メイガス確保
メイガス確保
サモンを除いた俺達全員は、今、闘技場の前の転移装置の側に居る。
「うん、彼は完全にメイガスだったよ。そして、ここで待っていれば、ブルーベリーさん達には会えるが、いかんせん初対面だ。下手に話しかけると、警戒されて落ちられるかもしれない。バットマンさん、何か手は無いかな? できれば、彼と二人きりで話したい。」
今回の目的は、彼の協力を仰ぐことにある。
完全に巻き込むことになるが、これはどうしようも無いだろう。
だが、これは彼にとっても悪い話では無いはずだ。何故なら、メイガスという共通点を持つ彼は、俺と同じ目に遭う可能性があるかもしれないからだ。
このままゲームを続けさせるのは危険かもしれない。
もっとも、NGMLはそうしたいのかもしれないが、原因が分からないまま、彼を俺と同じ状態にする程馬鹿ではないだろう。
「僕はプラウのオーナー、Qジロさんとは一度だけ取引をした事があるのだ。その線から、何とかやってみるのだ。」
「それなら行けそうですね。宜しくお願いします。」
なら、次はNGMLだ。
いきなり彼を拘束、監禁とかはしないと思うが、俺の時のように、高圧的な態度で迫るのは止めて欲しいところだ。
彼にも失礼だし、臍を曲げられでもしたら、協力そのものが危うい。
「あ、新庄さん、今いいですか?」
「はい、シンさん、こちらでも確認しました。彼女は間違いなくメイガスですね。あの矢の射ち方は、完全に手順を無視しています。試合が終わり次第、松井部長が直接会うとのことで、今、セッティング中です。」
ふむ、新庄ならともかく、松井なら問題はないか?
だが、できれば俺も直接会って話をしたいところだ。
もし協力してくれるのなら、というかそうして貰わなければ困るのだが、頭を下げておきたいからだ。それと、何よりも、俺の真実を包み隠さず彼に話した方がいいと思う。
「じゃあ、どうでしょう? 俺と彼がまず会ってみて、うまく二人きりになれたら、そこに松井さんに来て貰うと言うのは?」
「そうですね。ちょっと待って下さい。」
新庄は一旦コールを切る。大方、松井と相談しているのだろう。
NGMLとしては、俺に全てを話されると不都合があるかもしれないので、これは当然かもな。
待っていると、転移装置が点滅して、6人の人影が顕われた。
ふむ、試合が終わったようだ。
予想通り、プラウの全員が笑顔である。
早速、バットマンさんが、Qジロに駆け寄る。
俺達は、少し離れてそれを見守る。
「Qジロさん、久しぶりなのだ。さっきの試合、おめでとうなのだ。」
「え~っと、確か、情報ギルド、ドウプスターのオーナーさんでしたよね? 何か用ですか? うちは今の所、売れる情報はもう無いのですが?」
「バットマンなのだ。以前はいい取引をさせて貰ったのだ。今回は取引ではなくお願いなのだ。そちらのブルーベリーさんに、どうしても会いたいと言う人が居るのだ。」
ふむ、明らかに警戒されている感じだがどうなるか?
「う~ん、悪いけど、俺達はこれから祝勝会なんだ。それと、ブルに会いたいって奴は沢山居る。言っておくが、ブルは不正なんかしていない!」
げ! プラウのメンバー全員が、ブルーベリーさんの盾になるかのように彼を取り囲んだ!
このままじゃ不味い!
「シン君、待たせたね。うん、僕も君の方針に従うよ。でも、最初から同席させて貰うよ? これだけは譲れないね~。」
松井だ!
まあ、それは俺も異存は無い。
だが、今はそんな事よりもブルーベリーさんだ! この流れだと逃げられる!
「分かりました! それよりも・・・」
「うんうん、焦る気持ちは分かるよ~。部屋はもう用意してあるから。転移装置で『NGML応接室』というのが、君にだけ追加されたから~。」
う~ん、こいつにはなんかペースを崩されるな。だが、何か少し落ち着けたか?
まあいい、と、再びブルーベリーさんを見ると、何と連中の壁越しに、カオリンが直接ブルーベリーに話しかけている!
「初めまして。ブルーベリーさん、いきなりでごめんなさい。でも、どうしても貴方に会って欲しい人が居るの! そこのシンよ! そして、彼は貴方と同じ、メイガスよ!」
あ~、それは今、俺が言うつもりだったのだが、カオリンが言っても同じか?
だが、男の俺が言うよりも、女性の方が気を許してくれるかもしれない。
「ふ~ん、その手は初めてだね~。でも、それなら僕に証拠を見せて欲しいな~。シンさん、だっけ? 彼が本当にメイガスなら、僕も話くらいはしてあげてもいいよ。」
よし! 何とか食いついてくれた!
俺は心の中でカオリンに頭を下げる。
俺が進み出ると、プラウの人達も壁を解いてくれた。
「すみません、俺がシンです。お引止めして申し訳ない。だが、どうしても貴方と話がしたい。それで、俺がメイガスである証明方法はいくらでもあるけど、何をすれば納得して貰えますか?」
さあ、どう出る?
PVPとかが最も証明しやすいのだが。
「へ~、君がシンさんか。そだね~、今噂になっている、『八尺瓊勾玉クエスト』。あれを、一人でコンプリートしたら、認めてあげよっかな~?」
おい! こいつ、無茶振りにも程があるだろ!
って訳でもないか。
「それなら、MP補充アイテムさえあれば、俺一人でも可能だと思う。もっとも、ボス部屋だけならの話だけど。」
仲間全員が首を縦に振る。いつの間にかサモンまで居るし。
「え? え? ちょ、ちょっと、ごめん。僕は冗談で言ったつもりなんだけど? でも、君の仲間の反応からは、嘘を言っているようには見えない! あ~っ! その称号! じゃ、じゃあ、本当なの? 君もメイガスなの?」
「うん、だから貴方と話をしたい。これは、俺にとってはとても重要な話なんです。そして、貴方にとっても決して無駄にはならないと思います。」
何故か、ブルーベリーさんは泣きそうな顔で俺を見ている。
そのおっさん顔には何ともミスマッチな表情だ。
ふむ、多分だがこの人、リアルではとても若いのでは? 声も若いし。
「分かった! じゃあ、キューさんも一緒でいいかな? 僕一人じゃ不安だし~。」
ふ~、何とか成功のようだ。彼の表情も渋いおっさん顔に戻る。
だが、Qジロさんまで巻き込むのには抵抗がある。
「出来れば、ブルーベリーさんだけでお願いしたいです。あまり人に話せるような内容じゃ無いですから。」
すると、Qジロさんが、ブルーベリーさんに言う。
「何か俺が関わる話じゃ無さそうだな。ブルはメイガス同志、話してくればいいよ。そして、変な内容なら遠慮なく落ちればいい。うん、祝勝会も気にしなくていいぞ。後でまた皆で祝おう。」
「う~ん、でも、この人なら信用できるかな? じゃあ、キューさん、後は宜しく~! なるべく早く戻るね~。じゃあ、シンさん、何処で話そっか?」
「Qジロさん、すみません。では、ブルーベリーさん、俺について来て下さい。江戸の転移装置から飛びます。あ、後、バットマンさん、どうもありがとうございました。ローズ、報酬の件は頼むよ。」
「了解っす!」
「うん、これでミッションコンプリートなのだ! ローズさん、早速教えるのだ!」
俺はブルーベリーさんと並んで、江戸の転移装置を目指す。
皆もこの後は、一旦ギルドの街に戻るつもりなので、そこまでは一緒だ。
サモンを先頭にして、プラウのメンバーも併せた全員が俺達を取り囲むように付き従う。
途中、すれ違った何人かは、ブルーベリーさんに話しかけたそうだったが、この陣容にびびったのか、誰も話しかけては来ない。サモンの存在がでかいのもあるだろう。
連中の目的は分かる。あの試合を見ていて、ブルーベリーさんに何か聞きたかったのだろう。
「じゃあ、俺に触れて下さい。一緒に飛びましょう。」
「は~い! じゃあ、皆、また後でね~!」
ブルーベリーさんが俺の手を握る。
俺は目の前に出た表示から、『NGML応接室』を選択した。




