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VRファントム  作者: BrokenWing
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ライトの変貌

         ライトの変貌



 俺達は『京の都』に飛び、案内バニーを捕まえる。


「え~っと、俺がここのクエストをコンプリートした事によって、新に出来るクエストないしはイベントは何処にありますか?」


 うん、前と同じ聞き方だ。前回はこれで教えてくれたのだが…。


「今のシンさんにはありません。」


 あら? 俺の早とちりか?

 ライトの手前、これはかなり恥ずかしい。

 俺は、そろ~っと隣を見るが、特に笑う事も無く、無表情だ。

 う~ん、これはこれで調子狂うな。

 今までのライトなら、ここぞとばかりに野次ったはずだ。


 そして、彼は冷静に俺に話しかける。


「シンさん、『今の』という言葉が引っかかるよ。」


 ぬお!

 ここで俺は気付いた!

 そういや、あの神様、『その神器を私と思って』とかも言っていた!

 俺は慌ててアクセサリーを付け直す。当然、『ファントムカース』を『真・八咫の鏡』にだ。


 そして、再び同じ質問をする。


「はい、新たなクエストに挑戦出来ます。ですが、場所は自分で探して下さい。」


 チッ! 使えねぇ~っ!

 しかし、言質は取った。最低でも街を虱潰しに回れば判明するだろう。


「この街では出来ないんですか?」

「はい、この街ではありません。では、頑張って下さいね~♡」


 ふむ、取り敢えず、ここではないと。


「まあいい。とにかく新しいクエストが出た事は確かなんだから、これはこれで良しだな。うん、ライトのおかげで助かったよ。あのままじゃ見過ごすところだ。ありがとう。」

「それなら良かった! 僕も役に立てて嬉しいよ。」


 う~ん、やはり調子が狂う。

 以前のこいつならば、さも当然だとばかりに威張り散らしたと思うのだが?

 うん、これはおかしい。


 しかし、そこでタカピさんの言葉を思い出す。

 確か、俺の性格は以前と変化無しだったが、ライトは違うと言っていた。


 あ~、そういう事か!


 ライトはきっと、不完全な意識転移だったのだろう。

 彼の性格のデータが完全に転送されていないと見ていい。

 何が足りないのかは分からないが、これでタカピさんの精神病云々も納得だ!


 ただ、これはきっと、元の身体に戻ることさえ成功すれば、結果は同じなる気がするが。

 だが、幸いにも今のこいつはかなりまともな人間だ。ライトには悪いが、俺達にとってはラッキーだろう。

 もっとも、生き返った際に、これが原因で支障が出るのなら、気の毒としか言いようがないが。


「だが、流石に虱潰しは面倒だな。ライトは何処か思い当たる場所はないか?」

「いや、僕も日本神話とかの知識には自信が無いよ。リアルなら、ウィキれるところなんだけど。」


 う~ん、それは俺も同じだ。

 桧山さんか新庄に言って、そういうデータの入った本をモニターにダウンロードして貰えば可能だろうが、このくそ忙しそうな時に、それを頼む度胸は俺には無い。


「仕方無い。取り敢えず一旦戻ろう。と言っても、まだ誰も帰ってないだろうな~。そうだ、ライト、温泉に行こう。ライトも色々あって、少しのんびりしたいんじゃないか?」

「そうだね。箱根でいいのかい?」

「ああ。じゃあ行くか。」



 俺は箱根の温泉で寛ぎながら、更にライトの話を聞く。


 ふむ、やはり俺の状態と全く同じようだ。

 ただ、性格だけはもはや別人だと言わなければなるまい。

 聞いた事には素直に答えてくれるし、嘘を吐いたり、隠したりする素振りは微塵も無い。


「あ、呼び出しだ。シンさん、済まないね。お先に。」


 ふむ、まだ何かさせられるようだ。

 何をさせられるのか聞きたいところなのだが、俺からは聞かないほうがいいだろう。


「ああ、じゃあ、また後で。」


 ライトは『箱根の街』の転移装置に消えていった。



 まだ6時だし、する事も無いので、俺がそのまま温泉で寛いでいると、ローズが来た。


「わ、私も一緒でいいですか?」

「ああ、丁度良かった。その、話もしたいし。ただ、俺はさっきから浸かっているから、あまり長話はできないけど。」


 ローズは俺の正面に座り、大きく手足を伸ばす。先ずは温泉気分を楽しんでからか。


「それで、ローズ、ライトの事なんだが……。」


 とにかく聞いてみない事には始まらないだろう。

 ローズの目が険しくなる。


「カオリンからメールがあったっす。あたいはあいつをまだ許す気にはなれないっす。でも、カオリンの話だと、あいつはちゃんと謝罪してくれるらしいっすね。」

「ああ、あいつは変わった。と言うか、今のあいつはあいつじゃない。まるで別人だ。」

「え? それ、どういう事っすか?」


 俺は先程ライトに感じた事を素直にローズに話す。

 ローズは最初は信じられないといった反応だったが、納得はしてくれたようだ。


「そうっすか。なんか複雑な心境っす。あたいは、あの傲慢なライトに頭を下げさせたかったっすけど、なんか、どうでも良くなったっす。」

「うん、俺もそうだ。最初は厳しい事を言ってやろうかとも思っていたが、あれを見ると、何も言えなくなった。おまけに、考えてみればたった一人の俺の理解者だ。」


 そう、俺は早くもライトに友情を感じ始めている。

 まあ、俺、ちょろいしな。


「分かったっす! あたいもシンさんがいいなら、文句はないっす。でも、それも会ってからっす!」

「うん、それは当然だな。今は何かまた実験に付き合わされているようだが、晩にはまた来るだろう。その時に判断してくれればいいよ。」

「はいっす!」


 ローズは返事をすると、俺の隣に座り直し、肩を寄せて来た。

 俺も、腰に手をかけてやる。



「なんや、ここでいちゃついとったんかいな。」

「サモンちゃん! 事実を言ってはダメですわ!」


 ぶはっ!

 サモンとクリスさんだ!

 俺とローズは慌ててお互いの距離を取る。


「あ~、かめへんかめへん、そのままで。ほなわいらも入ろか。温泉で会議っちゅうのも、乙なもんや。」

「ご一緒させて頂きますわ。」


 サモンとクリスさんは、俺達の正面に、並んで腰を下ろした。


「ほんで、カオリンちゃんからメールが入っとったで~。なんや、シンさん、また面倒事を背負ってもたみたいやな~。」


 ふむ、流石はカオリンだ。サモン達にまで報告してくれたとは。

 俺は先程ローズにした話をサモン達にもする。


「う~ん、なんや、わいも気の毒になってまうわ~。」

「そうですわね。でも、とにかく会って話をしてからですわ。」


 ライトの話はそこまでとなり、俺は先程の『京の都』での話に切り替えた。


「いや、わいもそれは調べてん。『真・八咫の鏡』は、エンドレスナイトの皆と取ったからな。ほんで、出雲と日向ではないわ。」

「ええ、私も調べたのですが、神器に関わりそうな街は、やはりその三か所だけですわ。ただ、まだ行っていない、怪しい所はありますわね。」

「うん、俺もその怪しい場所というのは分かるよ。『鳴門』でしょ?」

「せや! あそこだけ、クエストが妙に少なすぎるわ。ほんで、調べたら、淡路島が日本の始まりや!」


 なるほど。サモンは今から行くから、俺達を誘いに来てくれたと。


「うん、ありがとう。じゃあ、行こうか!」


 俺が勢い良く立ち上がると、隣でローズが水没する。

 いつの間にか、また俺にもたれていたようだ。


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