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VRファントム  作者: BrokenWing
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怒れるライト

          怒れるライト



 俺はギルドルームを、うろうろする。

 考えるのは、どうやってライトに復讐してやるか、それだけだ。


 今までは、俺もそれ程ライトに対して悪意は持っていなかった。寧ろ、前回のライトを見て、少し同情していたと思う。

 自分の存在すら危うい現状で、悠長に他人の、それも奴の心配なぞと思う奴も居るだろうが、こればっかりは性格なのだろう。何となく俺はライトを許していた。

 しかし、今は違う。


「俺のせいでモルモットにさせられた? もうそんな事はどうでもいい! 絶対に泉希に土下座させてやる! あ、でも、泉希はもうあいつには会いたくないだろう。下手をすればトラウマになっている可能性まであるか。」


 俺は、泉希のあの涙を思い出す。

 更に怒りが増す!


「ダメだな。少し落ち着こう。奴の最も嫌がる事は何だろう? ふむ、あれだな。」


 俺は今、とても醜い顔をしているに違いない。

 そこに、桧山さんからコールが入る。


「シンさん、あの、すいません! もう分かっているとは思いますが、あいつは、比良坂はライトニングサークルです! あいつには、本社施設からは絶対に出ないように言っておいたのですが。それで、迷ったのは事実のようなんですが、後は何もしていないの一点張りで。」

「そんな事はどうでもいい! それで、今、泉希はどうですか? 泣いていませんか? 変な事を考えたりしてませんよね?!」


 変な事というのは、自殺だ。

 只でさえコンプレックスを持っているのだ。これが引き金にならないとも限らない。

 もっとも、『変な事』でも、俺が今考えているような悪意ならば、問題無いのだが。


「はい、今は落ち着いたようです。敦子さんがついてくれていますから大丈夫でしょう。比良坂に関しては、新庄があいつの自室に監禁しましたから、もう出られない筈です。」


 良かった!

 うん、姉貴には悪いが、泉希を任せよう。

 下手に男の俺がしゃしゃり出ると、かえって不味い事になりそうだ。

 それに、現状、俺はリアルでは全くの無力だ。


「ありがとうございます。それで俺と奴とのPVP、あれはどうなるのですか?」


 そう、俺が考えていたのは、PVPで奴に勝って、ペナルティーを与えてやることだ。さっきまでは特に何も考えていなかったが、今、俺の悪意がその方法に至った。


「特に何も言われていませんね。松井部長も、岡田部長も、PVPには何か期待しているようですし。あ、でも、シンさんが嫌なら、私から言っておきますよ。」

「いえ、予定通りやりましょう。本当はリアルでぶん殴ってやりたいのですが、今の俺には無理ですし。なら、せめてPVPでってところです。それで桧山さん、今いいですか?」

「はい、何でしょう? 何なら私がそちらにダイブしますけど?」

「い、いえそれには及びません。それで・・・」


 俺はライトに対する復讐、第一弾を桧山さんに伝える。


「分かりました。確かにあいつにはそれが効果的かもしれませんね。すぐにやっておきます!」

「ありがとうございます。じゃあ、宜しくお願いします。」


 うん、今出来る復讐はこれくらいだろう。

 続いて俺はサモンにコールする。幸い、エンドレスナイトのギルドルームに居たようで、すぐに出てくれた。


「サモンさん、今日は。今いいかな?」

「シンさん、今日はや。構へんで~、丁度今、帰ったとこやし。」

「なら良かった。済まないけど、今から俺の練習というか、実験に付き合って欲しいんだ。ちょっと思いついた事もあってね。」

「お! わいはそういうの待っとったんや! ほんで、どうやら本気になったようやな。」

「まあ、ちょっと色々あってね。今日のPVP、真剣に勝ちたくなったよ。じゃあ、人気の無い場所、『鳴門の街』でいいかな?」

「了解や! クリスも連れてすぐ行くわ!」

「うん、あり・・・」


 はや! 俺は礼を言おうとしたが、コールはそれで切れてしまった。

 俺も急いで部屋を出て、『鳴門の街』に飛ぶ。



「メテオアロー!『ダメージキャンセル!ですわ!』」


 俺はサモン目掛けて、弓スキルで攻撃をする。

 ダメージキャンセルを唱えたのは、クリスさんだ。

 そして、明らかにタイミングが合っていないと思われたのに、サモンの身体が青く光る。


 クリスさんが成功した理由は明白だ。

 ダメージキャンセルは、敵が攻撃しようとした瞬間から、味方に攻撃が当たるまでに、双方を選択して唱えなければならない。マジックキャンセルよりも、手順が一つ多いだけに、元々かなり難しい。

 しかし、弓に限って言えば、実はかなり簡単なのかもしれない。

 そう、遠距離からの弓矢攻撃には滞空時間がある。なので、詠唱が間に合うのである。


「やっぱりやな。しかし、弓にはこないな弱点があったとはな~。ほんで、これはかなり使えるんとちゃうか? あいつも弓スキル取ってるんやろ?」

「うん、俺もそう思う。そもそも、このゲーム、対人戦闘については殆ど考慮していないでしょ。まあ、遠距離攻撃はかなりのメリットだから、図らずともバランスが取れてるって所かな。」

「でも、PVP同好会の方達でも、これは知りませんでしたわね。」

「せやな。そもそも、対人でダメージキャンセルを使う事自体が稀や。NPCと違て、ちょっとタイミングをずらされただけで、もう通用せえへんからな。」

「え? PVP同好会なんてギルドあるんだ。じゃあ、ちょっとアドバイスを貰いに行きたいな。」

「いや、わいらも以前に聞きに行ったことあるねん。ほんで、昨日の作戦会議で全部伝えられたと思うわ。それに、シンさんが行ったらどないなるかはアホでも分かるやろ。」


 あ~、そうだった。メイガスは対人戦闘において、かなりのアドバンテージ、と言うか、チートそのものだ。PVPに関しては、俺の存在自体が反則だ。


「確かにそうだな。ん? もう12時前だし一旦戻ろう。そろそろルール説明とかで呼び出されそうだ。うん、付き合ってくれてありがとう。」

「では、私達は先に食事を済ませておきますわね。1時までには戻りますわ。」

「うん。じゃあ、また後で。」


 サモンとクリスさんが消えた。



 ギルドルームに戻ると、早速メールが入った。

 うん、思った通り奴だ。


『今から、ルールの打ち合わせにそちらに行きます。尚、今回のPVP、管理側も興味があるらしく、松井部長も連れて行きますから、そのつもりで。』


 相変わらず一方的だな。そして松井を連れて来るという言い方、流石は奴と言うべきか?


 ライトと松井が、いきなりギルドルームに現れる。

 例のエルフアバターと、もう見慣れてしまった茶髪イケメンジャージ姿。


 ふむ、松井が連れてきたのだろう。


「おや、驚いているようですね。NGMLに協力してあげている僕からすれば、これくらいの事は簡単に出来るんですよ。挨拶はもういいでしょう。早速ルールの打ち合わせと行きたいのですが、その前に!」


 やはりか。ライトの表情を見る限りでは、かなり怒っているようだ。


 奴のIDは、三段重ね状態が解消され、単に『ライトニングサークル』とだけ表示されている。

 そう、俺が先程桧山さんに頼んだのはこれだ。

 頼んだと言っても、俺が、以前のフォーリーブスとラッキークローバーの件について、和解したと伝えただけなのだが。


 奴が何故人を集めることが出来たかは、俺にも想像できる。

 あの、特殊な状態、三段重ねのIDがあったからこそ出来た事だ。

 確かに普通の人間からは避けられるだろうが、一部のちょっとおかしい連中からは、奴のあの状態は、反骨心の象徴としてさぞかし崇められた事だろう。

 悪に憧れるってところだろうか?

 かなり前だが、ネットで、凶悪犯罪を起こした犯人を尊敬する人達のサイトが出来たと話題になった事がある。おそらくはそういう連中が集まったのだろう。


 なので、俺は第一段階として、そのカリスマのシンボルを奪ってやった訳だ。


「うん、やっぱりID表示はシンプルな方がいい。」


 俺は先に嫌味を言ってやる。

 すると、ライトは更に激高する!


「何を馬鹿な事を! この嘘吐きが! 僕は和解なんかしていない! さあ、松井さん、この状態を元に戻して下さい!」

「う~ん、戻せと言われてもね~。被害者であるシン君が許すって言ったら、もうそこに罪は存在しないね~。だから、ペナルティとしての過去のID表示は無くなるだけだよ~。」


 松井もおどけたように返事をする。


「それに、ライトさん、貴方、以前俺に和解のメールを送れって言ったじゃないか。俺はそれを実行したまでだよ。」

「た、確かにそうは言ったけど・・・。あ~、もういいです! 全く貴方は人を不快にさせる事に関しては天才のようですね!」

「貴方には負けますけどね。そんな事より、ルールの打ち合わせでしょ? 俺は貴方が決めたルールに従いますよ。」


 俺は今回、いや、この時点では、泉希の件に関しては何も言わないつもりだ。

 本当はぶん殴りたくて仕方ないのだが、かろうじて抑える。

 ここで奴を殴っても、意味は無いのだから。


「うんうん、そのルールなんだけどね~。それは僕に決めさせてくれないかな~。意味は分かるよね。」

「はい、松井さんが決めるのなら、問題は無いですね。お願いします。」

「僕なりに考えていたんだけど、仕方ないですね~。ええ、従いますよ。」


 ふむ、ここではライトに拒否権は無いようだ。

 これは、契約とやらでかなり縛られていると見ていいだろう。

 まあ、奴とNGMLとの契約に関しては、姉貴からかなり厳しい内容だとは聞いていたので、想像通りと言えるのだが。


「じゃあ、言うね~・・・」


 松井の決めたルールは、至ってオーソドックスだった。

 一対一で、消費アイテムは使用禁止。それだけだ。

 アイテムフォルダーを使っても構わないので、武器の持ち替えは自由。


 これはかなり作戦の枠が広い。

 しかし、俺達は、こういうルールも想定して昨晩作戦会議をしていたのだから、既に準備は出来ている。

 不利なのは承知しているが、先程の事も含めれば、何とかなるだろう。


 いや、絶対に勝つ!


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