あの日から
あの日から美晴は毎日俺にお弁当を作って来てくれる。
俺はそれを受け取ると彼女を連れて自販機へ。
名目上は飲み物を持つ係となっているが、本当は違う。
自販機の前で彼女と話をするためだ。
話す内容は様々でくだらないコトの方が多い。
学校の先生の話とか、昨日見たテレビの話とか、後は――食べて旨かったものを作って欲しいとか。
美晴はニコニコと笑いながら俺の話を聞いてくれた。
彼女の笑顔をずっと見ていたい。
そんな衝動に駆られるけど…そんなワケにもいかない。
昼休みは短くてずっと自販機の前で彼女と話をしていたいが、そんなコトしていたらご飯を食い損ねてしまう。
本当は昼休みもずっと一緒に居たいけど…
でも紗都子たちと楽しそうにご飯を食べているのを見ると、彼女をそこまで束縛してはいけないと自制する気持ちが生まれた。
もう間違いを繰り返してる時間はないんだ。
彼女が悲しむようなことはしちゃいけない。
そんなことを考えながら、俺は美晴との日々を過ごしていた。
もっと…彼女の側にいたいと思いながらも彼女に嫌われるのが怖くて…次にどう動けばいいか思い迷っていた。
そんな俺は…まるで知らなかったんだ。
自分の気持ちのことでいっぱいで…彼女に起こっていることなんてまるで気がついていなかった。
そして…あの日を迎える。
季節は春から梅雨へと変わっていた。




