表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRファントム  作者: BrokenWing
93/98

タカピさんの決断

        タカピさんの決断



 俺達は、その足で鳴門に飛ぶ。

 普通なら一旦ギルドルームに戻って祝勝会をして、アイテムの分配をしたり、余韻に浸ったりするところなのだが、今回は『新たなる道』とやらへの予備段階である。

 そう、あの鮫と友達なったという事は、大渦の上にある台座に行けるかもしれない。


「しかし、ライトのあの一言はでかかったな。これはビンゴで間違いないだろう。」


 鳴門の大渦への道すがら、俺はライトを褒めてみる。

 そう、ライトのあの一言、『因幡の白兎の鰐とかを使えば行けるかもしれない』が、今回の始まりだからだ。


 俺としては、彼にはうちのメンバーになった以上、一刻も早くこのギルドに馴染んで欲しい。

 ローズとは時間がかかるだろうが、こういう積み重ねが無ければ、それこそ話にならないはずだ。

 ちなみに、サモンとクリスさんには、以前の悪感情はもう無いように見える。信用はまだ得られていないかもしれないが、普通に接してくれているようだ。


「いや、思いついた事を言ってみただけだよ。」


 ライトは頭を掻きながら答える。

 お、照れてるな。

 ローズに目をやると、彼女もライトを見ている。

 ふむ、まだ完全に許してはいないのかもしれないが、少なくともライトが入って来たばかりの時の、あの嫌悪感溢れる目線では無さそうだ。


「ライト坊、そないに謙遜する必要はあらへんで。手柄は誇るべきや。そやないと、この厳しい社会じゃ横取りされるだけや。」

「そうね。でも、本当にあなた、あのライトさん? あ、これは言っていいのかしら? でも、いい意味でかなり変わったわね。けど、これで進展が無かったら残念だけど。」


 うん、カオリンはもう大丈夫だろう。


「は、はい。ありがとうございます。」


 しかし、ライトの方がまだ緊張しているようだ。



「そろそろですわ。あの鮫が居ることを期待しますわ。」

「うん、あの場では頼みようが無かったから、俺も、多分ここに出現すると思う。」


 俺達は全員で、大渦を臨む、あの崖の上から辺りを見渡す。


「居たっす! 多分あれっす!」


 真っ先にローズが見つけたようだ。

 崖の下の海中に、何やら大きな影が蠢いているのを、彼女が指さす!


「うん、大きさは同じくらいだな。じゃあ、ライト、頼むよ。」

「え? 僕が交渉するの?」

「当然だろう。まだパーティーリーダーはライトのままだし。」


 ライトは少し躊躇ってから、一歩前へ出る。

 そして、大きく深呼吸をしてから、その影に、少し大きめの声で話しかけた。


「わ、鰐さん! ラ、ライトニングサークルです! た、頼みがあって来ました!」


 すると、その影は浮上して、上半身を海面に出した!

 よし! あの鮫だ!

 もっとも、同一の個体なのかどうかは確認のしようがないが、あの口からはみ出た牙からするに、あのクエストの同一種族なのは間違いない。


「うん? ライトニングサークルさんワニ? 僕達は友達ワニ! 遠慮なく言うワニ!」

「じゃ、じゃあ、あの渦の上に浮かんでいる台座に渡して下さい!」

「お安い御用ワニ! 皆、整列するワニ!」


 何と、海中に黒い影が無数に表れたかと思うと、一斉に背びれを出した!

 荒れ狂う渦の中、微動だにしないのはかなり無理がある気がするが、所詮ゲームだしな。

 鮫の背がスマホのアンテナ表示のように、三つの渦の中心を結んだ三角形から、この崖に向かって線を引く。


「おっしゃ! やっぱりビンゴや!」

「うん! でも、ちょっと待てよ? 皆、今日はここまでにしないか? 時間ももう10時半だ。もしこのままクエストに突入したら、今日中に終わらない可能性が高い。それに、タカピさんの事も気になるし。」


 そう、カオリンが心配だ。サモン達は大丈夫だろうが、彼女には今までの生活を崩して欲しく無い。俺達は、いつも12時前には必ず落ちていたからだ。なので、あえてタカピさんの名前を出した訳だが。


「そ、そうね。ここでお預けは残念だけど、タカピさんにも報告しないと、また恨まれそうよね。」

「あ~、せやな~。まあ、しゃあないか。うん、今日は諦めや。 鰐はん、済まん! 今日はここまでや。また来るわ。おおきに!」


 サモンは大声で鮫に謝る。


「それなら仕方無いワニ! いつでも来るといいワニ!」


 鮫達は一斉に海中に消えたが、一匹だけ、崖下で大きな黒い影を残していた。


「うん、問題無いな。呼び出しておいて、とか言われたらどうしようかと思ったけど。じゃあ、一旦戻るか。」

「はいっす! 今度はタカピさんも入れて挑戦っす!」




「うん、終わったようですね。皆さん今晩は。済みません、ちょっとシン君を借りますね。」


 俺達がギルドルームに戻ると、何とタカピさんが待っていた。

 しかし、俺だけに用件と何だろうか? と、考えるまでも無いか。

 蘇生に関する事なのは間違いなかろう。しかも他の人には聞かせられない話というのなら、かなりえぐい内容のはずだ。


「はい、タカピさん、今晩は。では、何処に行きますか?」

「あ、タカピさん今晩はや。ほな、わいらが外しますわ。」

「いえ、それには及びませんよ。シン君、パーティールームを作って下さい。」


 ふむ、妥当な判断だ。皆に出て行けと言うと、ライトだけは行き場が無いからだろう。

 俺はライトのパーティーを抜け、新しくパーティールームを作る。

 すぐにタカピさんから編入申請が来た思うと、何とカオリンとローズからもだ!

 俺は迷ったが、タカピさんのみを承認する。


「カオリン、ローズ、済まない。今の感じだと、タカピさんの用があるのは俺だけみたいだよ。」

「はい。君達は遠慮して下さい。」


 なんかタカピさんの目付きが険しい。言い方も少し棘があるように聞こえる。

 二人はこのタカピさんに圧されたのか、黙って頷くのみだ。



 皆に簡単に挨拶を済ませて、パーティールームに入る。

 俺とタカピさんは、無言で正対してソファーに腰掛ける。

 う~ん、なんか気まずいな。

 と、思ったら、タカピさんが口を開いた。


「うん、そろそろ来るはずです。シン君、承認してあげて下さい。」


 ん? 何の話だ? ローズとカオリンはさっき断ったし、松井とかなら、勝手にここに来るはずでは?

 俺がログを確認すると、懐かしい名前があった。


あなたのパーティーに参加希望者が居ます。

ID:フォーリーブス Lv80

承認しますか?


「こ、これは! タカピさん、説明して下さい! 『フォーリーブス』は既に削除されたIDのはずです! 俺達の関係者のIDだとしたら、趣味が悪過ぎる!」


 そう、フォーリーブスは、ライトが以前使用していたIDだ!


「う~ん、何処から説明したらいいですかね。とにかく会ってみれば分かるでしょう。説明はその後ですね。そして、これは僕の独断です。君にはこの事実を知らせておくべきだと判断しました。松井さん達は反対しましたが、医者の判断ということで押し切りましたよ。」


 これは何やら凄い事になりそうだ。

 うん、この感じじゃ、俺しか呼ばれないというのも納得だろう。

 俺は意を決して、『承認』を選択した。



 部屋に入って来たのは、ライトと全く同じアバの男だ!

 装備は全て外しているようでジャージ姿だが、この金髪イケメンのアバは珍しくはないが、流石にこれはわざとだろう!


 そして、その男は部屋に入ると、俺とタカピの横の空いていたソファーにどっかりと腰を据え、足を組む。


「おう! シン! まだ生きていやがったのよ! 俺様が会ってやるだけでも光栄に思えよ!」


 俺はここで何となく理解できた。

 その男は更に続ける。


「おい、住吉! お前が頼んだんだから、仕方無く来てやったんだ。俺様にはこいつに用は無い。協力してやるだけありがたく思え。だからさっさと始めろ!」


 うわ! タカピさんを呼び捨てって!


「そうですか。しかし、今の君は明らかに異常です。原因も想像がつきますが、今はそれよりも、君が『生きている』という事が重要だ。そうですね、比良坂君。」

「そうかもな。全く、人を簡単に殺したり生き返らせたり、何様のつもりだよ! お前、それでも医者か?」


 うん、こいつはライト、いや、比良坂だ。

 しかし、ライトはさっきまで一緒だった。今はギルドルームに居るはずだ。

 なので、疑問は残るのだが、この会話の内容からは、こいつは蘇生に成功したのだろう。


 だが、この男は全くの別人だ!

 以前のライト、いや、フォーリーブスも嫌悪感は剥き出しだったが、ここまでの物言いはしなかったはずだ。言葉遣いだけは丁寧な奴だった。


 タカピさんは、毅然として答える。


「簡単にとは思えませんが、今の君には何を言っても無駄でしょう。うん、これでここに呼び出した目的は果たせました。では、比良坂君、落ちていいですよ。」

「そうかい! じゃあ、落ちるぞ! あっと、その前に、もう一人の俺様とやらには会わせてくれないのか?」

「今は無理ですね。それこそ何が起こるか分かったものじゃない。」

「へ~、お前に何が解るんだ? でもまあいい。俺様は今非常に気分がいいからな。なんか、憑きものが落ちたって感じだ。」


 比良坂は、捨て台詞のような物を残してあっさりと消えた。

 タカピさんは俯いて首を振る。

 俺も一気に気が抜けた。


 嵐が去り、俺はタカピさんに聞く。


「あれはライトですよね? でも、ライトは、今はギルドルームのはずです。ならば、今の彼は何者ですか? まあ、大体想像はできます。彼は比良坂に残っていた、ライトの別人格なのでしょう? しかし、蘇生に成功したって?」

「そうですね、ただ、最初に断っておきますが、君はああならない。僕達がそれをさせません。あれは蘇生には成功したと言えない。肉体が生き返っただけですね。精神の事を考慮すれば、完全に失敗です。」

「はい、何となく分かりますが、それでも説明がつきません。一体どうやればああなるんです?」

「はい、順を追って話しましょう。」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ