一寸法師クエスト
一寸法師クエスト
街道を暫く歩くと、門が見えて来た。桶狭間イベントと同じで、二つ並んでいる。
「で、今回は俺が右の門で、ローズが左の門なんだな?」
「はいっす! 暫くは別行動っすけど、最終的には合流できるっす。じゃあ、あたいも頑張るっす!」
俺達はそれぞれ門をくぐる。
「ふむ、聞いてはいたが、敵はインセクターばかりか。とにかく仕留めて行こう。」
現在俺は、遊園地にある、コーヒーカップのような乗り物に乗せられている。
周りは全て水。なるほど、これで川を下っているという設定か。
そして、上空から、1mくらいの蜂や蚊に似た魔物が襲い掛かって来る!
「確かにこいつら、近づかれてからの接近戦よりも、近寄って来るところを迎撃した方が楽そうだな。」
俺は近寄って来た巨大な蜂に狙いを絞り、矢を放つ!
「ふむ、一体につき三発かかるか。でも、見習いアーチャーの俺からすれば上出来だろう。」
武器の性能がいいのもあるだろう。俺は難なく駆逐していく。
自分にパワーブーストと、ヒットアップをかけるのも忘れない。
「げ! 今度は団体で来やがった! ローズの話だと、こいつら状態異常は効かないんだよな。言われた通り、範囲攻撃スキルを取っておいて良かった。喰らえ! 乱れ撃ち!」
5匹程が纏まって襲ってくるところに、矢の雨を降らせる!
「よし! 全部命中だ!」
当然これだけでは死んでくれないが、HPゲージが半分程には減った。
俺は続けて矢を放ち、駆逐していく。
ふむ、普通の奴なら確かに手こずりそうだ。連射できるから、かろうじて敵の接近を許さないものの、少しでも油断すれば、目の前にまで来られる。
実際、その後に数回団体で来られた結果、数発喰らってしまった。
このクエスト、本来ならば、ある程度の回復スキルを持った、高レベルのアタッカーが挑むのが丁度いいのかもしれない。
もっとも、レベル70台でバフまで取っているアタッカーは少ないだろうから、少々きつくても、連射も可能な俺なら、何とか行けると考えていいだろう。勿論、武器の差もある。
「で、遂に来たか! これ、倒しちゃいけないんだよな。」
上空から、5mはあろうかという、巨大な、且つ美しい蝶が舞い降りて来た。
ふむ、これなら分かり易い。モ〇ラのような奴だったら、反射的に倒しにかかっているな。
巨蝶は、俺の乗っているコーヒーカップ?の縁に穏やかに停まり、俺に背を向け、その巨大な羽を開く。
「なるほど、これに乗るのね。」
俺が巨蝶の背にまたがると、巨蝶は羽をゆっくりと羽ばたかせ、飛び立った。
景色が流れる。
下を見ると、巨大な屋敷が目に入る。平屋だが、如何にも平安貴族なんかが住んでいそうな感じの、立派な建物だ。
巨蝶は、その屋敷の縁側目掛けて、輪を描くように降下していく。
「う~ん、ここから先は聞いていないんだよな~。ローズは、ここからは全て一本道で、戦闘も大した事無いって言ってたから、大丈夫だとは思うが。」
しかし、蝶が降りるにしたがって、俺は違和感に気付く!
そう、何もかもが巨大なのだ!
上空から見た時は只の屋敷だったが、近づいてくると、数キロに及ぶ、巨大な宮殿だ!
屋根瓦が、一枚10mくらいある!
「ふむ、分かって来たぞ。どうやらこれは、俺が小さくなったと考えていいだろう。つまり、さっきの敵は通常サイズの虫。この蝶だって、少々でかい程度だ!」
巨大な屋敷の縁側には、これまた巨大な人影が見える。
十二単に身を包み、50mくらいはあるか? どうやら女のようだ。どっかのロボットアニメとかで出したら受けそうだな。
その巨大女が手を差し出すと、俺を乗せた蝶は、その手の平に軟着陸した。
俺が蝶から降りると、巨蝶は、空に消えて行った。
「あ、あたいっす! いや~、あたいもこのクエストは初めてなんすけど、シンさん、可愛いいっすね~。わ、私が食べちゃいたいくらいです!」
なるほど、この巨人はローズと。俺が小さくなったのなら納得か。
「ふむ、何となく理解はできるけど、これは凄いな。本当に小人になった気分だよ。だが、食べるのは勘弁してくれ。で、これからはどうなるんだ?」
「あ、食べるのはあたいじゃないっす。あいつっす!」
振り返ると、100mくらいはありそうな鬼が居た!
巨大ローズの倍くらいある!
流石に、今のサイズの俺では勝てないだろう。
「良く分らないけど、あれをローズがやっつけるのか? しかし、その衣装だと、動きづらいのでは? 防御効果はそこそこありそうだけど?」
「あ、この衣装は、このクエストで勝手に装備させられるっす。で、やっつけるのはシンさんっす!」
ローズはそう言うと、何と、俺をその鬼目掛けて投げやがった!
うわっ!
いかつい鬼の顔が俺の眼前に迫る!
すると、鬼が大きく口を開く!
俺は、激しい衝撃と共に、どうやら、鬼の口の中に納まったようだ。
周りに、巨大な牙が立ち並んでいる。
更に俺は、そのまま何やら柔らかい感触のトンネルに運び込まれ、落下していく!
ふむ、食べられるとはこういう事ね。
しかし、これは、食われたんじゃなく、ローズが食わせたんだろ!
外から声が聞こえる。
「シンさん、そこで、何でもいいから暴れるっす!」
トンネルを落ちきると、10m四方はあろうかという空間だ。なんか、地面が柔らかい。
なるほど、ここは鬼の胃の中ということか。それで、何処でもいいから攻撃しろと。
「適当でいいのかな?」
俺は、その柔らかそうな壁に、めったやたらに矢を放つ!
数十発くらい放つと、また声が聞こえる。今度は野太い声だ。
「ま、参った! 降参するから出て行ってくれ! ついでにこれもくれてやる!」
意外とあっさりだな。もう鬼が音を上げたと。
確かに、大した戦闘では無かった。これで終わりなら、蝶に乗るまでで、このクエストは終わったと見ていいのかもしれない。
再び、俺は凄まじい衝撃と共に、宙を舞う!
さっきのトンネルを抜け、牙の林を脇に見ながら、外に飛び出した!
そして、巨大ローズの手の平に軟着陸する。
振り返ると、鬼は地響きを立てながら、遠ざかっていく。
ふむ、逃げたと。
「で、おい! ローズやめろ! そんなので殴られたら、死ぬだろ!」
見上げると、ローズが巨大な槌を振り翳している!
あの神器クエストのボスが持っていた奴の倍はあるか?
まあ、実際のサイズは数十センチくらいなのだろうが、今の俺には充分凶器だろう!
「あ、まだっす! そ、その、シンさん、わ、私に結婚して欲しいって言って下さい! でないと、コンプできないんです~っ!」
ぶはっ!
まあ、何となく気付いてはいたが、前回の告白クエストと似た感じだな。
「はいはい。ローズさん、俺と結婚して下さい。」
「なんか投げやりな言い方ですね! で、でもいいです! 嬉しいです! じゃあ、じっとしていて下さい。すぐ済みますから!」
俺が言われた通りにじっとしていると、その巨大な槌がこつんと俺の頭に触れる。
すると、視界が一気に変化する!
視界が落ち着くと、目の前にはいつものローズが居た。
そして、この顔には十二単が似合うようだ。今の彼女なら、日本史に出て来る美女、小野小町とやらにも負けないだろう。
そして、「CONGRATULATION! 一寸法師クエスト、コンプリート!」と出る!
更に、ローズの顔が近寄る。
「おい、これでコンプみたいだぞ? そ、そのキスはしなくてもいいのでは? ってか、あの結婚ってのも、実は要らなかったのでは?」
「そ、そんな事ありません! わ、私にとっては、プロポーズされて、キスしてコンプなんです~っ!」
あ~、なんかもうどうでもいいや。
俺も、こんなローズを目の前にして我慢できない。
思いっきり抱きしめてやる。
う~ん、桧山さんに嫌がらせでもされないか、とても心配だ。




