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守られて

美晴が帰って来ない。

そわそわして様子がおかしい修二。

新しい授業の度に、先生から指摘をうけて答えるのは修二だった。


「あら…藤波さんは?」


「藤波は保健室で休んでいます。」


日頃大人しく真面目な美晴と優等生な修二の発言に

疑いを持つ先生なんていなかった。

でも…


おかしい。おかしいんだってのくらい

昔なじみな俺にはわかる。


すべての授業が終わり

ホームルームが終わっても美晴は帰ってこなかった。


さすがに訝しく思った担任が修二に探りをいれても

あいつはおくびにも出さずにシラを切った。


「藤波は保健室です。…鞄は俺が持っていきます。」


担任はそれ以上追及するのを諦め

残りのホームルームを消化していった。


放課後がきて、各生徒がバラバラに行動し始める

部活に行く者、帰宅するもの、なんとなく時間をつぶしながら教室にいる者。


そして俺と…修二と紗都子。


紗都子は自分のクラスのホームルームが終わるや直ぐにこの教室にきた。

そして何やら修二と深刻そうに話をはじめだした。


俺は…ゆっくりと二人に近づくと

「美晴は?」と静かに尋ねた。


「なんであんたに教えてやらなきゃならないわけ?」

好戦的な口調で話てきたのは紗都子だった。


「美晴…帰ってきてない。…保健室にも…本当はいないんじゃねぇの?」


そう、修二の態度からなんとなくそう思っていたんだ。

美晴が…行方不明なんではないかと。


「四時限目の最初までは保健室にいたらしいんだ。で、先生が休んでけって言ったのを振り切って教室に戻るって言って出ていったらしい。」

修二がゆっくりと確認するように話す。


「それで?そこからは?」


「全然連絡がつかないのよね。ケータイも鳴らしてるんだけど反応ないし。予想的にはどっかで寝てるってのが妥当な線だけど…もしかしたら…」


「もしかしたら…なんだよ…。」


紗都子は意味深な瞳で俺をにらみあげると

「結城、あんたのせいで美晴が失踪してるのよ?どう…責任感じる?」


そう言った。


「責任って…なんだよ。」


「はぁ?何にも感じてないわけ?散々傷つけて振り回してるくせに?嘘でしょう?今朝の事だってね、あんたヤキモチ焼くほうに気持ちが行ってたから全然理解なんてしてないだろうけど、半分はあんたのせいで美晴はずぶ濡れになったんだからね?」


「はぁ?…なんの話だよ?つうかヤキモチってふざけんなよ。」


「ほら…昔からそう。本当は大好きで大好きでたまんないくせしてそのお高いプライドのせいで美晴を振り回して傷つけるんだよね?ヤキモチばっかり焼いてさ、自分の気持ちばっかり。美晴があんたのためにいっぱい頑張ってる事なんて何にも知らないんだ。それなのに…それなのに傷つける事ばっかり言って。…ホントどこまで最低なのアンタ。」


「なっ…なんの話なんだよ…」


本当に辛そうな顔でうつむく紗都子。

俺は…美晴に何をした?傷つけたのは知っている。そんなの十分自覚している。

でも紗都子の様子だと…俺が知らない事があるのか?


俺は…俺は美晴に何をしたんだ?


困惑した顔で立ち尽くしている俺に

修二はゆっくりと話しかけてきた。


「美晴はね。結城、おまえにこき使われていた中学の時も…今も…イジメにあってたんだよ。」


「イジメ…?」


なんだよそれ。イジメ?俺が美晴をみんなで使うのとは別にってことか…?


「最初は俺もサトコも気が付かなかったんだ。美晴隠すのうまくて。でもある時…いつまでも体操着のままで制服を探す美晴を見たことがあった。丁度中学のあの頃の事だ。…パシリだとか言ってもなんだかんだ美晴にちょっかい出してるお前にヤキモチやいた女の子のしたことだと思う。美晴は…お前に伝えることを拒んだんだ。何故だと思う?…お前の周りにいる“トモダチ”の中にそんな事する奴が混ざってるって知ったら結城…お前が傷つくだろうからってさ。」


何だよそれ…


その言葉は声にはならずに空気に溶けていった


美晴は俺のせいでクラスから浮き

俺に縛られてもなお俺の事を考えて…


そうやって俺を守ってくれていたんだ。


大事な人なんて君しかいないのに。

君しか欲しくないのに。


それなのにその想いは伝わらなくて


君はいつだって俺の事を思って

頑張ってくれてたのか…


守らなきゃならないのは

守りたいって思っていたのは自分だったのに。


そんな自分が一番君に守られて

酷い事をしていた俺を君はひたすら…


強くなったと思っていたのは

自分だけで…結局昔から変わらない。

俺は今も昔も優しくて強い君に守られてたってことか…。


「はっ…情けない話だな…ソレ…」


やっと絞り出した言葉はカラカラで。

直ぐに空気に溶けて何も残らなかった。


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