厭世は楽天を嫌う也。 ─後─
ピクニックというものは、
なんだか任務に似ているのか?
僕らは近くの人気の無く、
魔物の気配も無い森まで来ていた。
上を見上げると、
まだ真上に昇りもしていない
陽光が眩しい。
付け加えるなら、
それを反射するミーシャの金髪も眩しい。
生きた獣の尻尾のようなそれは、
ミーシャが一歩踏み出すごとに、
今日も元気に揺れている。
ミーシャとユウリは、
何やら楽しそうに、夢中で話している。
と言っても、
ここはスジャ王国の敷地内なので
魔物が居ないのは当然なのだが。
僕は刀を腰に下げっぱなしである。
ガイはいつもの、
重そうな二振りの斧や肩掛けの
金具類も外している。
こうして見れば、
ガイの体はとても大きくて、
斧が無いぶん、立派な獣人に見える。
そのガイが刀に気付いて、
「なあワイズ、
ピクニックの時くらい
ミッションの事なんて忘れないか」
「君達には抜かないよ」
眉を寄せて そう呟くが、
僕にとって言わせれば、
ピクニックに行く時こそ
刀は外せない、
気は抜けないのではないか。
魔物の中には、
小さくて空中を飛ぶ奴も居る。
この敷地に居なくとも、
いつ上から来るかは判らないのだ。
とは言っても、スジャは
大きな城壁に囲まれている。
国は大抵城壁に囲まれているから、
人間はおろか、
小さくても飛行タイプの魔物は
城壁の頂まで飛べない奴がほとんどだ。
では城壁を飛び越えてくる
魔物なんて、大きくて翼の有る
巨大な────グレイヴ・ドラゴンのような
飛竜とかでないと、
入って来れないのではないか。
───────。
いや、例外も居た───。
僕は 三人の気の緩みを窺うが、
その必要が無いことを悟ってから、
森を道行く三人のもとから走り抜ける。




