3ON3
3ON3
俺達は一斉に駆け出し、それぞれのポジションを取る!
境界線、少し手前の真ん中に、盾と斧装備のローズ。
そして、そのすぐ右手に、義元左文字装備のカオリン。
俺は杖装備で、その二人のちょっと後ろに陣取る。
3対3なら、ごく一般的な陣形と言えよう。
対するサモン達は少し意外だった。
ローズと対峙して、中央に盾と小剣装備のサモン。これは予想通り。
更に、サモンの横に槍装備のタカピさん。うん、これも問題無い。
そして、サモンの後ろに、ぴったりとクリスさん。ここが想定外だった!
なんと、彼女の装備は杖ではなく、弓だ!
「あらあら、驚いているようですわね。」
「そうっすね。クリスさん、後衛一筋じゃなかったんすか?」
「あらあら、アーチャーは立派な後衛ですわ。どっかのアニメは例外ですわ。」
まあ、確かにそうだな。だが、これは納得できる。クリスさんは、俺の『マジックキャンセル』を警戒したのだろう。
しかし、突っ込み所はまだあるんだが。
「まあ、そう言う訳や、今回はこの前みたいな無様な負け方はせえへんで。覚悟しといてや~。」
「へ~。ならサモン、その耳は何かしら?」
あ~、カオリン。やはりそこ、突っ込むか。
サモンのうさ耳は、背後のクリスさんにしっかりと握られている。
ちなみにタカピさんは、サモンの横で俯いて首を振っている。
「こ、これは保険や! わいも男や! 間違いがあったらあかんさかいな。」
う~ん。サモン、男の意味が微妙だぞ。
更にサモンは続ける。
「まあ、大丈夫やとは思うけどな。シンさんには悪いけど、そのお二人、確かに別嬪さんやけど、そこまで完璧なスタイルでもないしな。」
ふむ、確かにカオリンの胸は普通サイズ。小さいとも思わないが、決してでかいとは言えない。
ローズに至っては、『貧』という字が当て嵌まる。
「サモン! いい度胸ね! そこまで言われたら退けないわ! シン! いいわよね?!」
「あたいはまだ発展途上っす。それにこれは只のアバっす。気にしないっす。」
ローズは知らないが、カオリン、胸までリアルに合わせなくて良かったろうに。おかげで、リアルの自分を否定された気分になったのだろう。かなりお冠だ。
「あ~、カオリン、さっきも言った通り勘弁してくれ。そもそも、セクハラぺナなんかで勝負がついた日には、そこの神様が認めてくれそうにない。」
「そ、そう? シンがそう言うなら、今回は見逃してあげるわ! サモン、命拾いしたわね!」
「はい、私も良く分りませんが、正々堂々と勝負して下さいね。」
ぶはっ!
NPCにまで突っ込まれてしまった。
俺も、カオリンの言った、『命拾い』の意味は良く分らんぞ。
前哨戦はそこまでで、目の前のカウンターが5秒を切る!
「・・・3・2・1、始め!」
「スーパーアイドル! 城塞! オールアップ!」
「スーパーアイドル! 城塞! トリプルガードアップ!」
真っ先に盾スキルを唱えたのはサモンとローズだ。ただ、サモンの場合はそれにプラスして、全ステータスアップのバフを唱えた。おそらく自分にだろう。
そして、ローズは俺達3人全員に、物理防御を上げるバフを唱えてくれた。
これは先日ローズが取った魔法スキルだ。少しでも俺の負担を少なくする為の、彼女の配慮であろう。
「ダブルパワーブースト! ダブルガードアップ!」
「トリプルパワーブースト! トリプルヒットアップ!」
これはクリスさんと俺。
クリスさんは、自身とタカピさんに唱えたはずだ。
ここまでは開始即の一瞬だ。
そして、これはお互い下準備に過ぎない。
ここからが本番だ!
カオリンとローズがサモンに向かって突撃する!
うん、これも作戦通り。
しかし、ここで俺達の読みは外された!
何と、サモンとタカピさんは、俺目掛けて突っ込んで来たのだ!
俺達はてっきり、前衛で、俺の次にHPが少ないカオリンに来ると思っていた。
お互い、『スーパーアイドル』を使用するのは当然だ。
そしてその場合、高威力のスキル攻撃は『スーパーアイドル』を唱えた者にしか選択できない。なので、範囲魔法が得意なクリスさんが弓を装備したのにも納得だった。
更に俺目掛けて矢が降って来る!
チッ! クリスさんか!
これはどうせ避けられない。基本ステが違い過ぎる。
「ダメージキャンセル!」
俺は迷わず俺とクリスさんを選択して唱える!
よし、成功! 俺の身体が青く光った!
「阿修羅『ダブルアタック!』六臂剣!」
「斧鉞『ダブルアタック!』『ダメージキャンセル』コンボ!」
更にカオリンとローズの、サモンへの攻撃を倍加してやる!
しかし、残念ながら、ローズの攻撃は、クリスさんに無効化されたようだ。
サモンの身体が一瞬青く光る!
まあ、これも仕方無い。想定済みだ。元々ローズとクリスさんは同一ギルドだ。
クリスさんはローズのタイミングを完璧に把握しているだろう。おまけにローズは素直な性格なのか、かなり合わせ易いと来ている。
「な? なんや? この攻撃力! ありえへんやろ!」
サモンが悲鳴を上げる!
そう、サモンのHPゲージは、このカオリンの一撃のみで、一気に1/3削れたのだ!
サモンは物理防御力をアップするバフに加えて、物理と魔法、両方の防御力を倍増させる『城塞』まで使用している。攻撃力を倍増させた最上級スキルとは言え、カオリンごときじゃ、せいぜい3000削れるかどうかのはずだ。サモンのHPは現在18000くらい。つまり、通常なら1/6くらいしか削れないはずである。
「カオリン! ローズ! そのまま削り切っちまえ!」
「「はい!」」
しかし、こっちもかなりヤバい。
クリスさんの矢が再び俺を襲う!
流石にこれは間に合わなかった!
一発でHPが1000近く削られた!
更にサモンとタカピさんも俺に迫って来る!
もっとも、サモンは後ろにローズとカオリンのおまけつきだが。
どうやら、サモンは防御を捨てて、俺を獲るのに専念するようだ。
ふむ、ここは保険の使いどころだな。
俺はカオリンから借りた、『髭切の太刀』に装備をしなおす!
「シンさん、すまんな~。」
「フェイント!」
「シン君、頂きです!」
先ずはサモンの攻撃を空振らせる。サモンは連続攻撃に繋がらず、少し拍子抜けしたようだ。
しかし、同時に来たタカピさんの攻撃はどうしようも無かった。甘んじて喰らう。
チッ! 一気に1300かよ! 流石は最高威力の武器だ!
「斧鉞『ダブルアタック!』『ダメージキャンセル』コンボ!」
「阿修羅『ダブルアタック!』六臂剣!」
よし! こっちは成功だ!
またローズの攻撃が無効化されたようだが、これでサモンのHPゲージは一気に削れ、イエローゾーン。既に1/3しか残ってない。
「こら不味いわ! せやけど、ここは初志貫徹や!」
「ええ! シン君、覚悟!」
「私もシンさん一途ですわ!」
流石はサモン、いい判断だと思う。ここで下手にカオリンに構おうとすれば、恐らくタカピさんもクリスさんも混乱するだろう。
俺もカオリンとローズのバフに集中するのみだ!
しかし、クリスさん、その言い方で俺に矢を放つのは、勘弁して欲しい。
サモンとタカピさん、そしてクリスさんの攻撃が連続で俺を襲う!
俺のHPが凄い勢いで削れて行く! 既に半分を切っている!
だが、俺は黙って耐える。
そう、次の彼女達の攻撃に賭けている!
「斧鉞『ダブルアタック!』コンボ!」
「阿修羅『ダブルアタック!』六臂剣!」
サモンが消えた。
『YOU WIN!』
眼前に大きな表示がされる。
そして、何とサモンが復活した!
ふむ、PVPでのデスぺナは無いから、ここに呼び戻されたというところか?
更に、上空で見守っていた天照大神が舞い降りて来る。
「おめでとうございます。シンさん、カオリンさん、ローズバトラーさん。私は貴方達の強さを認めましょう。さあ、受け取りなさい。この『真・八咫の鏡』を! また、負けたサモンナイトさん、クリスタルメアさん、タカピさん。いい試合でしたよ。なので、貴方達にも授けましょう。受け取りなさい! そして、その神器を私と思って所持して下さい。さすれば新たな道が開かれましょう!」
続けてロゴが流れる。
『CONGURATURATION! 八咫の鏡クエスト、コンプリート!』
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ここは安全地帯。今、俺達は、これからの、サモン達とのPVPに備えての作戦会議中だ。
「ところで、カオリン、あの『義元左文字』、付ける効果は何にしたんだ?」
「あ~、それ、実はまだ迷っているのよ。一つはもう決まって、既に付けたのだけれど、もう一つがまだなのよ。」
「じゃあ、その付けた奴は何にしたっすか?」
「『物理防御力半減』効果よ。物理攻撃時、相手の物理防御を半分にするみたい。物理攻撃力30%アップとかもあったけど、それだと、称号と被るじゃない。」
うん、割合アップ系統の効果は重複しない。攻撃力20%↑の武器と、攻撃力30%↑の称号を同時装備した場合、攻撃力50%↑とはならないのだ。大きい数字、30%↑のみが適用される。
そして、カオリンの選択は間違っていないと思う。他の効果をつけるよりも絶対にいいだろう。
「で、それを付けた後、まだ選択できる効果は?」
「それは、最初に選べたのと、全く同じよ。」
ん? 全く同じ?
「じゃあ、その、防御半減ってのを、もう一度付けられるのか?」
「え? それは考えた事も無かったけど。あ、できるみたいね。でも、被った場合、無効にならないかしら?」
「どうだろう? こういう取り返しのつかない選択肢の場合、そういう意地悪な事はしないと思うけど? つまり、無効になるなら、選択肢から消えるというのが俺の考えだ。」
「あ、それはあたいもそう思うっす。ここ、何だかんだ言っても、激甘っすから。」
「そうね。じゃあ、シンに従ってみるわ。失敗しても、また取りに行けばいいのだし。その時は付き合ってね。」
カオリンは上を向いて、目を瞑る。効果を付与しているのだろう。
「え? 何これ? 効果が一つになって、見た事も無い奴に変わったわ!」
「ぬお? そんなのありか?! で?!」
「ええ、『貫通』よ!」




