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Blade And Hatchetts  作者: 御告げ人
第二章 ─排斥─
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限界超過

どれだけ眠っていたのだろうか。天井からして、ここはギルド内の青棟、僕らの部屋だろう。更に目を開けると、ケモケモが怖い顔でこちらを睨んでいた。


「こっち見んな」


「......御免な」


あっさり折れた。残念そうな顔で立ち上がり、扉の方へ向かったガイの背へ声をかける。


「なあ、ユウリは」


ぴくりとガイの肩が跳ねた。ゆっくりと振り返り、俯いたまま牙だけを剥いた。


「黙って......寝てろ」


相貌は静かだが、明らかに怒りの声が(こも)っていた。やはりあの後のユウリに何かがあったに違いない、早く......っ!? 動けない。これが麻痺なのか呪いなのか、それとも何か魔法なのか全く理解出来ないが、身体のあちこちに痛みが走っているのは判る。ちゃんと何かに集中していなければまた意識が飛びそうだ。


「ざ......ろ」


さっき言葉が発せたのは奇跡だったのか、ものの名前が言えない。ものは意識の中で呼んでも来たと思うので、心の中で呼んでみる。


すると開いた窓から一匹の雀が(さん)に着いて一回鳴いた。雀呂だ。何で蛇龍の時に来れなかったんだ?


「ワイズ!!」


鳥らしい高い声、必死さが見てとれるのは、ひょっとすると僕のことを探していたからなのかも知れない。して......喋れたんかい、まあ今はいいや。


「存在が全く認識出来なかったのに、弱ってくのだけ判るから、かなり焦ったぞ! 死んでしまうんじゃないかと思った!」


僕が今動けないのと関係あるか? あと、身体のあちこちが痛い。

枕の隣まで飛んで来ると雀呂は目を細めた。


「神格が消えかかってる! カイナとのリンクが完全に切れてるのが原因だな。今まではアイツのお陰で、いくら身体に負荷をかけても問題なく動けてたが、純人間になりかけてるせいで、筋組織が悲鳴上げてる。誰かの治療魔法があったみたいだな、心臓が生きてるから、フル活動で自己再生が始まってる」


人間の身体になってるということで、つまり負荷をかけ過ぎて限界を超過してる状態なわけか。


「まあ、人間じゃない動きしまくったらな......。これ食べろ、魔物の干し肉だ」


雀呂はあろうことか、口から肉を出して枕の隣に出した。雀呂さん、これは?


「ああ、動けないんだな。よし、口開けろ」


今尚血が(したた)る肉をクチバシで摘まんだ雀呂に全力で抗議する。待て待て待て! 落ち着け雀呂!? 何の真似だ、そんな物を食べられるかよ!


「いいから食えって! 魔力があるからワイズの無敵化が戻るかも知れんぞ」


口の中に血の味が広がる。僕の口は開いてたのか、それともこじ開けられたのか。魔物の肉は食べて素直に喜べる味ではなかった。だが身体中から痛みが消え去った。


「肉、効いたみたいだな。痛みは治ってないみたいだけど、ワイズの身体中を包む魔力を感じたぜ」


「そうみたいだな」


やっと口が開けて思わず笑みがこぼれた。


「今にも暴れ出しそうな笑みだな」


僕は布団から出てきて、壁に立て掛けてあった刀を掴んだ。


「......まぁ、な」


仕返しをしなければならない化け物が居るんだ。そいつと決着を着けるために、僕は何度でも立ち上がる。先程は死にかけたが、次は負けてたまるものか。ワイズは心の中で静かにそう決意し、いつもの黒衣を羽織ってギルドから出た。

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