表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

22/36

㉒ 事件

挿絵(By みてみん)


 静かな郊外の街。


ある指名手配犯の潜伏情報があり、警察は犯人に警戒されないよう情報を伏せていた。もちろん刑事が多く派遣され、捜査チームが動いていた。


 均也の父親である平真護は、地域警察官だったので内容を知っていたが、極秘情報で誰にも話せず、勤務以外の時間でも町を捜査していた。

なぜ刑事でもない交番勤務の警察官がここまでしていたのか、それは犯人が児童殺害を繰り返した極悪犯だったからである。


 事件が起きた当日、平真護は非番であったが、プライベートで街をパトロールしていた。子供が出歩く時間は睡眠も取らずに。


日が落ちる時間が早くなり、肌寒さを感じる。夕方頃にはもう暗く、子供たちの姿は町から消えていた。


「塾が終わる時間まであと一息だな。」そう呟くと、休憩がてら空腹になったので食事を取ることにした。


 この時間は学習塾がある商店街を周っており、すぐ側の店に入った。

入り口から近いテーブルに座り注文する。客はまだ少なく、奥で小さな女の子が一人座っていた。


「天津とラーメンお待ち!」ここの天津飯は絶品である。


 先ほど入ってきた一人客がカウンターの最奥に座り、店主と小さな声で喋っているのだが、何か様子がおかしい。店主の表情がこわばっている。現金でも要求されているのか?


カウンターの奥で見えないが、手元には何やら凶器を持っていると確信。


 テーブル下の雑誌を開き、食事と雑誌に夢中を演じ、顔をふせたままその男を見る。その男は周りの客の様子をチラチラとうかがっている。やっと顔が見えたが知っている顔であった。


 そう、凶悪指名手配犯であったのだ。


このまま会計を済ませて外に出てから、応援を呼ぶのが妥当だ。急いで食べ終え、

「おやっさん、お会計。」目を逸らしながら声をかける。


 今店内には、店主、凶悪犯、女の子と、4人。レジは奥にあるので支払いに向かうと、凶悪犯はこちらを睨んでいる。目を合わさず千円ちょうどを渡して早々に振り返ろうとすると、


「おいお前、怪しいな。ここに座ってろ。」と隠れている方の手をぶらつかせる。そこには刃渡り30センチはあろうか、サバイバルナイフちらつかせた。


 刃物は悪意を持った者が持つと禍々しいオーラを纏い、幾倍の大きさに感じる。威圧感で身体が固くなるのが分かる。言われたとおりに座り、何かあった時に女の子を守れるよう考える。

 女の子は本に熱中してこちらのやり取りに気づいていないのが幸いだ。最悪の場合、女の子に飛びついて抱き寄せればなんとか守れるか。


 しかし、犯人は女の子の座るテーブルの向かいに腰を下ろした。


犯「お嬢ちゃんはここの子供かい?」

 優しい口調だが、おぞましい笑顔に女の子が固まる。


犯「少しお嬢ちゃんを借りるよ。」片手にナイフ、空いた手で女の子の腕を掴んだ。

 店主は慌てて現金をかき集め、男の前に差し出す。


 信護は犯人が現金を取ろうと女の子の腕を離した瞬間、女の子に飛びついて身体ごと引っ張り寄せ抱きしめる。


ドンッと背中に衝撃が走り、外に走り出そうとしたが転んでしまった。


「おおぉー!!」激しく叫び声を上げながら店主が犯人に襲い掛かる。店主の手には包丁が握られており、犯人の背中を突き立てた。


 犯人は振り返りざまに店主の喉を引き裂いた。


色彩が無くなり店内がセピア色になったかのよう、大量の血を撒き散らし店主は倒れ込んだ。



 信護は女の子を連れてこの場から離れなければと思うが、身体が動かない。


犯人が倒れ込む姿が見え、背中には墓標のように包丁が深々とそそり立つ。


 抱きしめていた女の子に「外に逃げろ!」と手を離した。女の子も動けない。


俺は情けない!警察官でありながら体が臆するとは何事だ!心の中で叫びながら力を振り絞った。ズルリと手が滑り、周りを見渡すと自分の周りに血の海が広がっている。


 女の子に目をやると無事だ。これは俺の血なのか。どうやら女の子を引き寄せる時の衝撃、背中から刺された事に気づいた。


店の奥から出てきた母親らしき女性が、叫びながら女の子を抱きしめて外に連れ出した。


これで一安心だ。体の力がどっと抜け… た…


次のお話は「㉓話 イクサ」

医の戦になります

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ