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VRファントム  作者: BrokenWing
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姉立VRファントム高校

          姉立VRファントム高校



 結局、サモンの用事はそれだけだったようで、部屋を出て行った。


 帰り際、何やらぶつぶつ言っていたが、大方、大会への対策を考えているのだろう。タカピさんとカオリンは、前衛としては既に申し分は無い筈だ。今日の戦闘を見ていれば俺でも分かる。二人共、そろそろ一系統だけならスキルの習得も極めそうだしな。だが、実質5人でやる事になる訳で、そこを相手に突かれると苦しそうだ。

 ちなみに、この大会、パーティー戦の場合は、チーム内の誰か二人が死亡すると、そこで負けが確定してしまう。なので、弱い奴から潰して行くのがセオリーになるだろう。

 まあ、大会ではファントムカースも装備できないから、俺が出る訳にも行かないし、サモン達に楽しみながら考えて貰うのがよかろう。


 さて、またぼっちになったので、俺は何かする事は無いかと考える。

 ふむ、昨日の勉強の続きでもやるとするか。

 どうせ、朝になればローズが来るから、その予習だ。

 二人で一緒に考えるのもいいが、やはり年上として、俺が先生になってやりたい。

 俺の教え方でも、分かり易いと言ってくれたしな。


 俺はモニターをつけ、タブレット片手に教科書と格闘する。

 やはり、抜けている所が結構あるので、そこをチェックし、改めて理解しなおすの作業だ。


 昨晩同様、飽きてきたらTVで気分転換を繰り返し、気が付くともう朝のようだ。

 ローズが来た。


「シンさん、お早うっす!」

「ローズ、お早う。今日は早いな。まだ6時半だぞ? あまり寝られなかったのか?」


 まあ、昨日はあんなことがあったんで、興奮していたのかもしれないな。

 ローズは挨拶をすると、すぐに俺の隣に腰掛ける。おい、近いぞ。


「あたいの場合は、昼寝とかするから、あまり寝られないのかもしれないっす。それに、身体も全く動かさないっすしね~。」


 なるほど、精神的な疲れはあっても、肉体的な疲れはほぼないから、そんなものなのかもしれない。


「それでどうする? 昨日の続きをするか?」

「はいっす! 宜しくっす!」

「なら、最初の先生は私ね!」


 へ?

 この人、いつ現れた? それに先生って?

 声の方向、隣のソファーを見ると、案内バニーが座っている。

 当然ローズは俺の横で目を丸くしている。


「な、何故案内バニーちゃんがここに居るんすか?! ここ、ギルドルームっすよね?!」


 うん、混乱するのは当然だろう。

 もっとも、サモンの場合は、条件反射的に突撃して、お仕置きを喰らっていたが。


「う~ん、説明は姉貴、自分で頼む。それと、先生って意味も。」

「そうね、泉希ちゃん、初めまして。私はアラちゃんの『姉』で~す! ちなみにここで勤めていたりします。義理の姉と書いて『お義姉さん』。そう呼んでくれてもいいわよ~。」


 おい! ストレートすぎるだろ!

 まあ、少しでも隠す気があるなら、そのアバでは出んか。

 後、『お義姉さん』って何だ? そして先生は?


「へ? ア、アラちゃんって? そして、お義姉さんって?」


 まあ、そうなるわな。おまけにこいつ、IDは非表示のままだ。

 これじゃ、自己紹介になってないだろ!


「そうね~。私の名前は『八咫敦子やたあつこ』。ローズちゃんの好きな、そこの幽霊の本名は『八咫新やたあらた』。なので、アラちゃん。そして私はアラちゃんの実の姉。アンダスタ~ン?」

「す、好きだなんて。そ、そこはいいです! それで、シンさん=アラちゃんで、貴女はそのお姉さんの敦子さんと言う事ですか?」


 ローズは顔を真っ赤にしている。


「そそ。なので、もし泉希ちゃんとアラちゃんが結婚すれば、私は貴女の『お義姉さん』になる訳。アンダスタ~ン?」


 ぶは!


「おい! 姉貴! 俺にその気は無い! そもそも、この状態の俺が結婚なんて、物理的に不可能だろ!」

「まあ、不可能かどうかは置いておいて、ここまではいいかしら?」

「は、はい、『お義姉様』! そ、それで、先生って?」


 あ~、もういい。こいつら、俺の気持ちは軽く流しやがった。


「泉希ちゃん、貴女、高校行ってないわよね?」

「は、はいっす。この身体じゃ通えなかったっすし、勉強する意味も無いっすから。」


 ふむ、ローズもやっと落ち着いたようだ。口調が元に戻ったな。


「勉強する意味があるかどうかも置いておいて、一つだけ言いたい事があるわ。」


 ぬお? 姉貴がこうやって一拍置いた喋り方をする時は、とんでも無い事を言い出す前兆だった気が?


「私の弟に、お馬鹿な嫁は認めないわよ!」


 ぐは!


「え? え? じゃ、じゃあ、あたいはどうすれば?」

「なので、私が先生なのよ。今から9時まで、私が教えてあげるわ~。その後はアラちゃんね。」


 あ~、なんかやっと分かって来た。

 俺に数学の教科書を渡したのも、記憶のチェックが目的じゃあなかった訳だ。

 そう、学校に行けないローズに、俺が勉強を教えてやれと。


「ふむ、確かに姉貴は、英語とか国語とかの、語学系統は完璧だったな。そして俺は理数系と。でも、その他、歴史とか地理とかは? それと何よりもローズの意思は? ゲームしに来て、そこで勉強させられるって、理不尽すぎるだろ?」


 まあ、昨日ローズに付き合わせた俺が言うのも何だが。


「ん~、そっちも一応当てはあるのだけど、それも置いといてっと。で、泉希ちゃんはどうなの? 私が教師じゃ不満かしら~? 嫌なら病院で通信教育でも受けて貰わない事には、アラちゃんの相手として、この『お義姉さん』が認めないだけだけど。」

「おい、姉貴、それ、もはや恐喝だろ? そして、俺はまだローズと付き合うとは一言も言っていないが?」

「アラちゃんの意見は聞いていないわ~。それで泉希ちゃん、どうする~?」

「はいっす! やるっす! 宜しくお願いするっす!」


 即答かよ! 

 確かに勉強したいかどうかは本人の意思なんで、俺は関係ないかもだが、取引材料に出されている、俺の立場は無視ってどうよ?

 まあ、過程はどうあれ、本人が勉強したいって言うなら、これでいいのか?


「じゃあ、決まりね! アラちゃん、あんたも語学は苦手だったでしょ! 特別に泉希ちゃんと一緒に、タダで私の授業を受けさせてあげるわ。」


 ぬお? 俺もかい!

 そして、俺にどうやら拒否権は無いようだ。


 その後は、8時前まで国語の授業。

 姉貴の奴、既に準備していたらしく、ローズにもノート用のタブレットを渡し、モニターを黒板替わりに、しっかり授業をしてくれた。ふむ、教材は『泉鏡花』と。俺にとってはかなり難解で、ローズも苦しんでいたようだが、彼女の方が理解は早かった。

 なんかとても恥ずかしい。


 そして、8時から9時前までは英語の授業。そこで姉貴は、これから寝ると言って落ちた。


「じゃあ、あたいも一旦落ちるっす。今日はお風呂なんで、少し時間かかるっす。」

「あ~、お疲れ様~。俺もその間、次の準備しとかんと。」


 そう、モニターの書物の項目には、既に物理と化学の教科書がしっかりダウンロードされていた。どうやら、全て姉貴の手の平の上だったようだ。


 ローズは10時半くらいに戻って来たので、12時半まで、数学と物理の授業を俺がやる。

 化学は、抜け落ちている記憶が多すぎて、これは流石に予習していないと無理だな。


「うん、ローズお疲れ様。しかし、良く頑張ったな~。俺には姉貴の授業についていける自信が無いぞ。特に英単語の抜け落ち方は半端無かったな。」

「でも、『お義姉様』の授業、分かり易かったっすよ? も、勿論シンさんの授業もですけど。ふ、二人っきりの個人授業ですしね。」


 ローズはそうやって、俺に肩を寄せて来た。

 う~ん、気持ちは本当に嬉しいのだが、俺にはまだその気にはなれない。


「じゃ、じゃあ、今日はこれで終わりだ。明日もこんな感じでいいか? 勿論、ローズ次第だけど。」


 俺が誤魔化す為に立ち上がると、支えを失ったローズがコテンとなった。


「な、その反応は何ですか! でも、明日も宜しくお願いします!」


 まあ、今はこれでいいか。

 俺も悪い気はしないし、何よりもローズのアバは俺のドストライク。

 そして、怒った顔も可愛いと。

 本当にセクハラしてしまわないかが非常に心配ではあるが。



「話は変わるが、サモンさんから、何かメール無かった?」

「あ、あったっす! PVPの大会に、VRファントムで出たいって。」

「うん、俺は参加できないから、代わりに姉貴がレベル下げ要員として出てくれるらしい。ローズもそれでいいのか?」

「そうっすね。PVP自体にはそれ程興味ないっすけど、VRファントムで参加ならいいっすね。シンさんが出ないのは、ファントムカースが装備できないからっすよね?」

「うん、万が一にも、俺のHPがレッドゾーンに入る所を、衆目に曝す危険性は冒せないな。」


 勿論、もう一つ理由としては、俺が出る意味が無いのと、俺のチート性を公表したくないと言うのがでかいが。


「残念っす。でも、出るからにはクラス優勝目指すっす! あ、でも、カオリンとタカピさんはどうなんすかね?」

「ん~、カオリンはああいうの好きそうだし、参加決定だろ? タカピさんも、皆がいいなら断らないのでは?」

「そうっすね。それで、シンさん、これからどうするっすか? わ、私はシンさんの行くところなら、何処でも行きます!」


 ぐは!

 やっぱりこれはヤバい! この調子でずっと傍に居られたら、間違いなく俺は落ちる!

 そう、恋愛経験に乏しい俺は、自分で言うのも何だが、かなりちょろいはずだ!



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