メイガス探し
メイガス探し
カオリンが授業を終えて、一旦落ちると、今度はサモンが来た。
「今晩は、サモンさん、今日は早いね。」
「サモン、今晩はっす。」
「シンさん、ローズちゃん、今晩はや。いや、あのアバターの企画書考えてんねんけど、今一ええ案が出えへんのや。」
ふむ、あれも俺は考えていたが、なかなかNGMLにとって有益と思われる方法が無い。
アバターのデザインを考えるだけでも一苦労なはずなので、開発部の人の負担が増えるだけだろう。
ん? 待てよ? デザイン?
「サモン、またしょうもないこと考えてそうっすね。」
「そ、それは否定しないな。でも、俺も全面的に協力するつもりだけど。」
「え? シンさんもですか? じゃあ、私も手伝います! 何をするつもりなんすか?」
何とも分かり易いと言うか・・・。まあ、サモンには、どうせ俺達は付き合っていると思われているだろうし、今更隠すこともないか。
ただ、発端がエロ目的であることは、ローズには隠すべきだろう。と言っても、サモンが絡んでいる時点でばれそうだが。
「うん、簡単に言うと、新しいアバター、衣装の提案だ。それでサモンさん、こういうのはどうだろう? ファッション関連、アパレル業界を巻き込めないかな?」
「え? シンさん、それはどういうことや? アパレルからデザイン買うたら、金かかるだけやで?」
「いや、逆だ。彼等からは、無料でデザインを提供して貰うばかりか、金も出させる。」
「え~っ? そないな手品! ふ~ん、なんかおもろそうやな。詳しく頼むわ。」
「いや、単なる思い付きなんだけど、要はこのゲームをファッションショーの会場にするんだよ。幸い、ここのキャラは美男美女が大半だから、モデルには困らないしね。そして、彼らの売りたい衣装を、このゲームのアバター衣装として提供して貰う。つまり、このゲーム内で広告させる訳だ。このゲームをやっている人は、試着感覚でその衣装を着られて、気に入ったらリアルでも買ってくれるだろう。NGMLは、彼等から広告料として一点いくらと金を取る。勿論、アバの詳細に、どこそこの会社の製品とか、この衣装はどこで売っているとか、但し書きをつけてやる。アバター衣装にデータ化するのも、全て彼らにやって貰う。NGMLは、連中が金と一緒に持って来たデータをアップするだけだ。これなら通るのでは?」
サモンが大きく目を見開く。
「そ、それ・・・、シ、シンさん! うん、それやったら通る! わいも知り合いのアパレル業界の奴に声かけてみるわ! シンさんおおきに! 早速企画書にするわ!」
「じゃあ、俺は企画書とか書いたことないから、気が引けるけど、お願いしてもいいのかな? ただ、その、分かってるよね?」
「勿論や! これからのシーズン、露出の高い夏物を売りたいはずや! 当然、水着もな。まあ、任しといて欲しいわ。」
ぶはっ!
そこは、ばらして欲しくなかったのだが。
「やっぱり、碌なこと考えてなかったっすね! でも、面白そうっす。あたいも鎧兜ばかりじゃ飽きてきたっすよ。あたいも女っすから、おしゃれもしたいっすね。なんで、できれば、鎧の上から着られるといいんすけどね~。今のところ、装備を全部外さないと、ちゃんとした服にならないっすから。」
ふむ、確かに先日のカオリンのチアリーダーの衣装は、装備を全部外してから、防具として装備する。当然防御効果なんて皆無なので、クエストとかには着ていけない。だが、装備の上から着られれば、その問題は無くなる。
ならば、水着姿で無双とかもありか?
ぐへへ。
ローズに着て貰うか?
「ローズちゃん、それも採用や! 特殊アクセサリーみたいな扱いにすればええかもな。よっしゃ、ほな、一旦落ちるわ。8時半には戻ってくる。」
サモンは、そう言い残して消えた。
俺はやはりメイガス探しが気になり、再び闘技場へと出向く。当然ローズもついて来た。
「やはり、技術的に凄い人はまま居るけど、俺のように、魔法の使い方そのものが違うという人は居ないな~。うん、ローズありがとう。もう8時半だ。ローズはギルドルームに戻って、皆と打ち合わせだな。」
「そうっすね。シンさんは帰らないんすか?」
「いや、俺はこのままここに居るよ。丁度、『プラウ』の試合は、9時からこの第6だし。残念ながら見に行けないが、サモンさんも居るし、心配はしていないよ。うん、頑張って!」
「了解っす。あたいも一回戦ごときで敗退するとは思ってないっす。じゃあ、またっす!」
ローズが去って、暫くすると、見覚えのある、悪魔アバターの男が俺の隣に腰掛けた。
「バットマンさん、今晩は。そろそろ始まりますね。」
「シンさん、今晩はなのだ。僕も、シンさんが直接確認してくれるのなら安心なのだ。でも、これは飽くまでも、まだ噂の域なのだ。なので、違っていても、悪く思わないで欲しいのだ。」
「はい、とにかく見てみないことには。」
前の試合が終わり、合成音声のアナウンスが入る。
「次の試合はパーティー戦、レベル80台です。出場予定のチーム、『プラウ』と、『オールナイト』の方は、会場前にお急ぎ下さい。」
すると、傍で観戦していたと思われる、6人の集団が、腰を上げた。
全員、初期アバターのジャージだ。
うん、この人達、どちらのチームかは分からないが、次の試合に出ると見ていいだろう。
そして、これは好都合だ。俺は彼等の会話に聞き耳を立てる。
「じゃあ、シーナちゃん、お願いだよ~。相手を攪乱させるのも作戦のうちなんだから。」
「了解です~。でも、そこまでしなくても、ブルさんが居るから楽勝です~。」
シーナと呼ばれて答えている人は、身長150cmくらいの、ブロンドツインテールの美少女アバ。IDは『シーナ』、レベルは75。
対する、作戦の話をしたのは、俺と同様、身長165cmくらいの銀髪の男性アバ。ただ、俺とは違って、筋肉質ボディーで、渋いおじさんと言った印象だ。IDは『ブルーベリー』、レベルは85。しかし、IDとアバのギャップがなんか凄い人だな。声も少し高いし。
「いや、俺もあの作戦でいいと思う。それに・・・」
「あ~、キューさん、その話はもういいよ~。とにかく、皆、頑張るよ~!」
「「「「「おう!」」」」」
ブルーベリーに、キューと呼ばれた男は、長身、180cmくらいの真っ青な耳をつけた、猫人アバター。IDはQジロでレベルは93。この人を中心に円陣を組んだので、彼がリーダーかもしれないな。他の三人のレベルは大体80台半ばなので、うちとは違って、レベルのバランスが取れたチームと言えるだろう。
彼らが観覧席から出て行ったので、俺はバットマンさんに聞いてみる。
「彼らは、どっちのチームか分かりますか?」
「はいなのだ。彼等が『プラウ』なのだ。でも、彼等の誰かはまだ分からないのだ。ただ、リーダーのQジロさんではないと聞いているのだ。」
今の会話の感じでは、作戦の鍵を握っているのはシーナかブルと見ていいか?
とにかく、次の試合、あの二人に注目だ。
会場からアナウンスが流れる。
『それでは只今より、1分後に、『プラウ』と、『オールナイト』によるパーティー戦、レベル80台が始まります。』
目の前に、59、58・・・と、カウンターが回り出す。
円形の闘技場の両端にあるゲートから、出場者が一斉に走り出て来る!
右の赤コーナーのゲートからは『プラウ』。左の青コーナーからは、『オールナイト』だ。
パーティー戦の場合は、闘技場の真ん中に線が引かれていて、試合開始まで、その線をお互い越えてはならない。
なので、それぞれ、開始までは半円形の陣地内で、ポジショニングをするのだが、どういう陣形を取るかも既に駆け引きのうちだ。
普通は、範囲攻撃を警戒して、ばらばらに配置するのがセオリーのようだ。
装備を見る限り、『プラウ』の方は、前衛は三人、盾と小剣を装備したガードを中心に左右にランサーとモンク。ガードはさっきのQジロだ。
そして後衛には、弓装備のアーチャーを真ん中に、左右に杖装備が二人。アーチャーは先程のブルーベリー。右側のウィザードかヒーラーと思われるのは、シーナだ。
ふむ、シーナがメイガスなのだろうか? それとも反対側の奴か?
しかし、何だ?あの陣形? 普通はばらけて配置するのに、『プラウ』の前衛は密集している!
後衛こそばらけているものの、あれじゃ、開始と同時に範囲攻撃のいい的だ。
まあ、駆け引きと考えるのが妥当か? 開始と同時に一斉にばらける可能性が高そうだな。
だが、対する『オールナイト』はもっと異様だった。
全員、真ん中の境界線に沿って、等間隔に6人全員が並んでいる。
しかも、全員、大剣装備のナイトだ!
なるほど。オールナイトの『ナイト』は、夜じゃなく、そっちの意味ね。納得だ。
確かに、今までの試合を見た限りでは、アタッカー有利なのは間違いない。
なので、ここまで極端な連中は初めて見たが、これはいい作戦かもしれないな。レベル80にもなれば、自分を回復するスキルくらいは持っていそうだし。
但し、普段のクエストならば、バランスが悪い事この上ないので、どこかの大手ギルド内で選ったと考えるべきだろう。
『・・・3、2、1! 始め!』




