表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
VRファントム  作者: BrokenWing
91/98

因幡の白兎クエスト

       因幡の白兎クエスト



 扉をくぐると、眼下に海が広がる、ちょっとした崖の上に出た。

 下をよく見ると、無数の、体長5mはあろうかという鮫が泳いでいる。


「じゃあ、ここからは打ち合わせ通り、ライト、頼むよ。」

「うん、その為にパーティーリーダーをさせて貰ったんだから、頑張るよ。」

「あ、一匹、海から顔を出したわ! まずはあいつと交渉するのね?」

「せや、最初は騙すとこからや。」


 見ると崖の真下に、歯というよりは牙のはみ出た鮫が、水面に上半身を突き出している。

 お前は何処の水族館のイルカだよ! と、思わず突っ込みたくなるような姿勢だ。


 そこへライトが近寄って行く。


「鰐さん、仲間がいっぱい居ますね。僕も仲間は多いのだけど、どっちが多いか、較べてみませんか?」


 ふむ、打ち合わせの時の話だと、どうやらこの鮫の事は、『わに』と呼ばないといけないらしい。鮫と呼ぶと、すかさず訂正されるとのことだ。

 なんか、このゲーム、しょうもない細部に結構拘るな。

 そしてこれは、その昔話を知っていないと、まず無理だろう。こちらから話しかけないといけないクエスト自体が稀だ。しかし、有名な話らしいので、分からない人はそうそう居ないらしい。


「丁度良かったワニ。僕達も仲間が全部で何匹居るか知りたかったワニ。早速仲間を集めるから、数えて欲しいワニ。」


 う~ん、やたら鰐を強調する奴だな~。俺からすれば、鰐の牙をつけた鮫にしか見えないので、どっちでもいいのだが。


 すると、海がまっ黒になる程集まって来た!

 すかさずライトが指示をする。


「じゃあ、鰐さん達、対岸の島まで綺麗に並んで下さい。僕達は、背中を歩きながら、数えてあげるから。」

「分かったワニ。全員整列ワニ!」


 鮫共は、ライトに言われた通り、対岸まで海が見えなくなるくらい、ぎっしりと横を向いて背中を浮かべる。

 ふむ、確かにこれで道は出来たが、ゲームとは言え、これを渡るのは度胸が要りそうだな。船のように揺れなければいいのだが。


「うん、ここまでは全く一緒やな。ほな、渡ろか~。後は打ち合わせ通りでええやろ。」

「はい、次は海から飛び出して来る魔物を、渡りながら狩るらしいです。」

「うん、ライト、ありがとう。じゃあ、右方向は俺、左方向はライトに任せる。サモンさん、ローズ、盾宜しく。カオリンは削り残しを。クリスさんはバフと回復お願いします。」

「分かったわ!」

「了解っす!」

「かしこまりましたわ。」


 俺達は2組に分かれて、順番に鮫に乗って行く。5mあるとはいえ、海面に出ているのは、3m×1m程。足場的に、一匹に6人は厳しいからだ。

 最初の組は、サモン、カオリン、ライト。

 彼らが次の鮫に渡ってから、ローズ、俺、クリスさんも飛び乗る。


「ふむ、思ったよりしっかりしているな。普通の地面みたいだ。」

「そうっすね。でも、魔物が鮫にぶつかると、思いっきり揺れるっす。」

「ですから、近づかれる前に倒してしまうのがベストですわ。」


 なるほど、このクエスト、弓との相性がいいようだ。


 俺達が全員鮫に乗ると、左右の海面から、2つの背びれが出現した!


「早速出て来おったで~! シンさん、ライト坊、頼むわ。」

「カジキの魔物っすね。あいつらジャンプして突撃してくるっす! 空中でやっつけてしまえば問題ないっす!」

「よし、任せろ!」

「はい!」


 俺とライトが返事をすると、すぐに海面が盛り上がり、3m程のカジキがジャンプしてこちらにぶっ飛んでくる!


「パワーブースト! パワーブースト!」


 クリスさんが俺とライトにバフを唱えてくれる。

 うん、いいタイミングだ!

 俺はローズの陰から、カジキ目掛けて矢を射る!

 撃つ!


 カジキは、空中に光の輪を残して消える!


 ふむ、バフ付きなら2発で殺せると。図体の割にはちょろいな。まあ、推奨レベル50ならこんなものだろう。俺達の装備はほぼ完璧だろうし。


「また来るで~。次は大蛸や! 墨を吐かれると厄介や! これも速攻で頼むわ!」


 見ると、また左右の海面が盛り上がり、アニメとかで見るような、口が筒になっている真っ赤な奴が顔を現した! こいつも結構でかい。頭の直系だけで2mはあろうか?


「ふむ、的がでかいから楽だな。」


 俺が連射すると、今度は3発で死んだ。

 お約束の、女性陣が触手に捕まるとかいうのは無しだ。


「おっしゃ、流石ダブルメイガスやな~。瞬殺やん。わいらん時はもっと近づかれてんけどな~。」

「そうっすね。じゃあ、今のうちにどんどん進むっす!」


 なるほど。攻撃が止んでいる間に歩を進めると。

 まあ、ずっと相手してたら、きりが無さそうだしな。


 俺達はジャンプしながら鮫を渡っていく。


「ところで、この鮫、数は数えなくていいのか? 確かにライトの話じゃ、渡り切る直前に騙した事をばらして凹られるから、数えても意味は無いのかもしれないけど。」


 俺達は既に10匹目の鮫の背中に居る。

 対岸までは、まだ数百メートルはある。


「律儀なシンらしい意見ね。じゃあ、あたしが数えておいてあげるわ。どうせ、さっきから殆どする事ないし。」


 ふむ、そう言えばさっきからカオリンは全く何もしていない。

 俺とライトで瞬殺させていくので、削り残し担当は明らかに手持無沙汰だ。

 まあ、ローズもサモンも盾を構えて居るだけなのだが。


「じゃあ、暇潰しに頼むよ。うん、もしこの鮫達に後で頼むことになった場合、聞かれる可能性もありそうだしな。」

「あ! それは考えていなかったっす! 流石はシンさんっす!」

「確かにそれはあるかも! じゃあ、あたしは数えるのに専念するわね。」

「了解や! もし撃ち洩らしがあっても、この調子やったら、わいとローズちゃんだけで問題ないやろ。」


 結果、今までサモンと並んでいたカオリンは、クリスさんと交代して、最後尾についた。


 サモンとクリスさんが振り返ってにやつく。

 う~ん、意図した訳ではないのだが、不思議とこうなる。

 前の鮫には、左から、サモン、ライト、クリスさん。

 次の、現在、俺の乗っている鮫には、右からローズ、俺、カオリン。

 まあ、今更か。


 そんなこんなで、俺達は順調に渡って行く。

 途中、ウミヘビとか、馬鹿でかいハリセンボン、変わったところではラッコとかも出て来た。

 ウミヘビは噛み付き攻撃。ハリセンボンは、文字通り、棘だらけの身体で体当たりをしようしてくる。もっとも、こいつは矢を当てると、風船のように割れてしまうので、楽勝だったが。また、ラッコは腹の上に山盛りに載せたウニを投げつけてきやがる。流石にこればかりはローズの盾の世話になったが。


「ふ~、で、これが最後の一匹か。じゃあ、ライト、頼むよ。」

「うん。え~っと、鰐さんありがとう。実は僕達はこの島に渡りたかっただけなんだ。」


 う~む、かなり棒読みだが、これでいいようだ。

 鮫がすぐに反応した!


「僕達を騙したワニか? 許せないワニ!」


 ぶはっ!

 鮫は俺達を振り落とす!

 そして、海中で何も出来ずに居る所に、四方八方から噛みつかれる!

 痛みはないし、息も出来るのだが、振動が凄まじい!


 数十秒間、その振動に耐えていると、下から突き上げられ、空中を舞う!


「今日はこれくらいで勘弁してやるワニ! 次はしっかり数えるワニ!」


 そして地面に叩きつけられる!


 ふむ、ちゃんと海からは出してくれると。確かに、あのまま溺れでもしたら洒落にならんか。

 ステータスを確認すると、ライトの言っていた通り、ダメージは無かったが、装備が全て消えていた。

 周りを見ると、全員初期装備のジャージアバになっている。


「へ~、良く出来ているわね。それで、次は八十神やそがみね!」

「はい、あれじゃないでしょうか?」


 ライトが指さす先には、数十人くらいの、耳の横で髪の毛を束ねた、白装束の一団がこっちに向かって歩いて来る。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ