!ジュワーーー!バチバチと音を立てるフライパンへ蓋をして少し待つ皮がテカリを見せたら蓋を外し焼き目を付け出来上がった餃子を嫁の横にテーブルを置いて、その上に置き手作りのタレと箸を置いた。しかし、嫁は読書に夢中。


 幸せそうだしまあ良いや。とお風呂に入る。


「そうだ!これは妄想で家族なので、二人の間に生れた可愛い子供なんて居るかも知れない!」


と僕はお風呂から上がり家の中を見渡した。居た!しかし何だこれは?unknown!?今の時代子供の居ない夫婦も多いし。子供が出来なくても嫁が可愛い事には変り無い!嫁さえ幸せそうに一緒に居てくれるなら良いじゃないか!


って、何でunknownなんだ!


「ミギャーーーー!!!」


unknownが激しく空気を切り裂く様に吠えた!そしたら餃子をモシャモシャ食べながら嫁が現れた!


「あんた。夜泣きしてんじゃない。ちゃんとあやしなさいよ。」


そう言うと嫁は餃子をモシャモシャしながらビールで流し込みパソコンの前へと消えて行った。嫁が可愛いかったので「はい!」と返事をし。あやす事にした。unknownを。


しかし、まあ二人の間で大切に育てている『何か』だから大切にしていかないとな。と思い。何となく背中みたいな所を擦ったり。抱っこっぽい事をしてみたりした。


 unknownは何か液体を噴射して奇声をあげた!


「ピギャーーー!!!!」


「喜んでんのか?怒ってんのか?」


全くもって解らないunknownを箱に置いて。噴射された液体を拭いて回った。


床を拭いて顔を上げて見ると目の前には可愛い嫁が居る!unknownの世話をちゃんとしてるし床なんか拭いちゃってるし。褒めてくれるかなぁ嫁。


嫁は僕の顔を見ると餃子の皿を突き出し。


「餃子お代り。」


と皿を僕に渡しパソコンの前へと消えて行った。


「今、お代りって言った!美味しかったんだ!」


僕は餃子に嫁が喜んでくれたと嬉しくなって。皿を持って台所へと行った。僕は餃子を焼きながら、この幸せがずっと続きます様にと願った。


餃子を焼く僕の横でunknownが


「キャッ♪キャッ♪」


と笑った。嫁はパソコンゲームでレアアイテムを手に入れて嬉しくて踊っている。僕は嬉しくなってunknownを抱き抱え嫁の横で一緒に踊った。餃子を放ったらかしにして。

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