horn・bull(雄角牛)
ワイズくんはエビフライが大好きです。
ホワイト・アウト唯一のメイド、
シアン・クロスはホワイト・アウトの広大な土地を
一日の内に整地し、水やりをかかしません。
そんなシアンさんをよく手伝うワイズくんは、
皆には秘密でご褒美にエビフライが四本頂けます。
ワイズくんはこの頃待てを覚えました。
人混みを分けて入る、僕はそんな事をした事がない。いつも強い人の後ろに傅いていたから。僕の前にいつも立っていた人達は、存在だけで他を圧した。
誰も僕の存在には目もくれなかった。僕の前にその人達が居なくなるまでは。
僕の隣に立っている獣の戦士、ガイが僕の耳に囁く。
「おいおい! この人だかり、全部がアンタに注目して道を開けてるぞ」
「そうみたいだな」
至って冷静にそう言って、僕は堂々と川の様に広く空いた道の真ん中を歩いてやる。
「そうみたいって....他人事か」
僕より上の位の者が居なくなっただけなのだ。存在だけで他を圧倒出来る人は僕以外のメンバーだけだと思っていたが、こうも、僕だけで起きるものかな。つまり、僕の存在も認められている、と言う事なのかな。
ちらりと、僕の影が薄ければいいのにと思った。
僕はただ、マグナの命で戦場を駆けていただけなのだ。
僕が仮に"黒犬"だろうと、僕に命令するマグナが居ない今の僕は"マグナの狂犬"たり得ない。それはつまり、ホワイト・アウトに居ない今においては、僕は誰の命も受け付けないと言う事だ。
やってやる、僕に命令する者が居ないのだ。なら僕はこの五年、不知火と僕の無敵の剣技で何処までも行こう。
例えそれが、苛烈極める厳しい修羅の道であろうとも。
まずは自分に任務を課す。ガイをテストに合格させるかつ、自分も合格してみせろ。
任務、開始だ。
大きな門をくぐる。この建物は見た目が道場のようだ。
よく見ると、地面には立合いの枠や開始線などが有る。
すると、集う人々を圧する程の野太く大きな声が道場内に響き渡った。
「時は来たり!!! これより、ホーン・ブル入団テストを開始する!!」
大きな歓声、まるでこの人達はこの宣言を待ち侘びていたかのよう。
しばらくして歓声が止み、軽く入団テストの説明がされた後に解散となった。
後ろからガイが僕の背中を叩く。
「最初は何するよ、相棒」
何でこいつはこんなノリなんだ?
「まずは、"配達"からだったな」
配達テストの概要は、二人一組でどれだけの牛乳瓶を指示された家に運べるか、だ。しかしこの"配達"、ただの配達ではなく、潰し合い有りなのである。
瓶をポケットに入れるのは無しで、片手に瓶を一つ持ちもう一方で武器を握り持つか、武器を使わずに両手で二本運び切るのどちらかだ。
両手武器使いのガイはこれでは不利だ。
いきなり僕の出番だな。
「俺が........瓶を二つ持つのか!?」
驚きも当然だが、そんなに驚かなくても。
「ああ、僕も一つ持つ、ガイは
住所を三つ覚えろ。僕が君を全力で守り抜いてやる」
「....頼もしい限りだ。わかった、頼んだぞ」
僕は笑ってやった。
「任せろ、僕を誰だと思ってる」
さて、一丁やりますか。