ブルのテスト
ブルのテスト
「よっしゃ! 成功や~っ! 突っ込め~っ!」
「す、凄いわ! でも、後は任せて! 灰塵舞滅殺斬!」
「本当に成功しちゃうんですね~。これはいいデー・・。おっと、それどころじゃないですね。円撃無双突き!」
「メテオアロー!」
「乱れ撃ち!」
見ると、ローズの身代わりで、サモンのHPが僅かに減っただけだ。
これは、敵がほぼ同時に唱えてくれたからの結果だな。
ばらばらで撃たれたら、こうは行かない。
作った側からすれば、一斉ならば回復も間に合わないという考えだろうが、まさかこんな方法でやられるとは、思ってもいなかっただろう。
今回は、この連撃で5段目までの敵が一掃された!
お代わりのおかめ天女が、階段を一斉に滑り降りて来る!
そこへローズを先頭に、カオリンとタカピさんも突っ込んで行く!
「ブル! 外してもいいから、また5段ずつ行くぞ!」
「りょ~か~い!」
「ボルケイノ!」
「アイスランス!」
「ウィンドカッター!」
「コズミックバースト!」
「サンダー〇レーク!」
「バーニングフォール!」
「「マジックキャンセル!!」」
また、ごちゃまんと単体魔法が放たれる!
毎回、変なのが混じるのは、どうやらそういう仕様か?
作った奴の年齢と好みがばれるぞ。
今回は、滑り降りて来た三列くらいを無効化できたようだが、後はタイミングが合わなかったようだ。
「流石に敵のタイミングが合ってへんな。でも上出来や! ハイパーヒール! グランドヒール! ほんでもっかいや。サブスティトゥー! サブスティトゥー! サブ・・・!」
サモンがローズと自身を回復し、身代わり魔法をかけ直す。
「シン! この敵、全部あたしが仕留めていいのよね!」
「だから、カオリンは回りを良く見るっす~! あっと、あたいもっす! 城塞! マジックバリア!」
「これは無双のし甲斐がありますね~!」
前衛三人は、獲物が豊富で満足のようだ。次々に敵を屠っていく!
俺とブルも、手を休めず、連射していく。
その調子で敵を一掃し、次の踊り場まで辿り着く。
次のおかめ天女と鬼の混合チームは、流石に面倒なので、最初はサモンとローズに任せる。
サモンが連続範囲魔法で鬼を一掃してから、全員で突っ込んだら、これまた一分かからずに殲滅できた。
俺も、前回のクリスさんが居た時と違って、今回は大いに役立てたようだ。もっとも、クリスさんが回復する分を、俺とブルで無効化しただけという話ではあるが。
「じゃあ、ここからがブルの本領発揮だな。最初は俺がやるから、ブルが一通りタイミングを掴めたら交代だ。」
「は~い! でも、僕もびっくりだよ~。本当に僕と同じことが出来る人を見たのは初めてだよ~。」
「それは俺も同じだよ。とにかくありがとう。」
「なんかいい雰囲気っすね! でも、ブルちゃん、シンさんは私のですからね!」
「い~え! ローズちゃん、シンは物じゃないのよ! それに、今は皆の仲間よ!」
「あ~、そこ。どうでもええから先に便所行ってき~。こっからは長丁場や。途中で洩らしても知らへんで~。わいも行っとくわ。」
安全地帯の上で、カオリンが顔を赤くして消えた。続いて3人も消える。
「しかし、こうして見ていると、トイレに行けるだけでも、俺達からすれば羨ましい存在だな。」
「そうっすね~。あたいもここ数年・・・って、何を恥ずかしい事言わせるんですか!」
「あ、ごめん。」
ふむ、ローズはある意味聖女と。
アホな事を考えているうちに、皆が戻ってきた。
「よし、じゃあ、行こうか!」
「「「「「おう!」」」」」
俺達が部屋に入ると、あの般若、玉祖命が、簾越しに話しかけて来た。
「ほほ~う、何処かで見た顔ぶれじゃのう。ふむ、初めての者もおるか。しかし貴様! シンと申したかや? 貴様だけは苦手じゃ! 初めての時はまだ可愛げがあったのじゃが、二度目はどうじゃ?! ことごとくわらわの攻撃を無効化しおってからに! そして、その者もじゃ! そなた、サモンナイトと申したかや? 欠伸をしておったじゃろう!」
う~ん、しっかり根に持たれているな~。しかし、本当にいいAIだ。
「それは済まなかった。それで、今回もよろしく頼むよ。」
俺がそう答えると、少し間を置いてから、意外な返事が来た。
「そうじゃのう。そなた達には、特別仕様で相手をしてやろうかのう。喰らうが良い! サンダーレイン!」
げ! まだ簾は上がっていないぞ!
今までなら、簾が上がって、顔を見せ、準備は出来たかと聞かれてから戦闘開始だったのに!
「なんやなんや? このパターンは初めてやで?! オールヒール! 城塞! ガードアップ! オールマジックバリア!」
「そうっすね! 城塞! ガードアップ!」
サモンとローズが、簾に向かって慌てて走り込んでいく!
「まあ、理由は想像できますね! サモン君は運が悪かったと諦めて下さい!」
「そうね! シン! ブルちゃん! 頼んだわよ!」
「ったく、あいつら、やりすぎだろ! ブル! 最初は俺がやるから見ててくれ!」
「は~い! 何か良く分らないけど~。」
ここでようやく、簾が上がって、あの般若面が現れた!
「お~っほっほっほ! いい様じゃのう。それではシンとやら、次々行くぞよ? 準備はいいかや?」
「ふ~ん、戦闘中に俺を呼ぶとは、出来過ぎたAIだな。分かったから、始めてくれ!」
うん、間違いない! こいつはNPCではない。NGMLの誰かが直接操作してやがる!
「では、これでどうじゃ! 神の『ダメージキャンセル!』鉄槌!」
般若が巨大な槌を取り出し、そいつをサモン目掛けて振り下ろしたが、サモンの身体が青く光る!
うん、成功だ!
しかし、攻撃パターンが変わってやがる!
前回までなら、2回目は爪での攻撃のはずだ!
「小手調べはここまでじゃ! メテオ・・『ダメージ・・』は止めじゃ! トル『ダメージキャンセル!』ネードF5!」
「ちょっと! 汚いわよ! そんなフェイント! でも、流石はシンね!」
「まあ、好きにやってくれ。こうなりゃ受けて立つだけだ!」
本当に好き放題だな。俺達だからいいようなものの、他のプレーヤー相手にやったら、何言われるか分かったものじゃないぞ。
まあ、目的は分かっているからいいけど。
「ほほ~う、やるではないか。では、この調子で行くぞよ。」
般若は、今度は巨大な剣を取り出した。
今までならば、このパターン、次に来るのは範囲攻撃の『灰塵剣』だが、さて。
「灰塵剣! おりょ? 言ってみただけじゃ。」
「引っかかるかよ! 予備動作が無いからな!」
「なるほどのう。やはりそなたは可愛くないのう。どれ、ブルーベリーとやら。そなたはどうじゃ? 神の試練、受けてみるかや?」
全く、プレーヤーを指名するNPCが何処にいる!
「ブル、ご指名だ。交代しよう。攻撃の順番、タイミングは、事前の打ち合わせと大きく変わっているけど、攻撃の種類は一緒だろう。」
「は~い! でも、何か面白そうだね~! じゃあ、僕がお相手するよ~!」
「お~っほっほっほ! それでこそじゃ! では、行くぞよ。メテオ『ダメージキャンセル!』クラッシュ!」
ブルは難なく成功させた!
俺達の身体が一瞬青く光る!
「ほほ~う、小癪よのう。では、これでどうじゃ? サンダー『ダメージキャンセル!』レイン! 絶対『ダメージキャンセル!』零度!」
ふむ、連続で来やがった!
しかし、2回とも俺達の身体が青白く光り、何事も無い。
流石はブル! と言いたいところだが、2発目の絶対零度には、マジックキャンセルで対処できていれば100点だな。まあ、初めてだし仕方ないか。
「やるではないか! 灰塵『ダメージキャンセル!』剣! トルネー・・『ダメージキャンセル!』は止めずにトルネードF5!」
流石にこれは喰らってしまった!
全員が宙に舞う!
「オールグランドヒールや!」
サモンがすぐに回復してくれた。
しかし、なんだかな~。
「ごめんよ~、でも、あれは無理~。」
「ブル! 気にしなくていい! そもそも、ブルは初めてなんだから。お~い、もう少し手加減してやれよ~。難易度高すぎだろ!」
「本当にそうね! あたしも何かむかついてきたわ! シン! あのボス、やっちゃっていいんじゃない?」
「いや、カオリン、それは勘弁してやってくれ。色々な意味で台無しになる。」
「そうっすね~。それで、その性格からすると、桧山さんでは無さそうっすね。あ、ひょっとして、お義姉様っすか?」
ぶはっ!
おい、ローズ! それは言ってはいけないだろ!
俺もそうじゃないかなとは思っていたけど。
この好き放題なやり様、間違いなく姉貴だな。
「わらわが誰かは置いといて~、次、行くわよ~! 絶対『マジックキャンセル』零度!」
よし! これは完璧だ!
「流石よね~。じゃあ、後数十回くらい付き合って貰うわね~。」
姉貴の奴、もはや隠す気ゼロだな。
その後、ブル相手に、かなり卑怯なやり方でのテストと言うか、データ採取が続けられた。
そして、予告通り、30回程で終わったようだ。
般若の顔が、ローズの顔へと変わる。
「良く頑張ってくれたわね~! うん、ブルちゃん、ありがとうね! 今回はこれで充分よ。じゃあ、えっと、褒美を進ぜよう、受け取るが良い! 炎『ダメージキャンセル!』獄!」
俺は迷わず無効化してやる。
そこでいつもの、CONGURATULATION!クエストコンプリートの文字が表示された。
「全く、やるとは思っていたが、本当にやるか? で、姉貴、今回はこれでいいのか?」
「本当にアラちゃんは可愛くないわね~! うん、お疲れ様。サモンちゃんも付き合わせてごめんね~。」
「やっぱり姐さんでしたか。まあ、わいで良ければいつでも付き合いますわ。」
「サモンさん、本当に済まない。そして、これは無かった事にしてくれるとありがたいんだけど。」
「そんなん当たり前や。せやけど萌えたわ~! 今までで一番おもろかったんちゃうか?」
「そ、それは良かった。」
俺達は、出現した扉に足を向ける。
しかし、時間は短かったが、精神的にはかなり疲れたぞ。




