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昔のこと2

あの日、中等部二年のクラス発表の日。私は掲示板に張り出されたクラスの名簿を見て驚いていた。

そこには私の名前と――リオ君の名前が一緒に印字されていたからだ。


同じクラスになるのは三年ぶり。

口をきかなくなったのも三年前。

昔はあんなに一緒にいたけど今は…違う。

彼には彼の新しい世界があり、それは私にはとても立ち入ることの出来ない世界だ。

キラキラ輝いているリオ君の世界。

私の世界がどんより真っ暗ってワケではなかったけど…でも私にはまぶしすぎて。


だがら私はクラス名簿を見て困ってしまっていた。幼等部から上がって来ている子はクラスにごく数名。あとの大多数は中等部から入ってきた外組だ。リオ君と私が仲良しだったと知る人は少ないだろう。


ならば――私がとる道は一つなのだ。


彼との過去は封印だ。仲良しだった記憶だけを糧にこの一年を乗り切ろう。彼に迷惑がかからないようにしなければならない。キラキラの世界で生きる彼に『どんくさ美晴』との接点があったとなれば彼の名誉にかかわることになるやもしれないからだ。

運動の得意な彼はクラスをまとめて5月の球技大会も、10月の運動会もフルスロットルで挑むのだろう。そうなれば運動オンチな私はただの迷惑にしかならない。ならば運動系の大会は全てズル休みをして…あぁでも体だけは丈夫なのだ…両親になんて言って学校を休めばいいのだろう?

私はグルグル考えながら新しいクラスに向かっていた。

深くふかーく考えていたからなのだろう。私はクラスのドアをあけて足を踏み入れてからあんまり前をよく見ていなかった。だから――


ドン!!

っと私は誰かの背中に突撃し、その反動で尻餅をついていた。


「っってぇな!誰だよぶつかったヤツ。前くらい見て歩け!!」


怒鳴り口調で私に振り返ったその人は、私が悩む原因になったその人――結城リオ君だった。

あまりの口調とその苛立ちの表情を見た私は思わず。


「ごめんなさい。結城君!!!」


とそう彼の名を呼んでいた。



その時の彼の表情は今でも忘れない。



あの顔は何かに傷ついて怒りに変わる顔だった。


「あぁ…お前か『どんくさ美晴』。新学期そうそうから鈍くさいなぁ?つうかさーお前昔っからトロクてグズだったもんなぁ?」

「あぁ?リオお前コイツと知り合い?」

「親同士が仲が良いんだよ。だからそのせいで幼初等部時代クラスが離れるまでコイツのおもりさせられてさぁーんっとにまいったぜあの頃は。なぁ?美晴?」



「うん…そうだね。ごめんね?どんくさくって。結城君に迷惑かけないように…一生懸命がんばるよ。」


「がんばるだってさーギャハハハハ!」

リオ君のお友達達が笑ってる。一体リオ君はどんな表情で笑われてる私を見ているのだろうか?

気になったけど…とてもじゃないけど怖くて顔を上げられなかった。



そうか…そんな風に思われていたのか私は。


仲良しだったと…友達だったと思っていたのは私の勘違いだったのか。

いや、勘違いですらない。友達だったと望んでいただけだ。

よく考えればリオ君みたいな人が『どんくさ美晴』と一瞬でも友達だったはずがない。


そんなはず…あるわけがないのだ。



ゆっくりと立ち上がりヘラっと笑うと私は指定の席についた。

泣いちゃダメだ。泣いちゃダメだ。泣いちゃダメだ。


泣いたら…リオ君に迷惑がかかる。


私は席で呪文のようにその言葉を心の中で繰り返し繰り返し唱えていた。




それからの一年は酷いもんだった。

私はことある事にリオ君に呼ばれては『昔おもりをしてやったコトの恩返し』と言う名目で様々なことを申せつかった。喉が渇いたとおっしゃれば自販機ダッシュ。学食でご飯と言えば場所取りダッシュなどなど。クラスのみんなに『パシリな美晴』と二つ目の通り名をいただけるほど私はリオ君にいろんなコトを命令された。

そんな過酷な一年が過ぎ、掲示板で新たなクラスを見てリオ君とクラスが別になったときは、やっと解放される…と安寧したものだ。


そして平和な中等部3年を過ごし、高等部へ。


最初の1~2年はこれまた平和に過ごしていたのに…最後の三年でドカン。

私はまたリオ君とまた同じクラスになってしまった。

だけど、不幸中の幸いとはこのことなのだろう。シュウちゃんも同じクラスだ。

一人パシラれる1年になるのは相違ないだろうが、一人でもクラスに友達がいると心の重さが違ってくると言うものだ!


シュウちゃん見ててね!美晴は立派にパシりをやり遂げるからね!


そんな意気込みを抱きつつ踏み入れた新クラス。

私の席は窓側の一番前で、リオ君の席は廊下側の一番後ろだった。


よしよし、離れてる離れてる。御用聞きの時はチトめんどくさい距離だけどこれだけ離れれば無意識のうちにリオ君を苛立たせるようなコトはないだろう。何せ距離離れているし、リオ君の周りにはすでに人だかり。クラスのキラキラした男の子と女の子で溢れかえっていた。


私は離れた席で朝のホームルームを終え、始業式を終え、帰りの簡単なショートホームルームを終えて、さてスーパーでも寄って晩ご飯の食材でも買って帰ろうかな~っと思っていて…


そして今に至る。


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