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「街中に潜む化け物」

掲載日:2026/07/19

化け物とはときに「普通の人」に擬態して街中に紛れ込んでいる。


我々人間はもはやスマホなしでは生活が成り立たなくなりつつある。


二十歳を過ぎた自分にとってもスマホは生活必需品だ。だからといって、彼女も友達もいない身としては、SNSで四六時中誰かとつながる必要性はいまいち理解できない。


通知が来た瞬間に写真を撮って共有するBeRealなどはまさにその典型例だろう。私としては人間が主でスマホは従であるべきで、所詮道具であるスマホに指図されるのはなんだか気に食わない。


これが友達がいない僻みなのかは分からないが、自分に迷惑が降りかかってこない範囲であれば問題ない。


ところで、大学生になってコンビニバイトを始めた。コンビニには様々な客がやってくる。


風俗店の公共料金を払いにきたスーツを着た厳つい顔のおじさん。ギャップに思わず笑いそうになってしまった。混んでいるレジで世間話をしようとする年寄り。目に染みるほどタバコくさい老人。有人レジが混んでいるからとセルフレジに行ったのに使い方が分からず店員を呼ぶおばさん。


ここまでなら自分のトークデッキの一つとして笑い話にするだけだ。しかし、世の中にはコミュニケーションが取れない、あるいは取ろうとしない客がいる。困ったものである。


コンビニの商品といえば何があるだろうか。おにぎり、揚げ物、くじ、そしてスイーツ、挙げたらキリがないだろう。


どれもすべて店頭に並べきれているとは限らない。店員に在庫の有無を確認すること自体は何も悪くない。しかし、無いからといって店員に詰め寄ったところで無い商品がいきなり現れるわけではない。


詰め寄るだけ時間の無駄だが、店員を責めたところで商品が湧いてくるわけでもない。いったい何を期待しているのだろうか。


コンビニでは公共料金の支払いをすることができる。公共料金の支払いの手間は、水一本売る何倍も手間がかかる。検収印を押し、場合によっては印紙も貼る。時間がかかるのは想像に難くないだろう。


そんなものを何枚も持ってきて、バスが来るからと急かされてもどうしようもない。遅いと文句をいうのならば、自分の予定を見直すべきではなかろうか。


丁寧に接せられたらこちらも丁寧に、雑に扱われたらそこそこに扱うのが人間ってものだろう。他の人がどのように思っているのかは分からないが、自分は「インターネットで見聞きしたクソ客」と思うとワクワクしてしまうクチなのだ。にもかかわらず、驚くような客が来た。


外国人にとって日本のコンビニというのは余程魅力的なのだろう。SNSでみた商品を求めてくる客はかなり多い。


"Excuse me"と呼ばれるよりは「すみません」と呼ばれるほうが個人的には好印象だが、どちらにせよコミュニケーションが成り立つので問題はない。


翻訳画面だったり商品画像だったり、スマホというのは非常に便利でおおよそことはこなせる。ある日、客が一枚の画像を見せてきた。そこには日本語で商品名と商品イラストらしきものが描かれていた。


見るからにAIが作った画像なのだが、商品名が書いてあるので案内する上では問題ない。スイーツコーナーへ案内をしたところ、客は画像を指さし「これじゃない」というのだ。


客が欲していたのはロールケーキ。コンビニのロールケーキというと、大きな一切れのものと小さい複数切れの2種類がある。商品名を見る限りは小さい複数切れのほうなのだが、一応もう片方の存在も伝えてみた。しかしこちらも違うとのこと。客は大きくて分厚いロールケーキだと言う。


そんなものはないといっても、「AIにはあると書いてある」と譲らない。これには開いた口が塞がらない。確かに、スマホを片手に荷物の送料や充電ケーブルの規格などを聞いてくる客はこれまでにもいたが、世の中には現実を見ずにAIを盲信する人が既にいるようだ。


これの流れが加速していくのかもしれないと考えると恐ろしい。化け物とはわかりやすいクソ客でもなく、普通の顔をして街中を歩き、現実よりも画面の向こうのAIを信じる人間なのかもしれない。

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