私と付き合って
僕の名前は日比谷柚。毎年「名前が可愛い」とからかわれている。そんな僕ももう17歳。流石に彼女がほしいなとは思っているが、名前のせいで17年間ずっと彼女が出来たためしがない。
僕には妹が1人と両親がいるが、両親が共働きのため家事の仕事は僕の担当になっている。ちなみに妹の名前は柚葉だ。まったく……親が何を思ったのかわからないけど「名前考えるのが面倒だから」という理由で僕の名前をとったらしい。
まあそんなことは置いといて今日はクリスマス。僕は今、どうしてこうなったという状況に立たされている。6:00になって起きて顔を洗い、料理の支度を済ませて柚葉を起こしに行ったまではいつもどおりだったのだが……なんで僕は柚葉のベッドに押し倒されているんだ!?
「ああお兄ちゃん、愛しのお兄ちゃん」
「ひいっ!」
「ちょ、柚葉っ!」
「お兄ちゃん彼女いないんでしょ。私がデートしてあげるよ~」
「……なんで柚葉とデートなんかしなきゃいけないんだよ」
僕は涙目になりながらそう言った。
「ああ、そんな涙目のお兄ちゃんもか・わ・い・い」
「……僕は柚葉となんかデートしないからなっ!」
「まったく~ツンツンしちゃって~」「っ///」
「おっ赤くなった~! カ~ワイイっ!」
「もういいっ! と~に~か~くっ、朝ごはんできてるからな」
「ちぇっ、お兄ちゃんとデートできると思ったのに」
「妹とデートなんかするかっ! 僕にはそんな性癖はないからな」といったため柚葉は頬を膨らましながら「残念だな~」と言った。
10分がたってようやく柚葉の魔の手から抜け出せたため
「じゃあ僕は下で待ってるからな」とだけ言い残し足早に下へと降りているときに柚葉の「フフフお兄ちゃん……絶対に逃がさないんだから」という声が聞こえてきたため僕は背筋を寒くした。
幸い今日は休日のため学校もない。僕は買い出しの準備をしていた。すると妹が降りてきて「私も一緒に行っていい?」と言ってきたため「絶対ダメ」と返してやると「お兄ちゃんのケチ」と言われた。
(ケチって言われてもなあ……だって柚葉連れて行くと帰らせてもらえそうにないし。まあそんなこと言うと柚葉が無理やりついてこようとするだろうからな……はあ、困った。仕方ない、ここは帰ってきてからいうことをひとつだけ聞いてやろう。)
「柚葉」「なーに愛しのお兄ちゃん?」
「愛しとか言うな。まあ、帰ってきてからなんでもひとつだけいうことを聞いてやるから」
「ほんとに? 愛してるよお兄ちゃん!」
僕は柚葉の言ったことを無視して家を出た。
僕はクリスマス用のケーキやお肉を買うためにスーパーに来ていた。
「えーと……七面鳥にクリスマスケーキ、あとは……柚葉の好きなオレンジジュースも買っといてやるか」
僕は必要なものを買い揃えスーパーを出た。帰るにはまだ早かったため僕は家の近くの公園へと向かった。するとそこに同じクラスの吉野美奈さんがいた。吉野さんはクラス委員長をしていて僕のことを苗字で呼んでくれる人だ。実は僕の想い人でもある。ちなみに吉野さんはどうかは知らない。僕は吉野さんに想いを伝えるために吉野さんに近づいていった。すると吉野さんが突然振り向いて
「あれ、日比谷くん? どうしたのこんなところで」
「いや、クリスマスの買出しに行ったんだけどまだ帰るには早いかなと思って。それにここの公園は僕の家からも近いからね」
「そうなんだ。全然知らなかった」
(もしここで勇気を出して告白してみたらどうなるだろう。もしフラれて二度と口を聞くなと言われたらどうしよう)そんなことを考えていたが「ここで告白しなければもうチャンスはない」と思ったため勇気を出して告白することにした。
「吉野さんっ!」「ん?」「好きですっ!」
「えっ!? 日比谷くん、私のこと好きだったの?」
「はいっ! 実は一年生の時からずっとでした」
少しの沈黙があったあと、吉野さんが口を開いた。
「実はね、私も日比谷くんのこと、好きだったよ。進級して同じクラスになれたときは『やったー!』って思ってたんだよ」「っ///」
僕は「好き」と言われて自分でもどのくらいかはわからないが顔が紅潮していた。僕も何を話したらいいかわからず、そしてまた吉野さんも同じことを考えていたのだろう。お互いのあいだにしばらく沈黙が流れたあと、二人とも同時に口を開いた。
「あのっ(ね)!」「あ……」
「吉野さんから……どうぞ」
「わかった。じゃあ遠慮なく言わせてもらうわね。『私と……付き合って』とにかく私はそれが言いたかっただけ。はい、おしまい。じゃあ次は日比谷くんの番だよ」
「わかってる。僕も同じことを言おうとしてたから」
僕は決意を込めてそう言った。そしてどうせだったらと思って僕は吉野さんに質問してみた。
「その……よかったらウチに来ない? 今、親いないから。それに、僕にも彼女が出来たって報告したいからね」
「え、いいの? 日比谷くんがいいって言うなら行くけど?」
「僕は構わないけど……」
「どうしたの日比谷くん突然黙り込んじゃって」
「いや、実は妹の柚葉がね、僕のことを『愛してる』って毎日のように言ってくるんだけどね、そりゃ僕も柚葉が嫌いかといえば嘘にはなるよ。けど柚葉に『妹を恋愛対象としては見れない』って言ってやっても全然効果なくて。しかも時々柚葉の目のハイライトが消えてることがあるからもし他の女子を家に連れてきたらその子はどうなるんだろうと思って今までこんなことしたことがなかっただけ。本当は僕も女子ともっと遊びたいのに柚葉が許してくれそうになかったからね」
僕は吉野さんに事情を説明した。すると吉野さんも納得したかのように「わかった。じゃあまた今度都合のいい時に誘ってね。あ、ちょうどいいから番号とメアド交換しない?」と言っため僕は上着のポケットからスマホを取り出してお互いにメアドと番号を教えあってから帰り支度をした。
公園で思った以上に話していて時間を気にしていなかったため外の時計は5時45分を指していた。僕は急いで家に戻ることにした。
家にたどり着いた僕を待っていたのは……鬼の形相をした柚葉だった。
(まあそりゃそうだよな。でも僕だって理由があって遅れたんだ。それを説明すれば大丈夫なはず……だよね。柚葉ならわかってくれるよね)
僕がブツブツ言ってると、「遅いっ!」と当然のように言われ、「お兄ちゃん、なんでも一つ言うこと聞くって言ったよね」
「……言いました」
柚葉の高圧的な視線と態度にいつの間にか敬語を使ってしまっていた。しかし僕もなんでも一つと言ってしまったから取り消すことはできない。ここは男らしくとっとと終わらせてしまおう。
「で、柚葉が僕にしてほしいことはなんだ?」
僕がそう尋ねると柚葉は間を空けることなく「柚兄とデートすることだよ」といった。まあ僕も予想は出来ていた。それに男に二言はない。ん……待てよ、今の発言でどこか引っかかるところがあったな。
「柚葉、もう一回言ってみてくれ」
「デートすr「その前」だから柚兄とデートするって言ったんだよ」
「……デートはわかった。で、その柚兄という呼び方はなんだ」
「え、お兄ちゃんのことだけど。柚兄が嫌だったら柚くんになるよ」
「いや、柚兄でいいです」
「ちぇっ柚くんって呼びたかったのにな」
僕はなんとか屈辱的な呼び方を回避することはできたが、柚葉とデートすることになってしまった。だが、デートを回避できるかもしれない事実に気づいた。
「柚葉」「なに、柚兄」
「僕にも彼女が出来た。ちなみに同じクラスの人だ。だからデートはできない」
「デートできないんだったらしょうがないな……そのかわり、今度スイーツ食べ放題の店に連れて行ってよね。これが柚葉からのお願い」
「え、そんなのでいいのか?それだったらいつでも連れて行ってやるのに」
「正直、柚兄と一緒だったらどこでもいい」
「わかった。また今度な」
そうして僕は柚葉をスイーツ食べ放題の店に連れて行くことと引き換えに彼女を作った。
僕は今日買ってきたものを調理した。料理が終わってすぐにスマホが鳴ったため、僕は電話に出た。相手は恋人の吉野さんだった。
「もしもし日比谷くん、今日の夜空いてる?」
「空いてるよ。僕は今から夜ご飯だけどそっちは?」
「こっちも今から。食べ終わったら今日会った公園に集合ね」「わかった」
こうして僕たちはデートの約束を取り付けた。
夜ご飯を食べ終わり、僕が柚葉に「ちょっと出かけてくる」といって、柚葉も察してくれたのか「いってらっしゃ~い」とだけいってくれた。
僕が公園に到着してすぐに吉野さんも来た。吉野さんも僕の姿を確認して走ってきた。ちなみに吉野さんの今の姿は、デニムのショートパンツに紫のカラータイツ、それにスニーカーとジャケットとマフラーをしているがとても良く似合っている。
僕はというと、ジーパンに厚手のコート、手袋にブーツという完全な防寒仕様だ。
僕が何をしたらいいかが分からずにおどおどしていると、吉野さんが手を握ってきた。僕もそれに倣って吉野さんの指と指のあいだに僕の指を滑り込ませた。いわゆる「恋人つなぎ」というやつだ。
僕たちは手をつないだまま公園の中をウロウロしていた。そして、やけに寒いなと思っていたら雪が降ってきた。まるで僕たちを祝福してくれているみたいと思った。
そして互いに一言ずつ残してこのデートは終わった。
「愛してるよ吉野さん」
「私もあなたと出会えて嬉しかった。愛してるよ日比谷くん」
~Fin~
はい、時崎狂三がryです。
初めて短編というものに挑戦しましたが……「これ、短編じゃないよねwww」というレベルになってしまいました。でも、読んでくださった皆様には感謝感謝です。感想などお待ちしています。
……私のハートは紙より厚くガラスより薄いので酷評などされたら書く気がなくなりますので。よろしくお願いします。
長文失礼しました。