三人だけのクエスト
三人だけのクエスト
「しかし、流石はカオリンだ! 俺も引っかかってはいたんだけど、あの考えには至らなかったよ。松井さんも絶賛していたし。とにかくありがとう!」
俺は思わず隣のカオリンの手を取る。
「そ、そう? も、もっと褒めて…いえ、それだけじゃもう我慢できないわ!」
カオリンは俺に抱き着いてきた!
抱きしめ返すと、後ろからも手が回って来て、背中にローズの感触がする。
更にカオリンは俺の耳元で小声で言う。
「ほ、本当にこれだけじゃ我慢できないわ。貴方にリアルで抱かれたい。」
俺は答える代わりに唇を重ねる。
すると、首元で声がする。
「私もです!」
俺が振り返ると、そのまま唇を奪われた。
ん? 何か違和感がする!
一瞬光の束が頭の中をよぎった気がした。
しかし、本当に一瞬だけで、瞬時にその違和感は収束する。
目の前にはローズの顔。何だったのだろうか?
しかし、今はそれどころではない!
「だから、顔を舐めないでくれ~!」
耳元でカオリンがくすっ笑って、俺の耳たぶを甘噛みしやがった。
一通りいちゃついたところで、俺は提案する。
「それで、これからどうしよう? 現状、俺の蘇生に関する事は、NGMLに任せるしかないようだし。ライトには悪いが、あいつも自業自得と割り切って貰おう。どっか狩りにでも行くか?」
「そうっすね。あたいもあいつは許せないっすけど、さっきの話でもうどうでも良くなったっす。あたいも少し気分転換したいっす。」
「そうね。あたしもあのお馬鹿の事は、もう考えるのも嫌ね。じゃあ、シン、前に言っていた『桃太郎クエスト』っていうの、連れていってよ。ローズちゃんだけって不公平だわ! あ! でも、あの恋人の称号が貰える所の方がいいわね!」
げ! しっかり覚えられていた!
俺はローズを見る。
「あ、あのクエストはダメです!」
ローズが慌てて拒否する。
ふむ、二人限定イベントだったしな。
「あら、ローズちゃん何で? あたしも『シンの恋人』って称号欲しいわ。」
う~ん、俺はどうでもいいんだがな~。
称号等関係なく、こうやって付き合ってくれているんだから。
それにあの称号の効果、今俺達が持っているのに較べれば、ゴミとは言わないがかなり劣る。
「いや、カオリンには申し訳ないっすけど、シンさんがヤバい事になるらしいっす! あたいも聞いただけなんで、詳しくは知らないっすけど。」
あ~、何となく分かる気がする。
なので、俺もフォローする。
「あ~っと、あれは二人専用イベントみたいだぞ? ローズを待たせる事になりそうだし。」
しかし、ローズは予想外の反応を返して来た。
「別に二人限定って話は聞いてないっすね。あたいも、3人以上で行ったらどうなるかは聞いていないっす。でも、コンプは出来ないと思うっすよ。」
ふむ、あのクエスト、最初にクリアした奴は、そんな事知らずに行ったはずだ。確かにコンプはできないだろうが、そこまで酷い事にはならないか?
「う~ん、コンプしないとあの称号は手に入らないはずよね~。なら、シンも変な事にはならないはずだわ。ええ、称号はどうでもいいわ。と、とにかくあたしもシンと一緒に行ってみたいのよ!」
デートってところか?
まあ、俺に被害がないのなら異存はないが。
「わ、分かった。じゃあ、三人で行ってみよう。どうせ気分転換の暇潰しだしな。」
ローズも諦めたように頷く。
彼女の場合は、若干罪悪感もあったのだろう。
俺達は『ゲルマン』に飛ぶ。
俺達が門をくぐるとすぐに、例の微笑ましい、楽器を持った小人達が出て来た。
「あら、可愛いじゃない! 童話の世界みたいで癒されるわ~。」
既に説明してあるので、カオリンは警戒せずに小人に近づく。
しかし、依然と違ってなんか小人の態度がよそよそしい。
だが、特に攻撃をしてくる訳では無さそうだ。黙って俺達を見ている。
ちなみに、パーティーリーダーは俺のままだ。
「ふむ、今はまだ姫役が誰か、判別できていないからか? 前回はリーダーが王子役という認識みたいだったけど。」
「そんな感じっすね。で、どうするっすか?」
「う~ん、本音を言えば、俺が王子役になりたいんだけど、そうなると、二人共する事が無いだろう?」
三人で顔を見合わせる。
「じゃあ、どうせコンプは諦めているから、いつも通りで行きましょ。あたしとローズちゃんで狩るから、シンは支援してね。」
「うん、それがいいだろう。」
「了解っす! で、来るっす!」
正面から狼の群れが現れた!
ふむ、10匹か。少し数が多いが今の俺達なら楽勝だろう。
二人が魔物目掛けて突っ込んで行く!
「ローリング『ダブルアタック!』アクシズ!」
「シン! お願いね! 剣戟無双『ダブルアタック!』の舞!」
二人の中級範囲攻撃が魔物の中心で炸裂する!
ローズは二斧を振り翳し、回転しながら、群れの中心に切り込む!
カオリンは剣を振り回しながら、ひらひらと舞うように魔物達をすり抜けて行く!
やっぱり楽勝だな。
この二人の一撃で、全ての魔物が光の輪を残して消えた。
そして、後ろはどうなったかと思って振り返ると、黙って踊りながらついてくるだけだ。
以前のように、攻撃役にバフを与える素振りは見られない。
「ふむ、二人だけじゃないと、支援はしてくれないと言う所か?」
「そんな感じっすね~。」
「じゃあ、あれもやっちゃう~?」
カオリンは、にやつきながら小人達に剣を向ける。
「う~ん、特に襲って来ないし、ここは放っておこう。」
「そうっす! カオリンは凶暴っす!」
「い、言ってみただけよ! あたしもこんな可愛いのをやっつけるのは気が引けるわ。」
いや、お前、その気満々だったろ!
顔も笑ってたし。
そもそも、前のパーティーでカオリンの性格は把握できている。
こいつは魔物を見つけると、常に真っ先に突っ込んで行っていた。
「次、来るっす!」
今度は12匹!
流石にこれは一撃とは行かなかった。
撃ち洩らしが2匹、俺目掛けて襲って来る!
うん、次からはローズに『挑発』もかけて貰うか?
でも、そこまでする事もないか。
すると、後ろについて来ていた小人達が反応した。
「「「「「「姫を守るは王子様♪ それ、サブスティトゥー!」」」」」」
あの身代わり魔法だ!
俺の身体が6回点滅した。
カオリンとローズは3回だ。
ふむ、ここで小人は王子と姫を識別したと見ていいのか?
それで、俺は姫認証と。少し嫌だがこれは仕方なかろう。
俺が杖でいなしていると、すぐに二人が戻って来て、止めを刺す。
「うん、やはりパターンそのものは変化していないみたいだし、これでいいだろ。」
「でも、敵の数が以前より多いっす。」
「それは人数に比例しているんじゃないかしら?」
「なるほど、それはありかもな。まあ、問題ないようだし、このまま進もう。」
その後も敵の数は多いが、問題無く進む。
全員、殆どダメージを貰っていない。
相変わらずカオリンが突っ込みすぎて喰らっている程度だ。
例のログハウスが見えてきた。
俺達は扉の前の安全地帯で相談する。
「それで、問題はこっからだな。ローズは以前、台本を貰っていたようだけど、今回はどうなるんだろう?」
「どうなるんすかね~? ちなみにあのメモは、シンさんが捕まって祭壇の奥に飛ばされる時に、足元に落ちていたっす。」
「今回は王子役が二人だから、ボスも2体になるのかしら?」
「まあいい。どうせ、出たとこ勝負だし。とにかく入ってみよう。」
扉を開けると、以前と同様教会風。
そして、ゾンビ神父は一体だけ。
ふむ、どうなるんだろこれ?




