気づいたコト
一人になった俺は、美晴を見返すがごとく友達を作った。
お前が居なくたって俺は平気。むしろお前より俺はたくさんの友達に囲まれて生きていくことができるんだ!
なぁ美晴?俺は無口で何もできない男の子じゃないんだぜ
得意なスポーツで男子の輪の中に入り、頭の良さで教師に気に入られ、女子にはちょっとした意地悪と優しさで理想的な男の子を演出した。
俺を嫌いだなんて言うヤツはクラスに一人も居なくなった。
そんな俺とは対象的に美晴は少し変わった言動や、壊滅的な運動センスなどからクラスのお荷物的存在とされ、『どんくさ美晴』等という通り名までもらうようになっていた。
「なぁなぁリオ、お前さ知ってる?」
「何が?」
「お前の友達のコトだよ。俺さ5組に仲がいいヤツがいるんだけど、あのクラス今年の体育祭はもう諦めてるって話だぜ?」
クラスメイトがニヤニヤした顔で話しかけてくる。友達って…誰のことだ?
「それと俺の友達がなんの関係があるんだよ?」
「だーかーらー『どんくさ美晴』がいるからだろ?その前の球技大会見ただろ?あの運動センスのなさったら。爆笑もんだったじゃねぇか。あの結果見て5組のヤツラ体育祭もすでに諦めモードらしくてさ。可哀相だよなー『どんくさ美晴』と同じクラスになったばかりに。」
ケラケラ笑いながら話を進める友人。何がそんなに面白いのかまるでわからない。
「なぁ、リオさ友達は選んだ方がいいぜ?って言うか美晴はあんなでも一応女だからな。また前みたいにベッタリ一緒だとお前美晴に勘違いされるぜ?」
「勘違いってなんだよ…」
「ほら、お前イケメンじゃん?お前みたいなヤツが隣にいたら勘違いしちゃうだろ?俺が女だったら三秒で恋いに落ちるね。」
友人は笑いながら話を続ける。
「勘違いさせて失恋確定させるなんて鬼みたいなことやめろよ?俺はさーリオが美晴のこと何とも思ってないってわかるけどさー?『どんくさ美晴』は勘違いするかもしれないじゃん?そうなる前に縁切っておけって話。」
友人はそこまで話すと誰かに呼ばれて俺の前から去っていった。
勘違い、恋いに落ちる。失恋確定。
友の声が頭の中でリフレインする。
美晴も―恋をする?
俺の頭が必死に今何かを導き出そうとして――そこから俺は考えるのを止めにした。
いや、本当は頭の良い俺だからすぐに答えは導き出されていたんだ。にもかかわらず、その解答を見なかったことにした。小学生の俺はその解答が恥ずかしくて…
小5の9月を境に、俺は美晴を視界にも入れないように生活を始める。
そんな生活を続けて初等部を卒業し、中等部へ進学。
それなりに仲良いヤツを大量に作った俺は、中等部で新しく外部から編入してくるヤツらとも直ぐに打ち解けクラスの中心で王様見たいな生活を送っていた。
悠々自適な生活を満喫していた…そんな時だった。
クラスの真ん中机に腰掛け、話題の中心にいる俺がふと廊下を見たその時。
廊下を歩いて行く人物が見えた。
笑いながら楽しそうに、少し舌っ足らずな話し方ではしゃぐ少女。
そしてその隣には…そんな少女を愛おしそうに見つめる長身の男が寄り添って歩いていた。
美晴と修二だった。
一人ぼっちで生きていると思ってた美晴が楽しそうにしている。
俺ではない男の隣で。
楽しそうに笑っている。昔俺に向けていた笑顔のままで。
俺では無いヤツに笑いかけている!
ガツンっっ!!っと心臓を誰かに握りつぶされたような痛みが走る。
音が消え、人も背景も消え…目に入るのは俺と美晴と修二だけ。
話声も雑音も消えた世界で――俺は歩き去る二人を見つめることしかできなかった