{「 」}
_φ(・_・始まり始まり)
ああ、まただ。
また誰かが、俺の名前を口にした。
だいたい、こういう時は決まってる。
「世界を変えたい」とか「力が欲しい」とか、どこの漫画で読んだんだって願望を抱いた夢見がちな奴らが、古びた魔術書を開いて、呪文を唱えるんだ。
で、何が起こるか?
目が合うんだよ、俺と。最悪なことに、な。
眩しい光。
焼け焦げた鉄と、空気の裂ける匂い。
空間が軋む音。……というか、もっと言えば、俺の寝床が破られる音。
気づいた時には、もうここにいた。
コンクリートの床。
蛍光灯の白い光。
――そして、俺を見上げる、ひとりの少年。
「召喚……できた、のか?」
……できてる。残念ながら、な。
俺の名はバ=リーアス。
契約数、五千年でたったの五回。
名もなき影。真名を持たぬ精霊。呼ばれたくもないこの現世に、またもや無理やり引きずり出された哀れな存在。
そして今。
六人目が、目の前にいる。
……いや、待て。おい。
こいつ、まだ子供じゃねえか。年の頃は十五、せいぜい十六か。
おまけにその召喚陣――素人の書いた落書きか?
線は歪んでるし、魔力制御の封印式は逆になってるし、詠唱の構文なんて文法違反だらけだぞ。
――これで、俺を呼んだって?
「はじめまして……えっと、名前は……バ……=リーアス……?」
「言わなくていい。……いや、もう言っちまったか。……ああ、最悪だな」
まさかとは思うが。
この子供、本当に俺を呼び出すつもりじゃなかっただろうな?
――これ、絶対に契約、間違ってる。
(バ=リーアス:……おい、作者。またお前か。どうして毎回、俺ばっかりこんな目に遭うんだ?)
作者「仕方ないでしょ?これも“契約”だからね」
(バ=リーアス:契約って便利な言い訳だな……まったく)
作者「というわけで、次回もトラブル続きの二人(+α)を、どうぞゆる~く見守ってください!」
(バ=リーアス:次こそ平穏な日常を頼むぞ。……無理だろうけど)
作者「……それは契約外です」
それではまた暇な時にでわでわ!