知られたくなかった
初めてリオ君にお弁当を作ったあの日からしばらく経ちました。
あの日からリオ君と私はなんだか少し昔に戻ったように…お話をするようになりました!
といっても昼休み始まってから少しだけなんですけどね。
自販機でジュースを買うその間だけ。
リオ君は荷物持ちとか言って私を連行するのですか、特に何かあるわけでもなく…
むしろ私の分の飲み物まで買ってくれるんです!
リオ君いわく「飯のお礼」だそうです。
中等部の頃とは打って変わった彼の態度に私はドキマギするばかりで…もう心臓が持ちません。
ゆっくりと飲み物を選びボタンを押す。
その間だけ私たちはお話をします。
ザ・雑談といった内容の話をつらつらと話すリオ君。
「担任の香坂センセーさぁ…最近頭ヤバクね?ちょっと薄くなってきてるよな」
「昨日見たテレビさ、お掃除特集してた。お前あーゆーの見るの好きだろ?」
「そのまえどっかの店で食べたアレ…旨かった。美晴作ってって言ったら…ダメ?」
リオ君と雑談ができる…そのコトがもう…嬉しくて。
私はしまりのない顔全開で彼の話を聞くのです。
幸せでした。
とても、とても。
だから…最新の注意をはらって学校生活をおくっていました。
相変わらず登校は早くして、ランダムに起きる机のイタズラや下駄箱のイタズラの早期回復に費やしました。
だって…知られたくなかったんです。
リオ君にもサトちゃんにもシュウちゃんにも。
心配させたくなかった。
サトちゃんやシュウちゃんに。
何で言ってくれなかったの?と言って悲痛に歪む顔を見たくなかったんです。
知られたくなかった。
やっと…やっと私に向かって笑ってくれるようになったリオ君
そんな彼がこのコトを知ってどう思うか…怖くて…怖くて…。
だから知られたくなかったんです。
でも本当は間違っているって
そのこともちゃんとわかっていたのに…。
私は…やっぱり『どんくさ美晴』で…
成長した気になっていただけの弱虫だったんです。
勇気が出せない…弱虫だからみんなに伝えられなかったんです。
だからあの日…あんなコトが起きたんです。




