VR真理会
VR真理会
姉貴が消え、特にする事も無いので、明日のローズの授業の予習をする。
化学の授業をするには、俺の記憶の穴埋めが必須だからだ。
もっとも、俺のPCに、直接教科書をダウンロードするという荒業も可能だとは思うが、益々人間性が失われそうなので、それだけはしたくない。
順調に読み進め、明日の分まで終わらせ、息抜きをとTVをつけると、もう4時だ。碌な番組が無い。
うん、昨日は色々な事があった。
絡んで来た連中の謝罪を受け入れ、フォーリーブスに笑わせられ、ローズに告白し、ブルがメイガスと判明した。
なんか、凄いな。24時間戦える俺だから可能だったのかもしれんが。
ふむ、ブルで思い出した。俺もブルのように弓を使えるのだろうか?
流石にあの域に達するにはかなりの練習と経験が必要だろうが、基本、メイガスなのは同じなのだから、可能ではなかろうか?
現状、碌な攻撃手段を持たない俺としては、習得しておいて損は無いだろう。
それに後衛なのもいい。周りが良く見えるので、バッファーも兼任できそうだ。そう考えると、ブルがアーチャーになったのは、当然なのかもしれない。
早速、ステータス画面から弓を購入しようと思ったが、フォーリーブスの遺品?があったことを想い出し、アイテムボックスを確認する。
トリスタンの弓:攻撃+180 命中+40 特殊効果:命中30%↑
ふむ、かなりの性能のようだ。しかし、あいつ、レベルの割にはいい物を沢山持っていたな。レベル80台で、神器クエストのアイテムを2種所持していたのは破格だろう。もっともその影では、泣かされた人が居そうだが。
何処かで試し撃ちをしようと、部屋を出ると、ギルドホールのギルド参加者募集用の掲示板に、何やらでかでかと貼ってある。
ふむ、16個分のスペースを買い取ったようだ。
確か、A4サイズのスペース一つ、一週間でリアルマネー300円だから、大した金額ではないが、そこまでする気合には脱帽だな。
『VR真理会(素戔嗚を導く会)』
詳しく読んでみる。
『最近の管理サイドの横暴は、目に余ります! 無実の罪を着せられた人、このサイトを良くしようと思っている人、チート改造の被害に遭った人、一緒に力を合わせて闘いましょう! 不正を放置してはいけません! 泣き寝入りは、加害者を増長させるだけです! 一人では狩れなくても、パーティーを組めば、狩れないボスはありません! さあ、今こそ団結の時です! オーナー:ライトニングサークル』
あ~、内容なんか読まなくても、最後のオーナー名だけ見れば、全て理解できるな。
しかし、あいつ、程々にしないと、本当にアク禁喰らうぞ? ってか、ID再登録しないんだ。そして、こいつ、まだ俺に逆恨みしていると見える。
う~ん、俺もブルみたく、ID変えて貰おうかな? だけど、俺の場合はどうなるか分かった物じゃないから、止めた方が無難だろう。
少し気になったので、姉貴にコールしてみる。
「・・・ってのが貼り出されているんだが、構わないのか?」
「ふんふん、これは・・・! あ~、今は放っておけばいいわ~。この子は、自分が特別になりたいだけなのよ。」
「まあ、あいつの本質はそんなところかもな~。新庄さん達も、俺のせいでこんなアホにこれ以上付き合う暇はないか。」
その後、街の周辺、人気の少ない場所で試してみる。
実験は上々だ!
レベル20クラスの魔物なら一撃。まあ、俺もレベルだけなら既に65。ステータスの底上げが出来ていると見ていいだろう。束になってかかって来られても、遠距離から視認さえ出来ていれば余裕だ。
流石にブル程の連射は出来なかったが、慣れればそのうちできそうだ。
俺が気を良くして帰ると、ローズが待っていた。
ふむ、もう6時半か。
「シンさん、お早うっす!」
「ローズお早う。昨晩は、カオリンとは何を話したの?」
「あれは話がついたっす! あたいもカオリンには感謝してるっす。なので、後はカオリン次第っすね。私はシンさんを信じています!」
ローズはそう言って、顔を寄せて来る。
今一訳が分からないが、ローズに迫られて嫌な訳が無く。俺もローズを抱きしめて受け入れる。
「は~い、アラちゃん、ローズちゃん、おはよ~。お熱いところ、邪魔するわね~。桧山ちゃんが妬いてたから、あまり見せつけない方がいいかしら~。じゃあ、昨日の復習から始めるわよ~。」
ぐは!
全く姉貴には参るな。だが、俺の場合は隠しようがないので仕方ないか。ローズも、こんな俺を好きになってしまったんだから、諦めろ。
しかし、桧山さんがやもめだっとは。うん、彼女の居る時間帯では控えよう。
ローズが顔を真っ赤にしている中、モニターに、昨日の授業に沿った小テストが映し出される。俺達はタブレットにその答えを書いて行く。
午前中の、姉貴と俺の授業が終わり、ローズとこれからどうしようかと相談する。
「言っておくけど、この前のようなのは無しだぞ!」
「え? ああいうのいいじゃないですか! 本当なら、あれはシンさんが王子役になって欲しかったんですけど~。でも、今ならこうやって・・・」
イカン! この時間帯は桧山さんが担当だ。ここは自粛だ!
俺はローズを躱す。
「だから見られてるって。そうだな~。今朝、ブルみたいに弓が使えないか試したところ、いい感じだったよ。それで、そういった練習になるクエスト無いかな?」
「い、今更隠す必要は無いです! でも、仕方ないですね。あ、一寸法師なんてどうですか?」
「済まん、そういう記憶は抜け落ちているようなんで、詳しく頼むよ。」
「はい、そこも予想通りですね! じゃあ、説明しますね!」
ローズの反応には少し気になるところがあるが、まあいいだろう。黙って説明を聞く。
このクエストの推奨レベルは75。これも二人でやるクエストのようだが、俺とローズなら問題はなかろう。
俺達が部屋を出て、ギルドホールの転移装置に出ると、何やら周りが騒がしい。
「管理サイドの独裁に抗議する!」
「そうだ! このサイトは俺達プレーヤーで成り立っている!」
「チート反対! チート改造している奴は今すぐIDを削除しろ!」
「そうだそうだ! 管理側はチート改造の存在を認めて、そいつらを処罰するべきだ!」
なんか異様な光景だ。
全員、隠密玉でIDを隠し、初期アバで統一された4人が何やら吠えている。
この前、俺に絡んできた奴らと全く同じだな。
という事は、首謀者も当然あいつだろう。
「ローズ、こいつらには関わりたくない! 逃げるぞ!」
「は、はい!」
俺はローズの手を引いて、街の中央の転移装置まで走る!
幸い、誰も俺には気付かなかったようで、追っては来なかった。
俺達はそのまま『京の都』に飛ぶ。
『京の都』は、そこら中に古い建造物が立ち並び、五重の塔なんかもある。そういう景観等も楽しめる街にしているようだ。当然、京都タワーは無い。
「しかし、あいつら、自分のIDを隠しているんじゃ、説得力ゼロだな。」
「全くっす! しかし、何が目的なんすかね~? チートやってたって、このゲームじゃ、PVP以外じゃ、誰の迷惑にもならないっす。」
「まあ、連中の気持ちは分からなくも無いが、今の俺に発言権は無さそうだ。とにかく行こう。」
俺はローズに手を引かれ、京の都の門をくぐった。




