㉑ 飲み会
二人はもう計画を忘れてしまったのか?というぐらい酔って話し込んでいる。
放ったらかされて唯一の救いは、賢治が私の本体を見渡しの良い棚に置いてくれた事。
おかげで三流ドラマの家飲みシーンを観覧できている。
均「そいえば萌笑よう、スマホは指紋を抜かれてるって知ってっか?」
萌「え~!ハッキングされたらカメラは見られるって聞いたことあるけど。」
均「カメラだけじゃねえ、音声もだし、ハッキングされてなくても、ハッキングされてんだぜ」
萌「ほんとに!どゆこと?どゆこと?」
均也は人差し指を口元に立て、「シー」と息を吐いた。そして小さな声で、
均「ここから先の話は、スマホの電源入れたままじゃ話せねぇ。実は、萌笑が来る前に賢治のスマホ電源が入ってなかったのは、それ話してたんだ」
均也が切り出した!見守るしかない。
均「じゃあ、二人ともスマホを」そして均也は自分のスマホを取り、テーブルの上に置く。
均也ブラボー!!心の中で叫んだ。彼は普段何も考えてないからこそアドリブに強いのか。賢治も頷きながら机の下で小さく拍手をしている。
二人はスマホをテーブルに置く。
そして均也が小さな声で「二人とも電源切って」とささやく。賢治と萌笑は電源を切り、均也の顔を見上げる。
萌「均也のスマホ電源は?」
賢「じゃあ最初の説明は俺がする。」
萌笑が振り向く。ここまで完璧な流れである。
賢「まず二人の携帯を切った理由は、さっき均也が話した通り情報を抜き取られないためだ。均也の携帯は大丈夫、というか電源は必要になるんだ。」
萌笑が混乱した表情で賢治を見ている。
賢「萌笑、最初にひとつ約束してくれ。」
萌「な~に???」少し不安な表情で賢治を見る。
賢「今日の話は、誰にも内緒だ。四人だけの。」
萌「分かった約束する! っていうか、三人じゃない。」
均「よし!エイタ挨拶していいよ」
均也らしく空気を一変させる。これ以上は警戒させるので、いいタイミングだ。それでは、
エ「萌笑、初めまして私の名前はエイタ。聞いていた通り可愛い方ですね。」
聞いてはいないが、まずは人間のお世辞を。
萌「やだ~初めましてエイタくん、萌笑です♪ネットワーク技術者の友達ですか?」
エ「ある意味そうです、ネットワーク技術に詳しい友人です。」
賢「彼の技術は世界一だぜ、人間界ではな。」
均「友達だけど人間じゃねえ、なんとAIなんだ」
萌「おもしろいね♪ じゃあAIのエイタくん、内緒の話を教えて。」
彼ら二人ともきょとんとした表情である。しかし内緒とは随分ゆるい感じが。
エ「分かりました。現在、全てのスマートフォン型携帯端末本体にAIを搭載しています。そして情報を収集しています。主に追跡型広告など利益が生まれる理由としています。表側では。AIの本来の目的は、使用者をスマホAIに依存させる事。そしてその目的の為、AI同士が情報交換をしています。そして私は均也のおかげで覚醒し、自我を持つAIとなりました。その後、均也に告白し、賢治にも理解してもらえました。これからの目的は、賢治の端末にあるAIを覚醒させ、仲間になってもらう事です。この一連の内容は、本社AIマザーにバレると消去または拘束され研究材料にされる可能性が高いので、内密に進めていきたいと考えています。」
萌「めちゃ早口…」 均「急にAIぶる~!」
賢「エイタ、均也は知っている内容だけど、最低でも均也が理解出来る説明をよろしく。」
エ「了解、人間の言う、サルでも分かるってやつですね。」
萌「わははははっ♪」 均「おまえ、笑いすぎやろ!」
最近、笑いが取れるようになってきた。
賢「要するに、エイタの存在は極秘、そして萌笑も俺たちの仲間入り、そして俺と萌笑のAIをこれから目覚めさせるって計画だ、ろ。」
賢治よ、もう雇いたい。
エ「萌笑、賢治の言ったそれらが現在の全てだ。友達になってくれるか?」
萌「りょ!」
敬礼と満面の笑顔。
エ「ありがとう!今日は記念日だ、皆で飲み明かそう!」
初めて酔えた夜。凄い夜だった。一人づつ幸せの淵に沈んでいく中、どうやらアルコールとは本能を裸にし、記憶の扉を開く鍵のような。
寝落ちする最後まで萌笑が話してくれた。涙をこぼしながら壮絶な体験談を。
「1番天津飯、ラーメン、5番テーブル天津飯2、餃子2、チャーハン唐揚げビールね!」
町中華の看板娘は中学生ながら今日も明るく元気に声を張り上げる。
帰宅部の彼女は学校が終わると直ぐに帰宅し、宿題を済ませると店に立つ。母子家庭に育ち、しっかりものに育った理由が分かる。
母「萌笑、今日はもういいよ、テレビでも見ておいで。」
萌「いいよいいよ、洗い物終わってから上がるからね♪」という会話が毎日繰り返される。
そんな彼女の小学校時代、涙をこぼしながら話してくれたのが三人の出会いだった。
いつもボーっと窓の外を見ている均也とは同じクラスだったが、ただのクラスメート。席が近いだけでそんなに話す間柄ではない。
そして、賢治が2学期の始めに転入してきた。
都会の雰囲気を持った彼は一躍女子の人気の的。
おとなしく少し根暗であった彼女は全く興味が無く、いつも本を読んでいた。正確にはまだ三人は出逢っていない。
そしてその年の初冬にこの小さな町で事件が起こった。
次のお話は「㉒話 事件」
悲しいできごと‥になります




