表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Blade And Hatchetts  作者: 御告げ人
第一章 ─黒犬─
11/59

嘘つき(フール)

今朝に入れるようになったスジャに入る───。

入るといきなり、商店街が立ち並ぶ一本道を

並んで歩く。

僕は見慣れてるが、

ガイは陳列された食べ物に興味津々だった。

ミーシャは馴染んでるのか、町の人々に

よく声を掛けられては、


「ミィ、その人たち誰だ!」


と笑顔で言われている。


ミィ────とは、愛称だろう。

気付くとユウリもそう呼んでいたな。


商店街を越えると、そこには

一際目立った、

屋根に二本の角が生えた建物が有る。


獣人の相棒はそれを見て、


「ここがホーン・ブル、

見ての通りデカいギルドだな」


ミーシャが気付いたように口を開く。

「ワイズ先輩はここのギルドマスターと

お知り合いなんですよね」


「ああ、でも僕はあまり話した事がないんだ。

よく話してたのはマグナの方だよ」


ユウリが首を傾げる。


「マグナ───さん?」


ミーシャも続いて首を傾げた。

それを見たガイが僕に肘打ちしながら笑って、


「ワイズの本来所属するギルドのマスターだよ」


ミーシャが成る程、

と頷くと同時にギルドの方から声を掛けられる。

一斉にそちらを見ると、一人の男が立っていた。

恐らくこのギルドのメンバーなんだろうが。


「やぁ、君達が新人かい?」


ユウリが「はい。」と言って会釈すると、


「じゃあ、まずはマスターに会っておこうか」


もう会ってるんだが────

そんな答えを無理矢理飲み込んで、

僕らは四階建物の一番上、

扉が一つしか無い廊下の前まで案内される。


案内してくれた男は笑顔で、


「僕は部屋へは入らないから、

ノックした後に入っておくれ」


入らないのでなく──────

これは多分、入れないのだ。だいたい

この手のマスターは上級貴族か傲慢(ごうまん)な人間だ。

そうでないとしたら────

掴み所が無くて、性格の読めない謎な人。


男が扉に歩み寄ってノックする。

コンッコッコンッ───コンッ

これは暗号か?

しかしあれが暗号だとすると、

さっきの

わずかに二秒空けた間までが暗号だと言う事になる。

徹底してるな。


──どうやら中の人は謎な人のようだ。


入るとその人物は目の前に立っていた。

──────笑顔で。

僕がそれを認識するが早いか、

急に視界が暗転する。

暗くて見えなくなった視界の上の方から、

澄んで少し笑いを含んだ女の人の声。


「フフフッ、いらっしゃい。君がワイズ君ね。

あら、三人もそこに立ってないで入って?」


後ろでガイが返事する声がくぐもって聞こえたのは、

僕がマスターこと、フールに抱き締められてるからか?

扉を締める音、僕は抵抗しないでいる、何となく。


すると僕は抱き締められたまま自己紹介。

「私はフール、ここのギルドマスターです。宜しく」

これは三人への挨拶か。


するとフールの腕が緩んで、

その、整って皺一つ無く綺麗な顔が間近に迫る。


「どうして直ぐに来ずに入団テストなんか受けたの?

もしかして、

そんなに そこの獣人君が気に入ったのかしら?

招待状には、真っ先にここへ

来るように書いてあったはずだけれど」


僕は呆然とその顔を見詰める。

フールは首を傾げて、少し微笑む。


「そんなに熱い目線で見詰められ続けたら───

猛烈な恥ずかしさで抱き締めちゃうよ?」


僕は目を見開いてからゆっくりと口を開く。


「ああ、ここへ来るようには、

ラガルに言われてたの忘れてて──」


「あの少年にはお仕置きが必要ね。

マグナに言っておこうかな」


マグナに何させる気だこの人は───。


僕は思考を凝らしつつ、続きを告げる。


「この獣人、ガイは安全道で会った。

地図と要項をラガルが捨ててしまって、

僕がここへの道を尋ねると、

テストを一緒に受けないかと言われたんだ」


フールはまた微笑んでから返す。


「へぇ、いよいよそのラガル君には

調教が必要かも知れないわね。

で、貴方はガイ君に

頼られてテストに参加したのね?」


ラガル─────済まない───

僕は悪くない。

従って反省も悔恨する気も、毛頭無い。

あわよくば何をされるのか解らないまま

(いさぎよ)くその調教を受けてくれ給え。


僕は笑いを堪えながら、


「ああ、違いない」


フールは笑いながら僕の首の

後ろへ回した手を離してお腹を抑えながら、


「フフッ、まあいいわ。

幸い四人の新人が入ったんだから───

貴方たちに任務を命じるわ、最初の任務よ」


そう言って僕らの目を見回す。

僕の方へ指をさして、


「四人をパーティとして組んで、

ワイズ君をリーダーとし貴方たちが

痛めつけたグレイヴ・ドラゴン────

あの子にとどめを刺して頂戴」


僕は直ぐに返事する。


「御意」


フールは頷いて、


「フフン、いい返事ね」


するとガイが口を挟んだ。


「待って下さいマスター、何故逃げた竜にとどめを?

アイツはもう飛ぶ以外では動けない、

寿命で死なせる方がいいのでは?」


ガイの目は真剣だった。

それに僕は静かに答える。


「いつ復讐に飛んで来るか解らない、

こちらから先に息の根を止めるんだ」


ガイは牙を見せながら声を張る。


「ワイズ、

アンタがあんなにズタズタにしたんだろう!

もうアイツは飛ぶしか出来ない、片足砕いただろう。

マスターはどの位か解らないだろうが、

アンタが一番解ってるんじゃないのか?」


僕は直ぐに答えられなかった。


しかしフールが一歩前に出て答えた。


「私もあの場に居たわよ、

あの子は今まで人間に倒された事が無かった。

一度人間に打ちのめされた、プライドの高い性格の

竜はもう二度と立ち直れないの。

それに、人間が怖くて何も狩らなくなるわ」


その先を僕が告げる。


「狩りをしなくなった竜は、自ら何も摂取しなくなり、

孤独にも誰にも見つからない

場所を探してそこで死ぬんだ、一人で。

そんな事にならないように、せめて手厚く

葬れるように、

今のうちに探し出して殺すんだ。僕達の手で」


ガイは俯いて牙を納めた。

悲しそうに目を細めて、


「成る程、骨竜はここで飼い慣らされていた訳か。」


僕はフールに向き直る。

フールは頷いてから、


「ええ、私の使い魔よ」


僕はその使い魔を、

死ぬ寸前の深手を負わせて

その上プライドを

ズタズタにして逃がしてしまった訳だ。


フールは一息ついてもう一度口を開ける。


「頼めるかしら?」


ガイが静かに頷いた事を確認してから、

僕はそれに答える。


「頼まれた」


「任務期間については言わないわ、

気持ちが整い次第

あの子の命の灯火を消して─────。」


僕は静かに頷いた。


「御意」


───それを聞いて、フールは静かに微笑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ