奇妙なライト
おかしなライト
しかし、これは使えるかもしれない。
一人よりは、こんな奴でも居ないよりマシだ。また、NGMLとしても、こいつを俺に付ける事によって、色々とデータを取りたいはずだ。
サモン達にも頼もうかと一瞬考えたが、何処まで巻き込んでいいかの判断に苦しむしな。
「ふむ、丁度良かった。ところで、今のお前はメイガスなのか?」
これは確認しておかなければならないだろう。
ほいほい生き返れるのは確かなようだが、その度に何某かの人格を犠牲にさせるのは偲びない。
「今はメイガスじゃないですね。僕もあまり覚えていないのですが、流石に何度も死ぬは嫌ですからね。それで、今から何処に行くつもりですか? この僕を付き合わせる以上、それは先に教えて欲しいですね。」
ん? この答えには、確かに姉貴が言った通り、少し引っかかるな。
こいつはなんこう、もっと投げやりで、また、俺に敵対心剥き出しだったはずだ。この返事には、傲慢ではあるが、そこまで俺に対する嫌悪感は出ていない。
そして、あまり覚えてないという事は、生き返った際に、記憶の引継ぎがあまり為されなかったと見ていいか?
これは俺も注意しないといけないな。とは言っても、どうしようもなさそうだが。
「今から行くのは鳴門だよ。あそこならハードなクエストが期待できそうだし、何より俺には未知だ。当然、いきなりクリアできるとは思っていないから、偵察だけの予定だけど。」
「え? 鳴門にあるクエストは初心者用の簡単なクエストだけですよ? あ~、一度死んで呆けてしまったんですね。僕も思い当たるところがありますから、少し同情してあげますよ。」
ぶはっ!
こいつ、鳴門の記憶は無いようだ。
「い、いや、ライト、お前の手柄で、判明したクエストだぞ? まあ、いい。歩きながら話そう。」
ライトは首を傾げながら俺についてくる。
途中、俺はパティーを編成し、ライトを加える。
そして、アクセサリーも、全て三種の神器に揃える。
ついでに、ライトにも同じ装備をするように言うと、特に何も言わずに従ってくれた。
例の大渦の前の崖で俺は再び尋ねる。
「ライト、あいつに見覚えはないか?」
俺は、崖下の海中の黒い影を指さす。
「ん? 確かに何か居ますね。でも、あれだけで分かる方がおかしいね。」
うん、やはり覚えていないか。
「じゃあ、これから起こる事の中で、何か少しでも覚えているものがあったら言ってくれ。」
「何をするつもりか分かりませんが、仕方ないですね。あれば教えてあげますよ。」
これはちょっとしたNGMLへの協力のつもりだ。何か覚えている事があれば、参考程度にはなるだろう。 当然、俺にも関わって来る話だから、何気に重要かもしれない。
俺は崖下の影に呼びかける。
「鰐さん、頼みがあるんだ。ちょっと出てきて欲しい。」
すると、前回同様、鮫は上半身だけを器用に海面に晒す。
そして俺はライトを見る。
「う~ん、あれはひょっとして因幡の白兎クエストの鮫ですか? しかし、何故こんな場所に?」
ふむ、少しだけだが覚えてはいると。ライトはあのクエストは、コンプの仕方とかは聞いていたが、やるのは初めてだと言っていた。なので、完全に記憶が飛んでいるなら、こいつは初見のはずだ。
つまり、ある程度の記憶の引継ぎはあったと。
そこでタイミングよく鮫が喋り出した。
「これはシンさんワニ。ん、ライト二ングサークルさんも居るワニ。僕達は友達ワニ! 頼みを言ってみるワニ!」
「あの大渦の上の三つの台座に渡りたいんだ。前みたいに頼むよ。」
「お安い御用ワニ!」
前回同様、即座に鮫の橋が出来上がる。
俺は再びライトを見る。
ライトは俯いて腕を組み、何か考え込んでいる。
ふむ、少しは記憶にあると見ていいだろう。
「じゃあ、渡るぞ。ライトもついてきてくれ。あっと、もしかしたら戦闘になるかもしれないから、準備だけは頼む。」
「わ、分かったよ。全く貴方は偉そうですね。でも、何故か逆らってはいけない気がするな。」
ん? この言葉は意外だ。
確かに蘇生する前のライトは従順だったが、別に逆らってはいけないとか言った事は無い。しかし、これだけでは、何らかの記憶の引継ぎによるものなのか、人格の欠如なのかどうかは不明だな。
そして、ライトは杖を装備した。
ふむ、やはりそっちの方が慣れているのだろう。それに、メイガスでは無くなった奴には、弓はただの不慣れな武器でしかないのかもしれない。
俺は、崖から鮫の背に飛び乗る。
上から見るとかなり高いように見えたが、下から見上げると、実質は1mくらいの高低差だったようだ。
ライトも黙ってついてくる。
鮫の背を渡りながら、俺は装備していた三種の神器をそれぞれの台座に置いて行く。
最後の一個を台座に設置すると、眩い光が差し込んで来た!
横を見ると、いつの間にか、降りて来た崖の下から巨大な階段が出現している!
上を見上げると、その階段の天辺に扉があった!
「ふむ、あの扉をくぐれってことだろうな。」
「なるほど、やっと理解できましたよ。あの三種の神器が鍵になっている訳ですね。」
「うん、予想通りだな。じゃあ、行くか!」
俺は鮫の背から、階段に飛び乗ろうとすると、ライトが口を開く。
「あれは回収して行かなくていいんですか? 誰かに取られちゃうかもしれませんよ?」
ぶはっ!
こいつは痛い目を見ているからな~。
うん、余計な事は言わないでおこう。
「そ、そうだな。もし回収して階段が消えるなら、また置けばいいだけか。うん、ありがとう。」
「全く、貴方には呆れますね。でも、役に立てて……、え? 僕は何を言っているんだ?」
ふむ、これも蘇生による影響か?
確かにあの幽霊時代のライトならば、『役に立てて良かった』と言いそうなものだが。ふむ、記憶が混濁しているのか? それとも、人格の欠如による影響か? いずれにせよ、これは少し気をつけておかないといけないな。
俺はコール画面を確認しておく。ふむ、今繋がるのは姉貴と新庄か。姉貴は当然として、新庄には何か悪い気がするな。
目の前の台座にある神器を回収しても、一度出現した階段は消えなかった。
まさに鍵だな。
きっと、次回来る時は鮫を呼ばずに直接行けるように、消えずに残っているのだろう。
俺は全ての神器を回収し、再び崖の下へと戻り、階段に飛び乗る。
「これでいいワニか? じゃあ、後は頑張るワニー!」
そして鮫達は消えた。
ふむ、良く出来ているな。確かに階段に乗ってしまえば、彼等はもう用済みだ。
階段を30段くらい登ると、もう扉だ。
だが、いつものクエストの扉ではなく、ただの大きな扉。真ん中に光る球がついていない。
うん、八尺瓊勾玉クエストの階段にあったのと同じだな。
ということは、ボス部屋へ至るまでに何らかの前哨戦があると考えていいだろう。
俺は気を引き締め直して、装備を確認する。アクセサリーに、真・八尺瓊勾玉、天叢雲剣、ファントムカースを着ける。これらは、もはや完全に固定装備だな。
武器は迷ったが、クリスさんから借りたままになっていた、と言うよりはくれるつもりなのだろう。弓矢、フェイルノート・改にした。ライトと被っても無意味だしな。
本来なら、ライトが後衛のウィザードなので、俺が前衛に出るべきなのだが、俺には前衛スキルがほぼ皆無だ。もっとも、スキルポイントはまだ有り余っているので、その気になればすぐに取得できるが。それに、一応武器もある。ローズから隼人の盾と、カオリンからは義元左文字・改だ。
二人には落ちる時に、もし一人でクエストに行くなら、自分だと思って使って欲しいと渡された。う~ん、どっかで聞いた台詞だが、なんか重いぞ。
称号は先制されるであろうことを警戒して、防御重視の『神の試練に耐えし者』。ちなみにライトは、攻撃重視の『水龍を屈服させし者』だ。
「準備はいいか? じゃあ、開けるぞ。」
「いいですよ。勝手にして下さい。」




