八咫の鏡クエスト
八咫の鏡クエスト
温泉でのんびりし、俺達はギルドルームに戻る為にギルドの街に飛ぶ。
もう8時なので、かなりの人通りだ。
ギルドホールの転移装置は、人がひっきりなしに点滅している。
「うん、あの変なデモ隊はもう居ないみたいだな。やはり全てはライトのせいだったという訳か。」
「でも、VR真理会そのものは解散していないみたいっすね。まだ会員募集の貼り紙があるっす。」
ギルドホールの掲示板には、依然として、でかでかと、運営側とメイガスを批判する内容の会員募集の貼り紙が掲げられている。
まあ、あれは週単位の契約だから、まだ残っているだけなのかもな。
今日の話だと、ライトには、もうあの組織は不要だろう。そう、運営批判していたオーナー自身が、運営側と繋がった時点でもはや意味を為さない。増してや自分がそのメイガスになるのだ。どの面下げて会員に接触するというものだ。
もっとも、NGMLがライトを利用して、あのギルドから更にモルモットを獲得したいとかなら話は別だが。
そして、今のあいつは、少なくともNGMLに有用と評価され、必要とされている。それだけであいつは充分だと言っていた。改めて、何ともやるせない奴だ。
俺達は転移装置に乗って、ギルドルームに戻る。
ふむ、まだ誰も来ていないか。
カオリン辺りはもう来ているかと期待していたが、彼女も俺ばかりには構っていられないだろう。そう、彼女にはリアルがある。只でさえ、ログイン時間を増やしてくれているのだ。大学に差し障りが出れば、本当に申し訳ない。
特にすることも無いので、ローズと先程の会話を続ける。
「まあ、あれもそのうち解散するだろ。ブルのメイガスが修正された現時点で、はっきりと判明しているメイガスはもう存在しないのだから。」
「え? まだ、シンさんが残っているっす!」
「いや、俺は、厳密にはもはやメイガスとは呼べないだろう。まあ、知らない人からすればそうなんだろうけど。それに、もし俺が生き返れたら、メイガスそのものを無くすプログラムがアップされるだろうし。」
「それで、シンさんは生き返った後はどうするっすか?」
「そうだな~。カオリンと一緒に、先ずは泉希に会いに行くよ。後は俺に協力出来る事があれば買って出るだけだ。俺の蘇生が泉希の治療には鍵となるようだし。それと、サモンさんが何やら事業を興すつもりのようで、どうも俺はそのメンバーに含まれているらしい。うん、生き返れたら、かなり忙しくなるな。」
「そ、その、私なんかの為に本当にありがとうございます! 私、本当は、シンさんが生き返れたら、それだけで充分だったんですよ。後は、この思い出と共に、死ぬまでリアル逃避するつもりでした。でも、私もそれだけじゃもう満足できないみたいです。もう子供は産めないと思いますけど、ちゃんと責任を取って下さいね。」
「ああ、泉希が元気になったら、思いっきり抱かせて欲しい。」
「はい。あ・・・」
俺はローズを抱きしめ、その口をキスして塞いだ。
「やっぱり、この状態じゃ、あたしが不利ね! でも、泉希ちゃん、シンが生き返ったら、今までの分、しっかり取り戻すつもりよ! シンも、そ、その、覚悟しておきなさいね!」
いつの間にか背後に立っていたカオリンがまくし立てる!
「お、お帰り、カオリン。そ、その、リアルでの事は、俺が生き返ってからだぞ? だから、約束は出来ないんで、本当に済まない。」
「カオリンお帰りっす。でも、明日、楽しみっす。待ってるっす!」
「ええ、あたしも楽しみよ。そ、それで、シン、あ、あたしも・・その・・」
今度はカオリンを抱きしめる。
「あ~、まあ、落ち着くところに落ち着いたっちゅう感じやな。そやけど、この状況、わいは構へんけど、他の奴には見せられへんな~。完全にハーレムやからな~。」
「そうですわね~。でも、シンさんなら許せますわ。」
「げ! サモンさん、クリスさん、す、済まない! それで、今晩は。」
「サ、サモン! クリスさん! こ、今晩はっす!」
「ふ、二人共、ちゃんとノックくらいしてよ! そ、それで、今晩は。」
俺達三人はあたふたする。
まあ、隠した所で、そのうちばれるだろうし、仕方無いと諦めよう。
「ここはノックなんてできへん仕様やから、カオリンちゃん勘弁してや~。そんな事よりも、やられてもたわ! 最後の神器クエスト、コンプされてもた!」
「ふむ、それで慌てて来たと。それで、サモンさん、コンプしたのは何処のギルドだろう? かなりの大手ギルドじゃないのか?」
「それが、あのVR真理会や! ライトニングサークルの名前が載っとった!」
あ~、何となく想像がつく。
大方、メイガス化に成功したライトが、実験がてらに行ったのだろう。
コンプの仕方も、NGMLに聞きだした線が濃い。
NGMLからすれば、誰がコンプしようとどうでもいいのだから、ライトに気分良くモニターさせる為になら、喜んで教えるだろう。
皆が席につく。
「なんか、自慢げな顔をしたあいつがまた来そうだよ。それでどうしようか? サモンさん、うちも挑戦しようか?」
「せやな~、あいつに情報を買わされるんは癪や。わいらも自力でって言いたいとこやねんけど、それがさっぱりなんやわ。」
ふむ。それは前も言っていたな。
そして、これは俺の名字が入る、『八咫の鏡クエスト』だ。実はかなり興味があったので、できれば俺達で最初にコンプしたかったところだ。でも、流石に全ての神器クエストをVRファントムで独占するのにも抵抗があるか。
「じゃあ、サモン、クリスさん、あのお馬鹿は何人でコンプしたか分かる?」
「たったの5人や。ライト以外の奴は隠密玉を使うとったみたいで、IDが棒線になっとたけどな。」
うわ~、あいつ、自分だけ名前載せて、他の奴にはさせないって、どんだけよ?
でも、VR真理会の会員は、自分がそこに所属している事を伏せていたいから、当然か? 誰だって、運営側にはあまり目をつけられたくはないはずだし、あそこに所属していると言うだけで、交友関係も悪くなりそうだ。
「あそこも推奨レベルは99で12人っすから、あいつ、結構やるっすね~。」
「いや、ローズ。八岐大蛇で判明したけど、ここの推奨レベルや人数なんて、全くあてにならないな。」
「そうね。あれはもはや詐欺のレベルよ! じゃあ、詳しく教えて頂戴。」
「そうですわね・・・」
そこにタカピさんが来た。
残念ながら、俺に関する進展は、まだタカピさんには来ていないようで、俺が目を合わせると、首を振った。
だが、これで勢揃いだ。これならコンプに繋がる意見も出そうだ。
皆で簡単に挨拶を交わし、今の話をタカピさんに説明する。
うん、タカピさんも乗り気なようだ。
「なるほど。入ってすぐに通路が二股になっていて、選んだ通路によって、ボス部屋での内容が変わるという事でいいですか? この前の桶狭間イベントみたいな感じですね~。もっとも、あの時は扉でしたが。」
「そうっす。あ、タカピさん、別れてからはまた扉があるっす。それで、左の通路だと、神様を守ることになるっす。逆に、右側の通路だと、神様を倒す事になるっす。」
「当然、うちも両方試してみましたわ。」
「ふむ。じゃあ、神様を守る時、一発も神様に当てさせないとかは?」
うん、歴史イベントとかもだが、より難易度の高い選択をした方がコンプに繋がり易い。
「いや、あの神さん、天井のところに浮いとって、そもそも敵の攻撃は当たらへん位置や。わいらは、やって来た鬼どもを全滅させただけや。」
「それならローズちゃん、その神様って、何か喋らなかった? 今迄から、ボスの話す事ってかなりのヒントよ。」
「そうっすね~。守る時は、あの鬼達を倒せるくらい強いのならこの鏡をやる。で、倒す時は、自分を倒せるくらい強いのならやる。って感じだったっす。」
「う~ん、ありきたりだな~。カオリン、神話ではどうなんだ?」
カオリンは、我が意を得たりとなるかと思ったが、そうでもなかった。
「そうね~、神話では、天照大神が、天の岩戸に引き籠った際に、岩戸の隙間からその鏡で天照大神を映して、興味を惹かせて外におびき出したって感じだったわね。でも、ここの神話の設定とかは、かなりいい加減よ。八岐大蛇は割と忠実だったけど、八尺瓊勾玉も、この八咫の鏡も、それに関して争ったとかいう記述はないわ。ゲームの為に、作った人が適当にこじつけている部分が多そうね。」
う~む、カオリン先生でも無理か。
「じゃあ、ここで議論していてもつまらない。皆で取り敢えず行ってみよう。前回みたいに、一度クリアすれば何かヒントがあるかもしれない。」
「そうですね~。それが良さそうです。」
「せやな、わいもそない思う。ほな行こか。」
「そうですわね。流石はシンさんですわ。」
「そうね。まだ時間も早いし丁度いいわ。」
「はいっす! じゃあ、『伊勢神宮』っす!」




