続・八岐大蛇クエスト
続・八岐大蛇クエスト
一瞬で視界が変わり、目の前には、あの荘厳たる出雲大社。
ふむ、『出雲の国』の転移装置に飛ばされたようだ。
横にはローズとサモンも居た。カオリンはデスぺナを喰らっているのだろう。ここには居ない。
「う~ん、流石に4人じゃ失敗して当たり前だよな。でも、ローズ達の時とはかなり違ったみたいじゃないか? これは脈ありだと思う。とにかく、一旦ギルドルームに戻って、カオリンを待とう。」
「せやな。最後の攻撃もブレスが無くて、全部噛み付きやった! それも、全部カオリンちゃん目掛けてや!」
「そうっすね。流石はカオリン先生っす!」
俺達がギルドルームに戻ると、タカピさんと、クリスさんが居た。
「君達、酷いじゃないですか! 抜け駆けするなんて!」
「そうですわ! サモンちゃん! 私に仕事を押し付けて、自分はクエストに行っているなんて! でも、その顔じゃ失敗したようですわね。いい気味ですわ!」
うわ! 二人はお冠のようだ。
「い、いや、タカピさん、クリスさん、なんか話の流れで仕方なくというか。とにかく、クエスト自体は失敗しましたが、ヒントは掴めたと思う。次は一緒に行きましょう。それで、タカピさん、どうでしたか? 何か分かったんですか?!」
「せ、せやで! わいらは、皆で一緒にコンプする為の偵察や。ほんで、クリス、あっちの方はほんまに済まんな。でも、その様子やと、もうできたみたいやな。流石はクリスや!」
俺達は、必死に弁解する。
しかし、二人はそれ程怒っている訳ではなかったようだ。
「そうですね。やはり共通点はあるようです。それで、ブル君も今日は帰りましたし、明日ではっきりするでしょう。だから、安心して下さい。それではシン君、そのクエストの話をお願いしますね!」
「ええ、後はシンさ・・・、いえ、何でもないですわ。とにかく、これで下準備はほぼ完全ですわ。なので、サモンちゃんも安心していいですわ。それより、八岐大蛇クエストの話を詳しくですわ!」
流石はクリスさん、俺達が何処に行っていたのかも分かっているようだ。
3人で、さっきまでの事を詳しく説明する。
「なるほど。それは、カオリンのやり方で間違っていなかったようですね。僕もうろ覚えですが、そういう話だったと記憶していますよ。」
「流石はカオリンちゃんですわ! 確かにこれでは、うちは脳筋ギルドと呼ばれてしまっても仕方ありませんわね。」
うん、タカピさんのお墨付きなら、問題無いだろう。
そして、クリスさんも居るのなら、エンドレスナイトも、そこまで脳筋とは思えないのだが?
ふむ、彼女はサポートに徹していると見るべきか?
そして、エンドレスナイトの実情も、何となく想像がつく。
恐らくだが、サモンのカリスマ性が強すぎて、他のメンバーは、皆、サモンに頼りっきりになってしまったのではなかろうか?
他のエンドレスナイトの面々を知らないから確証はできないが、今までの話から憶測するに、サモンに意見できるのは、ローズとクリスさんだけなのでは?
「とにかく、最後はカオリン一人に攻撃を集中されてしまった。俺も、タイミングが一致していないので、あれを全て無効化するのは無理だよ。」
「あ~、あれは確かにシンさんでも無理やわ。せやけど、『城塞』かけたら、わいとローズちゃんやったら、3発までは耐えられるし、その間に全部殺してしまえばいけるやろ。」
そこにカオリンが帰ってきた。
「そ、その、削りすぎちゃってごめんなさい!」
カオリンは頭を下げる。
「いや、それは気にしなくていいよ。あれは、一緒に居た俺も悪い。そんな事よりも、カオリンが居てくれたおかげで、大きな前進だったようだ。」
「せやな。カオリンちゃんのおかげで、あの展開はわいらも初めてや! 次は6人全員で行けば、楽勝やろ。」
「なら、その事なのだけど、まだ引っかかることがあるわ。あの尻尾よ! 間違いなく、あれは不自然な形だったわ!」
俺とサモンでフォローしたのはいいが、まだ問題は残っている。そう、あの尻尾をどうするかだ。
「じゃあ、最初にカオリンが言った通り、頭を全部削ってから、次に尻尾を攻撃してみよう。何か、更に変化があるかもしれない。」
「そうっすね。まだ時間も早いっす! 今から行くっす!」
「うん、僕もやってみたいですね~。皆さん、今度こそコンプリートです!」
「カオリンちゃんの借りを返させて貰いますわ!」
うん、タカピさんも、クリスさんも、やる気満々だ!
今回はパーティーリーダーをサモンにして挑む。
前回同様、集中攻撃されても、サモンかローズならば、少しは耐えられるだろうとの判断だ。
もっとも、最初はサモンよりも硬いローズに振ったのだが、例えNPCであっても、結婚はどうのとか、訳の分からない事を言い出したので、サモンになったのだが。
おかげで、皆に思いっきり、ご馳走様といった顔をされ、流石に俺も恥ずかしかった。
大蛇が寝たところで、皆で一斉に削る!
今回、俺とクリスさんは、カオリンとタカピさんのアシストだ。
「では、クリスさん、行きますよ~! 無双『ダブルアタック!ですわ。』八連穿!」
うん、これは成功だ!
タカピさんの身体が一瞬赤く光った。
「シン! こっちもよ! 阿修羅『ダブルアタック!』六臂剣!」
こっちも当然成功だ。
「パワーブースト! カオリン、ずるいっす。あたいもシンさんのバフが欲しいっす。」
「そこ、文句言う暇あったら、さっさと削らんかい! ローズちゃんのほうが攻撃力あるんやからしゃあないやろ。」
そんなこんなで、アタッカー4人で、丁度一人2頭ずつ、ものの数分で削り終えた。
ちなみに、クリスさんの範囲魔法だと、攻撃範囲が3頭までしか選べず、それだとかなり燃費が悪いので、今回のようになった。
まあ、報酬アイテムである『草薙の剣』の効果が、武術系スキルのリキャストタイム半減からも分かるように、アタッカーの為のクエストであるようだ。
「よし! じゃあ、尻尾に行こう!」
「「「「「おう!」」」」」
俺達は、広場から離れて、不自然に膨らんだ尻尾を前に、相談する。
まだ時間は5分以上もあるし、大丈夫だろう。
「ほな、先ずはわいが攻撃してみるわ。」
「それがいいわね。あたしも、サモンがリーダーという理由だけじゃなくて、その武器がいいと思うわ。」
「え? カオリンちゃん、この、『天の羽々斬り剣』がええのんか? 確かに、片手剣では最強やけど、攻撃力だけやったら、ローズちゃんの『金時の鉞』と一緒やし、タカピさんの使うてはる、『不動王の槍』には劣るで? わいは、こっちの方が二刀装備できるし、盾とも変えれるから、好みで使うとるけど。」
「あ! 僕も思い出しましたよ! そのサモン君の剣は、俗に『十握剣』と呼ばれるもので、八岐大蛇を退治した時に使われたとされていますからね~。」
ふむ、良く分らないが、どうやらこれは、かなり期待が持てそうだ。
「ほな、行くで~。シンさんはダメージキャンセル。クリスは回復。準備しとってや~。」
「うん、任せてくれ。」
「了解ですわ。」
サモンが、膨らんでいる部分を目掛けて、剣を振り下ろした!
「げ! なんや? 硬い物に当たった感触がして・・・、あ~っ! なんやこれ! 剣の攻撃力が減ったで! マイナス10されてもた~っ!」
なんと! 武器の攻撃力が減るなんて現象、初めてだ!
更に、予想に反して、大蛇は微動だにしない!
う~ん、まだ寝ているのか?
「でも、見て! 膨らんでいるところが割れて、中から剣が出て来たわ! 神話では、剣が欠けたってなっているから、これは予想通りよ! きっと、草薙の剣か、天叢雲剣のはずよ!」
「え? カオリンちゃん、それほんまかいな? せやけど、確かにそっくりやな。」
サモンはそう言いながらも、その出て来た剣に手を伸ばす。
ふむ、見た目は俺達が持っているアクセサリー、『草薙の剣』と確かに似ている。
「あ~っ、やっぱりやわ。しかも、只の『草薙の剣』や。てっきり、シンさんの時みたいに、真とかがついてんの期待してんけどな~っ。 これじゃ、剣の攻撃力が減ってもうただけ、損したわ~っ!」
「いや、どうだろう? 確かに只の草薙の剣かもしれないけど、理に適っている。」
「そうね。シンの言う通りだわ。これは、剣の攻撃力は減ってしまったけど、クリアする前に強力なアクセサリー、『草薙の剣』を手に入れる事が出来たと考えられるわ。つまり、初めての人は、それを使って頑張ってクリアしろってことね。」
「うん、どうやら、それが作った人の意図するところでしょう。そして、ひょっとしたら、まだそれの上位アイテムが手に入る可能性も残されているかもしれませんよ。」
「タカピさんの言う通りっす! サモン、腐らずにクリアしてみるっす!」
「せやな。ほな、取り敢えずは、今まで通りクリアしてみるべきやろな。」
俺達は広場に戻って、総攻撃の準備をする。
大蛇の首は、どれもレッドゾーン寸前の状態でまだ動かない。
クリスさんが念の為にと、サモンに3回、身代わりの魔法、『サブスティトゥー』を、対象をローズにしてかける。
「ほな、『ダブルアタック』無しでもいけるやろ。オールパワーブースト!」
「そうですわね。マジックブースト!」
「じゃあ、皆、予定通り頼むよ。クリスさんは範囲魔法の連続詠唱で3頭を。後はそれぞれ一頭ずつだ!」
「「「「「おう!」」」」」
全員が担当の頭に向けて散る!
「じゃあ、カウントしますよ~! 3、2、1、行きます!」
タカピさんのカウントと共に、皆で一斉に攻撃に入る!
「絶対零度! 絶対零度! 絶対零度!」
「阿修羅六臂剣!」
「無双八連穿!」
「斧鉞コンボ!」
「二刀六臂十二連!」
「ヤバ! 俺、間に合うかな?」
俺はまだ矢の単体でのスキルを取っていないので、一人、スキルに頼らず、ひたすら連射する。
攻撃した瞬間、前回と全く同じセリフが聞こえたが、全く無視だ!
しかし、ぎりぎり間に合わなかったようだ。
後、ほんの少しという所で、俺の目の前の首が、サモン目掛けて襲い掛かる!
俺も、矢を射るのに専念していたものだから、ダメージキャンセルは間に合わない!
サモンの身体が一瞬青く光り、ローズの身体が赤く光る。
ふむ、身代わり魔法が発動したようだ。
俺が、止めを刺そうと矢を番えると、サモンが叫んだ!
「シンさん、待ってくれ! わいは大丈夫や! 身代わり魔法のおかげで、まだまだいける! それより、後はこいつだけや! 少し様子見ぃへんか?」
「そうですわね。グランドヒール! サモンちゃんにしては冷静な意見ですわ。」
「そうね。サモンにしてはいい意見ね。あたしも少し気になることがあるわ。サモン、逃げ回ってみてくれないかしら?」
「確かに、サモンらしくないっすね。それで、あたいも、そいつの射程を知りたいっす。3m以上離れたら、ブレスになるんすかね?」
「み、皆酷いわ~! ほな、取り敢えず逃げて『ダメージキャンセル!』みるわ! あ、シンさん、おおきに。」
クリスさんが、ローズを回復し、サモンが逃げようとしたところを、また大口が襲おうとしたので、俺がキャンセルしてやる。
大蛇は、最後の一本の頭でサモンを追おうとする。射程としては、胴体の付け根から、10mといったところか?
他の頭が地面で伸びているのを引き摺るので、本体の移動速度はかなり遅い。
結果、サモンは難なく逃げおおせ、満身創痍の大蛇が、必死に首を伸ばしながら、のろのろとサモンを追う。
そして6秒後、懸念されていたブレス攻撃は放たれなかった!
「姫! 姫を食わせるのじゃ! これ! 貴様、逃げるでない!」
「鬼さん、こちら~や! 姫さん食いたいんやったら、追いついてみ~!」
サモンは完全に余裕だ。
「どうやら、噛み付き攻撃に拘るようですね~。もう少し様子を見ましょう。」
「タカピさん、そのようですね。サモンさん、済まないけど、もう少し逃げ回ってみてくれ。他の首も回復する様子は無いし、いつでも止めは刺せる。」
「了解や! ほ~れ、こっちやで~。」
サモンは胴体を中心に、弧を描くように暫く逃げ回るが、結局サモンには追い付けず、攻撃も無い。
「うん、これ以上は無意味なようだ。止めを刺そう。」
「せやな、ほな頼むわ。」
俺は、番えていた矢を放った。
「ぬぉ~! 口惜しや! 寄って集って凹りおってからに! ぐぅおぉぉぉ!」
遂に大蛇は断末魔の悲鳴を上げ、巨大な光の輪と共に消えた。
すると、サモンの頭に刺してあったというか、かろうじて頭に載っていた櫛が光り、サモンの目の前に、あの弥生美人が現れた。
「素戔嗚尊様とそのお連れの皆様、ありがとうございます! これで災厄は去りました。ですが、私めにできるお礼と言えば、これからは素戔嗚様の妻として尽くすのみでございます。」
奇稲田姫は、そう言って、サモンの頬にキスをした。
ふむ、サモンも満更でもなさそうだ。
「サモンちゃん! そんな使えない女を構ってはいけませんわ!」
ぶはっ!
クリスさんはお冠のようだ。
そして、「CONGURATULATION! 八岐大蛇クエスト、クリア!」が流れる。
う~む、やはりコンプリートではないようだ。
入手品のログも、少し多めの経験値と、スキルポイントが1400P。そして、『災厄を屠りし者』の称号だ。
そして、クリスさんの言う通り、この姫、出て来たものの、確かに何の役にも立たなかったな。
ん? でもないか? 囮としては、充分に役に立ったと言うべきだろう。
ところで、今回も俺、実は要らない子だったのでは?




