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VRファントム  作者: BrokenWing
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ブルーベリー

         ブルーベリー



「で、タカピさんはいいとして、何故君達まで居るのかな~?」

「あ、あたしはシンの友人代表として、聞く権利があるわ! そして、何故か転移装置の行き先に、『NGML応接室』というのが出ていたから、入ってみただけよ!」

「わ、私はシンさんの恋人だからです! あたいにも『NGML応接室』ってのが出てたっす!」

「まあ、僕はシン君の主治医ですからね~、当然ですよ。」


 俺は現在、その、『NGML応接室』とやらに居る。

 部屋の作りは、応接室とは名ばかりで、何の事は無い。俺達のギルドルームと全く同じ作りだ。モニターまである。臨時で作った感、バリバリだな。


 そして、俺の周りには、ブルーベリーさんと、何故かローズとカオリン、そして、タカピさんが居る。

 まあ、松井の意図は理解できる。

 どうせなら、関係者全員に話を聞かせておけば、二度手間にならなくて済むって魂胆だろう。更に巻き込む気が満々だな。


「す、すみません、ブルーベリーさん。この人達、全員関係者なんで、構わないでしょうか? 嫌なら外させますけど。」

「キャハハハ! なんか、シンさんって人気者だね~。僕も一対一だと緊張しちゃいそうだし~。うん、いいよ~。」

「あ、後もう一人・・・」

「いや~、待たせて済まないね~。じゃあ、始めようか。皆さん、気楽にかけて下さい。あ、僕は松井。この素戔嗚のシステム管理部長なんて者だね~。」


 いきなり目の前に、あのエルフアバターが現れた!

 ふむ、今回はIDもちゃんと松井と表示されているな。


 しかし、これにはブルーベリーさんも驚いたようだ。

 咄嗟にカオリンの陰に隠れる!

 ふむ、この面子の中ではカオリンが最も頼りになりそうだと。


「あ~、ブルーベリーさん、大丈夫です。絶対に危険は無い・・・と、思いますから。と、とにかく、皆、座りましょう。」


 以前監禁された時の記憶が蘇ってしまった。


 俺がそう言って、コの字型に配置されているソファーの真ん中に座ると、俺の横にはローズが何故かどや顔で。そして、右隣のソファーには、タカピさんと松井が腰掛ける。最後に、左隣のソファーにカオリンが座ると、その隣にブルーベリーさんがおずおずと座る。


「まずは自己紹介させて下さい。俺はシン。VRファントムというギルドのオーナーをさせて貰っています。さっき言った通り、俺もメイガスです。ブルーベリーさんにはまだ証明していませんが。」

「あたいはローズバトラーっす。ローズと呼んで欲しいっす。シンさんの恋人です!」

「え? ローズちゃん、さっきから気になっていたけど・・・、まあいいわ。あたしはカオリン。シンのリアルの友人よ。後、シンがメイガスなのは、彼がマジックキャンセルやダメージキャンセルを、10回に9回は成功させられるって言えば早いかしら?」

「僕はタカピ。シン君のギルドのメンバー兼、主治医と言ったところでしょうか。」


「皆さん、初めまして~。僕はブルーベリー。ブルって呼んでね~。あ、敬語も禁止~! 皆も気付いている通り、僕もメイガスって呼ばれている。僕からすれば、何も特別な気はしないんだけどね~。うん、カオリンさん、僕もそれくらいかな~。流石に100%は無理だけど、一度戦ったNPC相手なら、ほぼできると思う。」


 ふむ、やはりか。彼も俺と全く同じだ。しかも、今日の試合を見る限り、彼の方が俺よりも場数を踏んでいるのは間違いなさそうだ。


「じゃあ、何処から・・・」

「あ、最初に言っておくよ! 僕は決してチート改造とかしていない! プラウの人以外は皆信じてくれないんだけど、これだけは絶対だから! ほんと、僕に声をかけてくるのは、チートのやり方教えてくれって人達ばかりで、もう、うんざりだよ~。」


 あ~、道理で警戒された訳だ。

 彼は、今までずっとチート野郎って烙印を押されていたのだろう。クリスさんの知り合いも、チート改造で得た能力のようだったし。

 そして、俺の話を聞いてくれるのにも納得だ。彼からすれば、俺は唯一の理解者ということになる。


「うん、それは疑っていない。俺も疑われた事があるけど、俺の場合は更に特殊な状況なんで、説明のしようも無かったよ。だから、俺の事を本当に知っているのは、プレーヤーではこの3人だけだ。それで、本当に勝手なお願いなんだけど、今から俺が言う事を良く聞いて欲しいんだ。更にこの事は、絶対に他言無用で。そして、できれば俺に協力して欲しい。」

「う~ん、聞いてみない事には返事できないかな~? 誰にも言わないのは約束するけど~。」

「うん、それでいい。ありがとう。」


 俺はブルさんに全てを話した。松井も特に遮る事無く、黙って聞いている。

 まあ、NGMLに責任があるとか、余計な事は言わなかったしな。


 ブルさんは、最初は驚いたものの、どうやら本当らしいと信じてくれたようだ。


「じゃあ、僕もそうなる可能性があるんだ?」

「あ~、そこからは僕から説明させて貰うね~。」


 松井の話はこうだ。


 確かに、俺と同じになる可能性はあるかもしれないが、現状では全く原因が特定できていない。そもそも、俺の死因が、BAに関連しているかどうかも、厳密には不明だ。そして、俺と同様の症例は、今現在、何処からも報告されていない。


 なので、NGMLの研究施設で、直接データを取らせて欲しい。

 同じメイガスである、俺との共通点が何なのかを調べたい。それさえ分れば、そこを変更するなりしてしまえば、危険性はかなり低くなると思われる。

 最後に、これは医学にとって大きな一歩であることを強調した。


 ふむ、松井は、何一つ嘘は言っていないと思う。


 ただ、何時、俺のような現象が発生するか分からないのも事実だ。本当なら、今すぐにでもBAの使用を全面禁止とするのが最善である。だが、それをすると、恐らく俺は助からないし、BAの発展も望めないだろう。ローズも、俺の結果次第では助かるかもしれないのだ。現状、NGMLには、何の落ち度も証明されていない。極端な例えだが、車は交通事故を起こすからと、禁止にするべきだろうか?


 俺と、タカピさん、ローズ、カオリンとで顔を見合わせる。

 全員何も言わず、複雑な表情だ。



 しかし、ブルさんは、そんな俺達の考えを知ってか知らずか、笑顔で答えてくれた。


「うん、分かった! ちょっと僕を調べるだけでいいのなら、喜んで協力するよ!」


 幸いにも、彼の家は、研究施設には電車で行けるようで、早速、明日、水曜日の夕方6時から8時までと、明後日もその時間に来てくれると約束してくれた。

 ふむ、NGMLの連中は、また残業になるのは間違いないな。


「それで、僕も協力してあげるんだから、一つ、お願いを聞いて欲しいな~。」

「うん! 何でも言ってくれ! ただ、余り期待はしないで欲しい。何分、俺も今は幽霊の身分なんで。とにかく、本当にありがとう!」


 俺は立ち上がって頭を下げる。


「え? そ、そんな。頭を上げて下さい! 僕も、危険性を教えてくれたシンさんには、感謝だもの。だから、お願いっていうのは、松井さんにだよ。」

「うんうん。なら、うちで出来る事なら何でもしよう。でも、お金とかは、できれば勘弁して欲しいね~。」

「いや、松井さん、そんなんじゃないよ。僕のIDと、性別を変えたいだけなんだ。せっかくここまで育てたんで、再登録とかはしたくないよ~。」


 なるほど、チート野郎ないしはメイガスとマークされてしまった現在のIDでは、色々と厄介事に巻き込まれそうだ。しかし、性別もって、そこまでしなくても?


「うんうん、それならお安い御用だね~。では、いつ変更するか教えて欲しい。知り合いとかにも連絡しておかないと困るよね?」

「そだね~、この大会が終わってからがいいかな。うちは優勝するつもりだから、そうなると、僕のIDも広まってしまうのは間違いないよね。うん、丁度良かったよ~。」

「じゃあ、変えたくなったら、新IDを管理部にメールしてくれるといい。君から僕か、部下の新庄、桧山に連絡できるようにしておくから。勿論、直接コールしてくれても構わない。」


 ふむ、俺と全く同じ扱いだな。

 しかし、これは重要だろう。彼にもし何かあれば、迅速に連絡が取れるに越した事は無い。


「それと、シンにい、僕もVRファントム入れて! もう、アイテムも買ったよ~!」

「へ? 俺は構わないが、今のプラウはどうなる? 仲良さそうだったじゃないか? 後、シン兄って?」


 確かに喋り方からも、彼が若いとは思ってはいたが、それにしても、あのアバだし、シン兄はな~。


「ん? プラウを抜けるつもりはないよ~。なので、プラウの皆と都合が合わない時に、遊びに行かせて欲しいかな~。後、言ってなかったけど、僕は現在15歳! 何と女子中学生で~す! プラウの人達は知っているけどね。それで、シン兄は22歳でしょ? だからシン兄でいいよね!」 


 ぶは!

 そういや、新庄が、『彼女』って言っていたような気がする。

 あの時はそれどころじゃなかったので、気にしていなかったのだが。


 そして、俺の視界の片隅に、いつの間にか、『VRファントムにブルーベリーが入会しました。』と表示されている。

 ん? それはいいのだが、入会は打ち切っていたはずだし、まだ承認もしていないのに、何故だ?

 横を見ると、松井がにやついてやがる。

 なるほど。彼等からすれば、要注意人物は纏めておきたいと。


「わ、分かった。うん、ブルはもううちのメンバーだ。いつでも遊びに来てくれ。」


 ブルがそれでいいのなら、俺としても、彼女に報いる術はそれくらいしかないだろう。

 うん、また賑やかになりそうだ。 


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