プロローグ「こういう感じの物語です!」
突然ですが、みなさんは今までに何種類の○○デレと言う言葉を聞いたことがあるでしょうか。
「ツンデレ」が一番広く一般的に知られていると思いますが、他にもいろいろな、それこそ全てを挙げると限りがないほど数多くの○○デレが存在します。多くはネットから作られ、世の中に広がって行きま————
「りょうく~ん、ドーナッツいらないの?いらないでしょ?じゃあとわが食べちゃうもんね!」
「いりますよ!なに勝手に食べようとしてるんですか!ってもうなくなってるし・・・・」
ごほんっ。えーっと、話を元に戻すと、○○デレの多くはネットから作られ世の中に広がって行きます。○○デレというのは、よくオタク達が二次元の女性キャラにはまってしまう要因にもなる一種の萌え要素です(※ただし美少女に限る)。しかし、それがまかり通るのも二次元の世界だけであり、三次元の女性がやると、ただの情緒不安定なやつだのただの頭がおかしいやつだのと言われてしまうことが常です。でも、俺はそうは思わ−−—−
「ねぇねぇ、りょうくん。なんで難しい顔して黙ってるの?・・・あっ、そっか。またとわたちのはだかとか妄想してたんでしょ!そんなに見たいなら、ききょうのをみればいいよ。とわが許可する!」
「待ってくださいよ桃羽会長! べつにそんなことこれっぽっちも頭の中に浮かんでなかったし、これからさき浮かべるつもりもありませんでしたよ!ってかまたってなんですかまたって」
「なぜ私の裸をみることをお前が許可して私が見せなければならんのだ。他をあたれ他を」
「俺の話聞いてた!?」
「じゃあさきちゃんお願いね!」
「いやですわ!こんなバカにわたくしの完璧な調和がとれたパーフェクトなボディーを見せるもんですか!」
「だからおれ言ってないって・・・」
「最後はりかこっち!頼んだぞ!」
「あたしの身体をみるなら一分10万円だよ。みる?」
「見るか!しかもお前の身体なんてようz———」
ビュン
す、すごい音がしたぞ?
風を切り20センチ下から繰り出される莉香子のアッパーは俺の顎まであと数ミリというところでとまり、プロボクサーでも一撃で沈められる破壊力をもったパンチを前にして格闘技経験がないまったくの素人である俺の思考は一瞬にして飛ばされてしまった。
「・・・何か言った?」
「いいえなにも!」
泣く子も黙るような顔で睨まれたら逆らえないよね!(泣)
そもそもだ。そもそも俺は何も言ってないわけなのに何で話だけ進んでいってんの?俺ってそんなに妄想とかしてるイメージあんの?しかもまたってことは常習犯だよな?
「まあ、りょうくんの日頃の行いだよね~」
「まあ、お前の日頃のおこないだな」
「まあ、あなたの日頃の行いですわね」
「まあ、あんたの日頃の行いね」
「ナチュラルに人の心を読んだ上にコメントしないでくれるかな!?」
「さて!今日の生徒会特別活動を始めよっか!」
「おーい、無視しないでー」
だいぶ話が逸れたので手短に要点をまとめて言うと、
『○○デレは三次元でも成立すると思う。(※ただし美少女に限る)』
これが俺の持論なんだけど、昔からの腐れ縁にこの話をしてみたら
ブフォッ!と吹き出し、「たぶん存在しないと思うな~。ツンデレのツンだけとかヤンデレの病んでる部分だけのやつはいっぱいいるだろうけどさ」と言われてしまった。
じゃあこうし———
「もう始めちゃうよ~。りょうくんはやらないの?」
「あとちょっと待ってください!」
じゃあこうしよう。俺が○○デレのデレの部分を引き出してこの現実世界でも○○デレが存在――成立することを証明してやる!
***
「では、特別会議を始めましょう」
「了解!今日のお題はなにかな~?」
この学校にはちょっと風変わりな校則があり、その一つに
『我が校の生徒は、毎月、一枚以上のお題を生徒会への目安箱に投函しなければならない(なお、お題に関する規定としては〈自分の知りたいことや面白そうだと思ったこと〉をお題の内容とし不純な意図をもって投函されたお題は無効とする)』というのがある。
やっかいなことにこの校則には続きがあって、『生徒会のメンバーは毎日の特別会議でお題を一枚引き、そのお題を全員でこなさなければならない』って感じの内容の文章がちゃんと書かれている。ただし、あまりにも実行することが不可能なお題や、生徒会メンバーがこれはできないと判断した場合はそのお題を破棄し新しいお題に変えてもいいと云う権利は保証されている。
でもうちの場合はみんな変にノリがいいからお題が無効になることは滅多にないんだよなー
「じゃあ引くよ~。今日のお題はこれだ!」
【生徒会のみなさんは休日に何をして過ごしていますか?】
「まともなお題があたりましたね」
「うん。じゃあききょうから答えていこうか!」
「私か?私は特に外に遊びに行くこともないし、家で本を読んだり映画を観たりしてるかな」
「うっわー、おもしろくない答え」と不満顔の莉香子。
「じゃあお前は暇な日に何をするのだ?」
「あ、あたしはあれよ。いろいろあって忙しいから」
「ほぉう。具体的には?」
「えーっと――ど、道場で修行とか修行とか修行とか・・・」
「・・お前も大して何もしてないじゃないか」莉香子に対してジト目を向ける桔梗。
「べ、勉強もしてるから!」桔梗のジト目に負けずに言い返す莉香子。
「二人とも暇人だなー」
「お前は黙ってろ!」「あんたは黙ってな!」
眼力だけで人を殺せるんじゃないか?と思うぐらいの形相で二人同時に睨まれた。
元の顔がすごくきれいなだけあってこういう顔をしたときの迫力はそこら辺でたむろっているヤンキーの比じゃないぐらいやばい。メチャクチャコワい。
「さ、沙季は暇な日って何してるんだ?」
「そうですわね。基本、暇な日がないのでなんとも」
「そんなに忙しいのか?」
「えぇ、週末などは家の用事でほとんど休日返上なのです」
そう言った沙季の顔をよくみてみると、整った顔が確かにすこし疲れてやつれ気味にみえた。
(そういえば、こいつもいろいろあるんだったな・・・。)
「あんまり無理するなよ?」と励ましのつもりで言ったのだが
「だ、黙りなさい!わ、わたくしは火徳院家の誇りをもって臨んでいるのです!あなたにそんなことを申されるなど不愉快です!」と、なぜか怒られてしまった。
「? なんで怒ってるんだ?」
「だから、黙りなさいと言っているでしょう!」
?が30個ぐらい浮かんでるんだけど・・・
まあ、沙季がいきなり怒りだすのは今に始まったことじゃないし。理不尽だなーっと思いながらも最後に会長に話を振ってみる。
「会長は?暇な日は何してるんですか?」
「暇な日か~。おいしいケーキ屋さん巡りとかかな!」
「ああー、会長って甘いものを食べることが生き甲斐みたいな感じですもんね」
「そんなことないもん!おいしいイタリアンのお店とかも行くもん!」
「やっぱり食べる系なんですね・・」
ほんと、四六時中何か食べてるよなーこの人。さっきはドーナッツ食べてたのに今はチョコレート食べてるし。あんだけ食べてるのにこの人のスタイルは、出るとこは出ていてひっこむべきところはちゃんとひっこんでいるという全女子生徒の憧れが詰まったような驚異のプロポーションなのだ。
以前、桔梗が「どうやったらそんなに食べても太らないのだ?何か特別なことをやっているのか?」と会長に聞くと「う~ん。とわは好きなだけたべてるだけだよ~」と、とんでもないことを言っていた気がする。その言葉を聞いて桔梗は一週間、好きな物を好きなだけ食べるという普通に考えればデブ一直線な生活を送ってみたらしいが、三日目で体重がすごいことになり、次の日からは一日二食にして毎日5キロ走るというのを2週間続けなければならなくなったらしい。
そんな男子生徒の俺でも羨ましいと思う体質を持った会長のここ最近の悩みは肩がすごく凝ることらしい。たぶん原因は、もともと大きかった胸へと会長の過剰な食欲により摂取された大量の栄養が流れすくすく成長しているからだと思うが、本人は「もう、とわも年なのかな~」とあさってな見解をしている。ってか年ってあなたまだ高校2年生ですよね?と俺は思うのだが本人がそう考えてるのなら無理に教える必要はないか。
「あっ、またエッチなこと考えてたでしょ~!」
「そ、そんな訳ないじゃないですか。他に食べる以外になにかありますか?」
「そうだね~・・・そういえば前の日曜日にききょうと買い物に行ったよ!」
「桔梗と?」
「うん!一緒に服とか買ったりアイス食べたり」
「あぁ、あれは楽しかったな」といつのまにか莉香子との言い合いを終えた桔梗が会話に参加してきた。
「へぇー、やっぱり二人は仲良さそうだもんなー」と前から思っていたことを言ってみると
「すっごく仲良いよ!」「べつに仲は良くないな」きれいにあべこべなことを言い出した。
「えっ!仲良いよね!?」
「いや、べつに仲は良くない」
「良いってば!」
「良くない」
素直に仲が良いと認めればいいものを。桔梗も心の内では思っているのだろうがそういうことはあんまり恥ずかしがって言わないからなー。
「もういいよ!ききょうのアドレスの登録名を『桔梗(恥ずかしがり屋)』にするからね!」
「じゃあ私だってお前の登録名を『桃羽=太らないデブ』にしてやるからな」
あの話、まだ根に持ってたのか・・
「ちょっ、待って待って落ち着いて!二人ともどーどー!」
一応、このまま喧嘩に発展したら俺に被害がくるだけなので先に止めておく。
「はっ!またやっちゃってたね~」
「そうだな。すまんな、亮」
「いつもごめんね、りょうくん」
昔から姉妹のように仲が良かった二人は、いろんなところでよく喧嘩も繰り広げてきた。
俺が近くにいるときにあまりにも白熱し始めると、俺が二人の中に割って入って仲裁をするというのがいつのまにか習慣のようになっていた。何度かそれでも止まらなかったときがあったが。
「今日はすぐ止まったな。二人とも」
「うん、まあそんなに怒ってもなかったしね~」
「その通りだな。軽い冗談のつもりだったし」
「冗談だったの!?」
「当たり前だろう。私が本気であんなことを言うと思うか?」
「全然!思うわけない!そっか~、やっぱりとわ達は仲良いよね~」
「これも冗談だ」
「な、なんだって——ッ!?」
「なに二人で漫才してんですか」一応ツッコンでおく俺。
「じゃあ、桃羽は置いといて———」
「置いとかないでよ!とわも喋りたい!」
桔梗がどこからかマスクを取り出し、マジックペンで大きくバツを書いて桃羽会長に着けた。
その姿はよくテレビ番組でみる、問題を間違えたペナルティーとして罰ゲームを受けている芸人みたいだった。
「これでよしっと」
ちなみにこのとき会長は半泣きになっていた。
「気を取り直して。お前は暇な日は何をしてるんだ、亮?」
隣で半泣きの人がいるのになにもなかったように平然と会話を進められる桔梗さん、まじリスペクトっす。
「おい、人の話を聞いているのか?」
「あ、ああ。休みの日かー。おれも特に変わったことはしてないな」
「本当か?彼女とかとデートしたりしてるんじゃないのか?」
「彼女なんていねぇよ!遊びに行くとしても会長の弟とぐらいだな」
「あいつか・・」
「ちひろちゃんでしょ!君たちは本当の兄弟みたいだもんね〜」と復活した会長が嬉しそうに言ってくる。
「や、ただ昔からの腐れ縁なだけで——」
「ん?おれのこと呼んだ?」
不意に後方の出入り口から声があがる。
「っ!?!?いつからいたんだ!?」
「えーっと、さっき?」
「わあ〜、ちひろちゃんだ〜」
「おっす!桃羽ねぇ!遊びに来たよ〜」
「きゃあ———ッ!!ななな、なんであなたが居るのですか!?」
急に沙季から悲鳴があがった。
・・・そういえば、この二人はあんまり仲が良くないんだったけな。
「なんでって、君に会いに来たんだよ☆ 沙・季・ちゅわ〜ん☆」
「・・・」
「えっなんで金属バットなんか持ってるの?」
「・・・あなたみたいな女たらしは一回死なないとわからないらしいですね・・」
「そ、それどこのだれ情報かな〜!?」
「・・わたくしの独断と偏見によるものですわ・・!」
ブンっ
「ぎゃあ!!ちょっとだれかこの子止めてくれないとおれ死んじゃう!」
「問答無用ですわっ!」
・・・出来るだけ部屋の備品を壊さないでくださいよ沙季さん・・・
何はともあれ、ここは五行学園高等部の生徒会室。
この部屋に居る千尋以外のやつらは全員、この栄えある五行学園生徒会高等部の役員だ。
みんな日本有数の名家の出で、(おれ以外は)容姿端麗・成績優秀というチートを使ってるんじゃないかと疑いたくなるぐらいのお嬢様達である。
そんな完璧彼女達にも様々な欠点がある。
その欠点克服のために彼女達を手伝ってあげたり、毎日のお題を解決したり、もちろん高校での青春も楽しんだり———ってあれ?俺の持論を証明する時間ってある?
この物語は
『○○デレは三次元でも成立すると思う。(※ただし美少女に限る)』
という説を証明し、ツンデレ系やクーデレ系女子を目指そうとしている全国の女子高校生に自信をつけてもらう物語!
この、どこか少し抜けている曲者の彼女達と一緒に綴っていく日常系青春ラブコメディの最後にはみんな笑顔で終われているのだろうか?
その答えはまだわからないけど・・・このまま進んでいった先にみんなで答えを見れたなら———。