受けるべき罰なんだ
リオ君の盛大な暴露大会から1日が過ぎました。
私、藤波美晴の朝は早いです。
ただ今AM4:00となっております!いつもより1時間早起きです!
現実逃避のために昨日はいつもより3時間早く寝たのですが…どうやらそのせいで早く起きてしまったようです。
まぁどのみち早起きしていろいろ準備しようと思っていたので結果オーライとしましょう。
まずは洗面台にて顔を洗ってブラッシングです。
寝癖で跳ねる髪を説得し、なんとかいつものようなミディアムヘアへと落ち着かせます。
次に化粧!…と行きたいとこですが、あいにく化粧して美しくなる顔ではございません。
それに、私もみんなのようにマスカラして口紅してグロスしてーってやりたいのですか、サトちゃんから「美晴はそのままが一番よ!」との化粧禁止令がでているので…お化粧は大人なレディーになってから覚えることにしましょう。
身なりを整え父と母の朝食の支度をし、自分のお弁当を作って…
制服に着替えたら今日はさっさと出発です!
電車に乗って30分。
都内から少し離れたところにある有名私立学校に私は通っています。
お金持ちが通う学校として有名ですが、知力の方でも厳しい審査があり、入ってしまえば簡単にエスカレーターで上の学年にあがれる…というワケではありません。
中間テストや期末テストなどでつけられる評価が低いとエスカレーターは緊急停止してしまう仕組みです。
頭がとびきり良いってワケではない私は、こうやって少し早めに学校に行って予習と復習する時間に充てています。
家でやってもいいんですが、甘えたな母と寂しがりやな父が私の部屋にきて邪魔をするので学校でやる方が捗るのです。
でも今日は…勉強だけが目的ではないんですよね。
私は昨日を振り返る。
飛び交う雑音の中に私に向けられた敵意があったことを思い出す。
「なんであの子なわけ?……アリエナイ!許さない!!」
一瞬だけど聞こえた言葉。
聞こえないところでもいろんな言葉が私に向けて紡がれていたのだろうと思う。
話を聞きつけ他のクラスから飛び込んできたサトちゃんは私のコトを凄く心配してくれた。
「いい美晴?なんかされたり言われたりしたら絶対に私か修二に言うのよ?わかったわね」
サトちゃんとシュウちゃんが心配してくれる。それだけで心があったかくなります。
そんな二人に迷惑は掛けられません。
心配してくれるだけで十分なのです。
私は決意をあらたにして学校に急ぐ。
時刻はAM6:00。守衛さんが5:50分に開門するので見渡すかきり人が居ない。
私は誰も居ない学校につくと
「平常心!平常心!平常心!!」
と大きな声で呪文を唱えた。
コレでもう怖いモノはありません!
さぁかかってきやがれなんですよ!
私は門をくぐり校舎の中へ。
昇降口で大きく息を吸い込むと、自分の下駄箱に向かった。
下駄箱の中は――まぁ予想通りというか…予想の斜め上をいっていた。
私の予想ではペンキで下駄箱の中がデログチョになっているとかかな?と思っていたのだが。
「うーむ。これは…ある意味凄いなぁー。」
下駄箱の中は綺麗に…本当に綺麗に土で封印されていた。
一分の隙間もないくらいにみっちりと詰まった土。
一体コレをどうやって作り上げたのだろう?と思うくらいに土は綺麗につまっていた。
「うーん。コレを朝から掃除するのは…チョットめんどくさいですね。」
私はそういいながら鞄の中から上履きを出して履いた。
こんなこともあろうかと!昨日の時点で上履きは持ち帰っているのだ。
朝から下駄箱の中の土と格闘する気力がない私は、静かに下駄箱の扉を閉めた。
さてさて、下駄箱があんな調子ということは、教室も…大体想像はつきますね。
履いてきたローファーを片手に持ちながら私は三年の教室へと向かう。
教室へと着くとまずは自分の席へ。予想通りなら…
「やっぱり。こういう事態は王道通りに進むんですね」
私の机は素敵なペインティングがマジックで施されていた。
死ね!ブス!身の程知らずのバカ!等々…
死ねって…死にませんよぉ~私はしぶとく生きちゃいます。
ブスかぁ…そんなのわかってます!自覚済みです!!
身の程知らずのバカ…うーん。身の程知らずではないですよ?バカ…でもないと思いたい!
にしても…翌日からフルパワーですね。
こんなだろうと思ってはいましたが。うーむ。
でも!だから準備は怠っていないんです!
私は鞄の中からベンジンとボロ布を取り出し机をゴシゴシとこする。
マジックで書かれた酷い言葉はスルスルと消えていった。
「ふっふー♪こんな程度では私はへこたれないのです!」
椅子にイタズラが施されてないコトを確認すると、私は席につき机に倒れ込んだ。
今日すでにこんな調子ということは…これから酷くなることはあるにせよ、止むことはないだろう。
これから1年間私はこの環境でやって行けるだろうか。
以前もリオ君と同じクラスになり、パシリをやっていた時にちょっとしたイタズラや嫌がらせがあった。
上履きがどっかに旅に出たり、教科書が失踪したり。
でもあの時は割と直ぐに見つかったのだ。隠した人も本気でやったワケじゃ無い。ちょっとした憂さ晴らし程度だったのだろう。
あんなパシリ状態でもリオ君と話し接していた私に、ヤキモチを妬いた誰かがやったのだ。
人の物を隠したりイタズラしたり、その行為は許されるものではないと思う。
でも気持ちは何となくわかる気もするのだ。
だから…悲しくはなるけど、腹は立たない。
ヤリキレナイ気持ちが暴走している結果がコレなのだろう。
わかるから。気持ちはわかるから…私はコレを報告することができない。
サトちゃんやシュウちゃんはなんで言ってくれなかった?と言うだろう。
でもね?私が…その子の立場なら…やっぱり「何で?どうして??」って思うだろうし、「なんであの子が?」って思うとおもう。その気持ちは凄くわかる。
だって私自身が「なんで私が?」って思うから。
そんな気持ちでいる私は、真剣にリオ君と向き合ってる女の子達からすればとんでもなく失礼な存在だと思う。
だから…これは受けるべき罰なんだ。