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3年ぶりの会話


素直に認めてしまえばソレはとても簡単で。


そう俺は小さな時から美晴を独占したがった…それは何故か?

そう俺は美晴に友達を作らせたがらなかった…それは何故か?

そう俺は紗都子と…特に修二に美晴を会わせたくなかった…それは何故か?


答えは簡単だ…俺が美晴を好きだからだ。

好きだから故の独占欲。

好きだから俺一人に頼って欲しくて、美晴の良いところを知っているのも、あの笑顔を向けられるのも、俺だけでいいと思っていて…だから友達を作らせたくなかった。

美晴の良さを完全に知っているアノ二人…特に修二は美晴のコトを好きになりそうで…怖かった。


答えを認めると清々しい気持ちになった。


イライラもやもやした気持ちの全てに結論がでる。

全ては「美晴が好きだから」が答えになった。

答えが出た俺は…清々しい気分でずっといられないコトも気がついた。


なんて言ったってもう俺は3年近く美晴と口を聞いていない。

いつぞや紗都子と美晴が一緒に居るときに声を掛けられたこともあったような気がするが、それもバカな俺は無視してしまったように思う。


美晴は今俺のコトをどう思っているだろう?


無視してた俺のコトを酷いヤツだと思っているかもしれない。


考えれば考えるほどいろんな答えが出てきて俺の頭はパンク寸前までいった。

美晴が修二のコトを好きになっていたらどうしよう。

むしろすでにアノ二人付き合っているんではないだろうか?

廊下で楽しそうに話をする二人はとても仲がよさそうに見えた。

もし二人が付き合ってなかったとしても…俺があの二人の間に割って入るコトは可能なのだろうか?

そもそも嫌われていたらなんの意味もない。

割って入る以前の問題だ。


もう一回…美晴の隣を確保しなくては。


そしてもう誰も彼女に寄りつかないようにしてやる。

蚕の繭のようにあいつをくるんで…誰からも見えないようにしてやるのだ。


俺はチャンスを伺っていた。

もう一度アイツと接点をもつきっかけを。それさえ掴めば…もうこんな風にぐるぐる考えなくてすむ…そう思っていた。


チャンスは割とすぐにやってきて、中等部二年のクラス発表で俺は美晴と3年ぶりに同じクラスになった。


いきなりやってきたチャンスに、俺はガラにもなく動揺していた。

久しぶりに彼女と会話するのに、一体どんな風に話しかけ話を盛り上げていこうか俺は頭の中で何回もシミュレーションし始めた。


(久しぶりだね美晴?3年ぶりに同じクラスになったな)

(美晴、3年ぶりに同じクラスだね?少しだけ背高くなった?)

(おはよう美晴。同じクラスだね?また一緒に俺と居てくれる?)


あぁ…なんて言えばいいんだろう?なんて言うのがベストなんだろう?

溝が出来てしまった俺と美晴の仲を修復できるような魔法の言葉はどれなんだろう?


教室で友人と話をしながらも、俺の思考は美晴のコトでいっぱいで…

話を聞いているようで実は何にも頭に入っていなかった。


「おーい?話きいてるかぁー?」

「何か今日のリオって心ここにあらずって感じだな?」

「何かあったん?」


普段の俺とは違うことで友人達が不思議そうに尋ねてきた。

うるさいな。俺のコトはしばらく放っておいてくれ。


「なんでもねぇよ…」


俺はそう一言言うと押し黙った。

友人達は「怖ぇ~!!!」とか「機嫌悪いなーどうしたー」なんて言って俺をからかう。

本当、お願いだからそっとしとけって!俺を苛立たせるな…!


友人達の態度に苛立ちがピークに達していた…そんな時だった。



ドンっっ!背中に何かが思いっきりぶつかった。

「きゃっ」っと小さな悲鳴がしてドスンと音がした。

誰かが俺にぶつかって尻餅をついたらしい。


イライラしてた俺は…それが誰かも確認せず当たり散らすように…


「っってぇな!誰だよぶつかったヤツ。前くらい見て歩け!!」


と怒鳴ってしまった。


それが間違いだったんだ…。


振り返って見るとそこに居たのは――俺が会いたくて話したくて独り占めしたくて…

恋しくて、恋しくて仕方ない、愛しい人。


藤波美晴…その人だった。


違う。ごめん。そんなつもりじゃない。俺は…違うんだ。

一瞬のうちに言葉が頭を埋め尽くす。

直ぐに謝ろうとした…その時だった。



「ごめんなさい。結城君!!!」



美晴がそう…言ったんだ。

結城…君?

何で?…何で?何で?…どうして?



何で美晴…そんな風に俺を呼ぶの?!



紗都子のコトをサトちゃんと呼び、修二のコトをシュウちゃんと呼ぶ。

そんな風に、昔のように友を呼ぶ美晴から「結城君」と呼ばれたコトに俺はショックを受けていた。

俺のコトはもうどうでもいいの?

俺はお前の中から完全にもう消えちゃった?

俺はお前にとって…その他の生徒の一人と変わらないってわけ?



そんな風に思うなら…俺にも考えがある。

ねぇ美晴?俺のコト忘れられないようにしてあげる。



俺は大好きな彼女に思っても無いことをペラペラと口走った。

「あぁ…お前か『どんくさ美晴』。新学期そうそうから鈍くさいなぁ?つうかさーお前むかしっからトロクてグズだったもんなぁ?」

「あぁ?リオお前コイツと知り合い?」

「親同士が仲が良いんだよ。だからそのせいで幼初等部時代クラスが離れるまでコイツのおもりさせられてさぁーんっとにまいったぜあの頃は。なぁ?美晴?」


美晴は俺の言葉を聞き、どんどん青ざめていった。

そして今にも泣きそうな顔で

「うん…そうだね。ごめんね?どんくさくって。結城君に迷惑かけないように…一生懸命がんばるよ。」


そう言って自分の席へと去っていった。


「なぁ…リオ?あの子泣きそうだったけど…平気なんか?」

友人が心配そうに、そう尋ねる。

「いいんだよ」俺はぶっきらぼうに言い、こみ上がってくる笑いを必死にこらえていた。


本当にワラエル。

大好きな子を傷付けて。

傷ついた顔を見て…これで俺を忘れられなくなったと喜んでいるなんて。

倒錯的な考えに反吐が出る。




自分と言う人間がつくづく嫌になった。


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