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Blade And Hatchetts  作者: 御告げ人
第一章 ─黒犬─
28/59

大切な物ほど重く背負い難し

(くれない)色の鎧を着た

重装備の騎士達がラガルを取り囲んだ。

全員、鉈は持たず

両手で大楯を握り締め

ラガルを中心にして円になるように

盾を敷き詰めて取り囲んでいる。


まるで攻撃されない事を

既に知っているかのように、

ラガルは無表情で両手を

ポケットに入れて静かに言った。

その姿は、威風堂々。


「家族...人質に捕られてるのか。」


対して、

ルートの表情は、

不機嫌でなく悲しげでもない。

ただ静かに口を開けた。


「貴方には関係のないこと。

命は保障するので、

攻撃はしませんし

捕縛もしませんから(しばら)く、

抵抗をしないで

私達に囲まれていて下さい。」


「何でこの任務に参加を?」


ルートの顔が苦渋の表情に変わった。

やがて、


「......金が、必要だったから。」


ラガルの中で、何かが切れた。


「そいつは家族を

土へ還してでも必要なものかっ!!」


ルートは目を見開いて、

弱々しく声を震わせる。


「そう思われるのであれば....

黒犬に付いて来ていたあの娘二人を...

私達に拉致させて頂きたい。」


「このクズ野郎がっ!

それをワイズ自身が許さねえから

あいつは駆けたんだろうが!!」


「!!」


ルートは驚いてラガルの周りを見回す。

そこには既に黒犬の姿が無い。


ラガルは心の中で

しまった、と思った。


───でも、ワイズならもう、

十分なくらい時間を稼げただろう...?


ラガルのそんな思考もつゆ知らず、

ルートが騎士達へ怒号する。


「あの端役(ビット)を追え!!

任務遂行まで絶対に近付けるな!」


「はっ!!」


五人ほどが、

地面に転がっている鉈を掴んで、

本当に鎧を付けているのか

と思われる程のスピードで駆けていった。

ラガルは空を見上げて一人呟く。


「───家族がかかってりゃあ、

あんなに必死になるのも当たり前か。

(みな)一様(いちよう)に守りたいモン

抱えて生きてるんだなあ...。」



守る物が有るのならば、

それを優先するために

自分の大切な何かを一つ犠牲にし、

(いさぎよ)く捨てる覚悟をせねばなるまい。


犠牲が家族なら残酷だが、

騎士達はどうやら、

自分の命を犠牲にしたようだ。


何故なら、

ワイズはきっと、

追ってくる奴等を

問答無用で皆殺しにするだろうから。

何せワイズにとって、

守るべきものが、

追ってくる奴等の欲しがる

"ミーシャとユウリ"なのだから。

そしてワイズが犠牲にするものは

自分の命。



だが、ルートはそれら

全てを判っているはずだ。


ラガルはルートに向き直って

語気を荒げながら言い放つ。


「兵士にも家族が居るんだぞ。」


お前の方も

残酷なんじゃないのか、

と内心で毒突く。


「判ってます。」


それきり、

ルートは口を固く閉ざした。


こいつは部下の命を犠牲に

家族の命を取ったのだ。


───仕方ない。やるか。


ラガルの手には

手を保護するだけの

グローブがはめられているが、

その上から、人差し指に

(シルバー)指輪(リング)がはめられている。

ワイズがはめていた物と種類は同じ、

制限の指輪だ、それを外した。


その瞬間、

ラガルの周りの空気が一変した。



──獣人君が居た時に外してみたが、

彼は凄く勇敢だったな。

だが、こいつらはもう汗だくだ。



冷や汗を浮かべているルートが

震える声で叫んだ。

その震えは先程のものとは異なり、

弱者が強者に立ち向かうような声。


「ひ、怯むな!

陣形だけは保て!

もうすぐ任務は完遂す......!?」



ラガルの表情には

ずっと変化が無い、

だが明らかに違うものは、

まとうオーラだ。

ラガルは氷のような表情で言う。


「完遂す、何だよ。ルート。」


ラガルは一歩前に出る。

しかしその一歩はただの一歩でなく、

戦闘する時と同じの一歩。


ラガルはルートの目の前に、

遠距離から一歩で近付いた。


ルートは顔を真っ青にして、


「ひ、い、クリムゾンコートだああ!」


ラガルを取り囲む騎士達全員が、

ラガルの放つ

巨大なプレッシャーに耐えかねて

孟スピードで走り去った。


ラガルは頭を掻きながら、


「ちと、やり過ぎた。

マスターに怒られるかな。

まあ、(さい)は振られたが。」

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