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VRファントム  作者: BrokenWing
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歴史イベント

         歴史イベント



 その後は、俺以外は明日のPVPの作戦会議をしていた。

 別に俺も参加していいのだが、俺はさっきのカオリンの言った事が気になって、考え込んでいた。


「サモンさん、ちょっといいかな? ここの歴史イベントって、歴史を変えてしまった場合、他のイベントとか追加されたりしない?」

「ん? あ~、それはあるみたいやで。例えば、信長の場合やったら、『本能寺の変』をコンプして、信長を殺さんかったら、なんかしょぼいイベントが追加されたみたいや。」

「確か『上杉討伐』でしたわね。推奨レベルが40だったので、私達はまだやっていませんわ。」


 すると、カオリンも加わる。


「え! シン! それ、結構重要かも! サモン、クリスさん、それで、そのイベントが追加されたのは何処で分かったの?」


 クリスさんが話してくれる。

 分かったのは本当に偶然だったそうだ。

 サモン達が、『信濃の街』のクエストをやる時に、案内バニーにそのクエストの場所を聞いたら、『サモンナイトさんには新しいイベントが追加されました。』って言われたそうだ。

 何だろうと内容を聞いたら推奨レベルが40だったので、そのまま放置しているとのことだ。


 確かに、サモン達のレベルで推奨レベル40じゃ、やる気も出ないだろう。


「う~ん。という事は他にもあるかもしれませんね。僕達は義経の歴史も変えてしまっています。」

「タカピさん、それよ! 可能性は高いわね。情報ギルドのバットマンさんなら、何か知っているかも!」

「なるほどっす! 早速聞いてみるっす! 丁度取引材料もあるっす!」


 ふむ、今回の『桶狭間の合戦』と、前回の『衣川の館襲撃』イベントコンプの情報と引き換えか。

 隣のソファーを見ると、既にクリスさんがコールしているようだ。小声で何か話している。


 程無くして、バットマンさんが来た。


「VRファントムの皆さん、今晩はなのだ。僕も丁度良かったのだ。シンさん、少しだけだけど、情報が入ったのだ。」


 お! 流石は情報ギルド。これは俺にとっては最重要事項だ。

 話によっては、PVPの大会が中止になるまであるな。


「ありがとうございます! それで?!」


 俺はがっつくが、これは仕方なかろう。


「まだ確証は無いのだ。しかも、個人の特定が出来ていないのだ。でも、明日のPVPに出るらしいのだ。チーム名は『プラウ』、その中の誰からしいのだ。」


 すると、頭に直接声が響く。ふむ、新庄か。


『シンさん! それ、運が良ければ、二回戦のVRファントムの対戦相手です! 彼らの一回戦は9時から、第6闘技場です!』


 なるほど。両方一回戦を勝ち上がれば、カオリン達と直接対戦できると。


『分かりました。引き続き、何かあったらお願いします。』


 俺はここで新庄とのコールを切る。


「今はそれで充分です! バットマンさん、ありがとう。俺も明日の試合、見に行きます。それで、もしその中の誰かだったら、俺に渡りをつけてくれるとありがたいのですが。」

「僕達もシンさんに引き合わせて、初めて依頼達成なのだ。僕も顔の広さには自信があるのだ。何とかやってみるのだ。」

「うん、宜しくお願いします。それじゃ、今日の本題だ。カオリン、サモンさん、頼む。」



 今回、こちら側が出すのは、さっきの『桶狭間の合戦』のコンプリート情報だ。

 バットマンさんは、大いに興味を示す。


「その情報となら交換出来るのだ。僕が掴んでいる中では、『大化の改新』と、『本能寺の変』、『会津若松城』のイベントをコンプしたら、新しいイベントが出現するのだ。但し、挑戦できるのは、そのイベントをコンプした人がパーティーリーダーの時だけなのだ。そして、その追加イベントをコンプすると、更に新しいのが出現したとの話も聞くのだ。」

「なるほど。それはわいも全部コンプしとるな。出現場所も聞いてええか? あ、本能寺はもう知っとるけど。」

「そこまで知っているのなら、教えるのだ。どうせ街を虱潰しに回られれば、すぐばれるのだ。大化の改新だと『大和』、会津若松城だと、『江戸』なのだ。」

「なるほどな。それはわいでも想像つくな。ほんで、更に新しいイベントっちゅうのは?」

「おっと、サモンさん、ここまでなのだ。もっと知りたければ、『衣川の館襲撃』のコンプ情報も教えるのだ! 僕達は既にシンさん達があれをコンプしたのを知っているのだ!」


 ぐは! 流石だな。

 多分、イベントの扉を見れば名前が載っているので、そこからばれたのだろう。


 俺達は顔を見合わす。


「しゃあないな。わいらも今はこれで充分や。ほな、約束の桶狭間のコンプの仕方や。カオリンちゃん、頼むわ。」


 カオリンが手順を説明していく。クリスさんとローズも、途中での行動を補足する。


「うん、分かったのだ! 僕達も早速試してみるのだ。今日はいい取引ができたのだ。後、あのコンプ情報も知りたいから、今度はシンさん達に売れそうな物をこちらから持って来るのだ。」


 バットマンさんはこれで帰って行った。


 なるほど、お互い情報を小出しにして、更なる交換を図る訳だ。

 これなら、人間関係も良好にしておかないといけないし、結果、輪も広がるはずだ。ネットの掲示板だけ見ている奴よりも、俺は何倍も楽しめると思う。

 クリスさんの話だと、エンドレスナイトにはそういう情報を交換したい連中が、しょっちゅう来るらしい。

 うちの場合は、オーナーである俺との関係がある奴が少ないので、まだ来ないのでは?という感想だ。

 確かに、見ず知らずの奴といきなりそういう話はし辛いだろう。

 そして、あれ以後はフォーリーブスの回状が出回った事もあり、皆、下手に近づけないのもあるだろう。

 ただ、ギルドには無理でも、一人の時なら声をかけやすいので、俺は充分注意しろと、また釘を刺されてしまった。



 その後は、もう時間も遅かったので、明日の簡単な打ち合わせをして、皆落ちて行く。俺が彼らの一回戦を見ずに、『プラウ』の試合を見に行くことも納得してくれた。


 サモンは姉貴にやられて、かなり警戒したのか、今日は女性陣に手は出さないようだ。

 ふむ、こいつの場合は、単純な体罰の方が効果あるのかもしれんな。



 一人になったら、すぐに新庄からコールがある。こっちからも確認したかったので丁度いい。


「新庄さん、さっきの話、どうでしたか?」

「はい、早速調べてみました。チーム『プラウ』、参加者は全員、『プラウ』というギルドに所属しているようですね。今は7人で構成されていて、入会は打ち切っていますね。」

「それで、戦闘ログとかは残っていますか?」

「それを今調べているのですが、そういう節は見当たらないんですよ。残っているログも一日分だけですし。彼らは、今日もクエストをしているのですが、特に魔法の出が早いと言う人は居ませんでした。もっとも、一人は今日ログインしていないですしね。」

「う~ん、バットマンさんも未確認だと言っていたしな~。それに、残った一人という可能性もある訳だ。また、古いネタだったら、例のチートプログラムのせいかもしれない。情報の元は、多分、『プラウに一人、凄い奴が居る。』くらいでしょうし。」

「でしょうね~。あの時点では全員落ちていましたので、確認もできません。対象が絞れているのなら、直接電話をかけるとかできるのですが。」


 うん、7人全員に、管理側から直接電話があったとなれば、ちょっとした騒ぎになるだろう。


「とにかく、明日は彼らをマークしますので、後はこっちに任せて下さい。」

「はい、ありがとうございます。」



 新庄との話も終わって、することが無いので、外に出てみる。

 目的は、バットマンさんの言っていた追加クエストの確認だ。


 ギルドホールに出ると、12時前だと言うのに、まだ結構人が居る。

 大会の関係で、ギルドの活動が活発になっているのかもなと、一人で納得していると、声をかけられた。


「お前がシンか! このチート野郎が! 管理側にばれなくても、こっちにはばれてるんだよ!」

「やっぱりここで見張って居たら出てきたぜ。まあ、お前の話も聞いてやるから、大人しくついて来い!」

「わ、悪い事は言わないよ。貴方は今すぐIDを登録しなおした方がいい。それで、もうチートはしない。それが貴方の為だよ。」

「うん、それがいいね。そして、君のアイテムを全部僕達に渡してくれれば、もう誰も文句は言わないはずだ。さあ、そうしたまえ。」


 いきなり4人に囲まれた!


 へ?

 何こいつら?


 全員、IDを登録する際に、真っ先に表示される茶髪イケメンアバで統一されている。おまけに装備も全部外していて、初期のジャージアバ。しかも、全員隠密玉を使っているのか、IDも表示されていない。


 明らかに怪しすぎるだろ!


 しかも言っていることが支離滅裂だ!

 まあ、最後の奴の話で、こいつらの目的だけは分かったが。

 こんなとこで待ち伏せするより、狩にでも行けばいいのに。


「俺は何も悪い事はしていないが? そもそも、そのチートって証拠があるのか? 俺からすれば、今のお前等の方が迷惑行為の現行犯なんだが。」


 すると、比較的温和な物言い、IDを登録し直せと言った奴が返す。


「た、確かに証拠は無いね。でも、とあるサイトで君の話が出ていてね。僕達も悪は見過ごせないという訳さ。もし、本当にやっていないのなら、貴方がその潔白を証明すればいいだけだよ。」

「ふむ、突っ込み所は満載だな。それは悪魔の証明って奴だ。無い事の証明程難しい物は無いから、今の裁判制度がある訳なのだが?」

「お、お前! ごちゃごちゃ煩いですね! 黙って僕達の正義に従えばいいんですよ!」


 ダメだ。全く話が通じない。と言うか、そもそもこいつは俺の言い分を聞く気が無い。おまけに逆切れしてるし。


「ふ~ん。お前が正義なら、訴えるなりなんなりしてくれ。俺は管理側の決定に従うよ。とにかく邪魔だからどいてくれ。でないと、俺が訴えなくてはならなくなる。」


 しかし、こいつらはどかないようだ。


「へ! 訴えるって誰をだよ! 訴えるのは俺達なんだよ! さあ、そうされたくなかったら、さっさとアイテム全部出せって言ってんだよ!」


 最初に声をかけてきた奴が喚く。

 そして、全員が手を繋いで、俺をその輪の中に閉じ込めやがった!

 普通の奴なら、ここでログアウトしてしまえば逃げられるのだが、俺にはそれが出来ない。


 本当に迷惑な奴らだ。


「だから、訴えてくれって言ってるんだ! とにかく邪魔!」

「本当に口の減らない人ですね。ええ、訴えましたとも! でも、管理側は見て見ぬふりです! 権力サイドはいつもそうなんだ! 弱者の言い分を聞かず、面倒事は放置。だからサイトが荒れるんです! 僕達はそれを見過ごせないからこうやって頑張っているんです!」


 なんか、もっともそうな言い分だが、俺にとっては説得力ゼロだな。

 そして、口が減らないのはお前だろ! サイトを荒らしているのもな!


「分かった。じゃあ、その管理側、権力サイドってのと、お前が直談判すればいいだろ。うん、ちょっと待ってくれ。」


 俺は迷わず新庄にコールする。

 この詭弁を弄する奴の正体は、もう見当がついているしな。


『すみません。新庄さん、こいつらお願いできますか?』

『はい、私も見ていて我慢の限界でした。ええ、任せて下さい! では、失礼しますね!』


 俺を取り囲んでいた連中は、一瞬で消えた。

 周りで何事かと見ていた連中は、完全に引いているな。

 うん、俺もさっさと消えたほうが良さそうだ。


 俺は足早に街の転移装置を目指す。


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