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ヘイズが今にも
泣きそうな顔で俯きながら言った。
「奴隷商を営む義父が、
あろうことかお義母さんを
売ろうとしてるです。
お願い....お義母さんを助けて?」
ここで一つ知っておくべき事は、
オーグはヘイズの義母を恨んでいることだ。
義母であれ、保護者。
そいつが自分の友を満身創痍になるまで
痛め付けたのだ。
義母はオーグを知りもしないが、
奴隷商に抗いもしないで
ヘイズに暴力を振るった義母を
知るオーグは少なからず、
殺したいとさえ思っているだろう。
友人を何よりも大切に思ういい男。
素直で単純かつ純粋。
だが一方向について行動を起こした時、
誰よりもポジティブに、
誰よりも真剣に向き合える凄いやつなのだ。
かつて父を戦争で喪った哀しみが、
今尚も前向きにその心を強く突き動かす。
逆境であるほどどこまでも、
高みに手を伸ばし、強くなれる凄い男だ。
───愛すべき僕の唯一の親友。
今にも泣きそうなヘイズの問いに、
オーグは今尚 俯いて黙っているままだ。
「僕は、ここで決着を付けようと思う」
ヘイズがゆっくりとこちらを見て、
「つまり.....?」
「君の義父の首を斬る───」
オーグが顔を上げてこちらを
見たと同時にヘイズが視線を下げた。
「僕は斬るしか出来ないが、
それでヘイズが助かるなら───
義母を守れるのなら、そうしよう」
この刃は愛しい妹の為に。
そして、親友の因縁を断ち切る為に。
僕は言い切ってからオーグを見る。
その瞳には、
ヘイズの義母を守る
意味が本当に有るのか?と、
思惑が浮かんでいるようにさえ見える。
僕は単純に、
一回だけオーグに小さく頷いた。
するとオーグは────
───────笑った。
「しゃあないねぁ。やるか」
「ヘイズの義母を守れ───任務開始」
「おう!」
ヘイズは涙を拭いて、
テーブル向かいのこちら側に
回ってきて僕にしがみついた。




