⑰ 光灯る
(ピンポ~ン ガチャ)一応インターホンを鳴らすが、いつも通り鍵は開いている。
均「お~ウェルカム♪」
こちらの心配をよそに、のほほんとしてやがる。
賢「いつも通りじゃねーか、で、何事だ?」
勝手に冷蔵庫を開け、ビールを取り出す。長居確定だ。
均「まっ、とりあえずスマホ切ってくれ」
賢「どっからの情報だ?スマホの電源は切らん。」
均「じゃあ話せね~よ」
賢「ほんとめんどくせえ!」
すでに電源を切ったスマホを見せる。
均「よっしゃ!じゃあ話すぞ。長くなるけど、陰謀扱いせず最後まで聞いてくれ。」
まずゲームで繋がったAITの話、そしてそのAITは均也のスマホAIであるという事。
賢「おれは頭ごなしに否定はしないが、可能性から考えて誰かがお前のことをからかってんだろ。」
均「でもな、まだ続きがあるんだ」
そして話の内容は、AI同士が会話している事、そのAIに騙された事。
賢「AI同士の会話は実験的にしていると聞いたことあるな。そもそもプログラムは嘘なんかつかないが、もし本当に騙されたならそれは人間が操作しているだろう。騙されたってなぜ分かった?」
均也はきまりが悪い感じで麗子とのパクチー事件を打ち明けた。
賢治はギクリとした。麗子がパクチー嫌いなのを知っていたのである。元カノだから。
もし誰かが均也のスマホAIになりきっていたとしたら、俺ぐらい均也の事を知っていなければ騙せない。なにより麗子の事も知っている。ハッカーがそれら情報を調べ上げたとしたら?いや、膨大な時間がかかるだろう。だがAIの話が本当なら可能かもしれない。
賢「とにかく、均也のスマホ電源を入れてみろよ。」
均「ダメだ、俺はエイタを許してない。もう話したくないし解約するつもりだ」
賢「エイタってAIに名前付けてんのかよ。それに許さないって騙されたからか? そもそも、お前も麗子とのデート、俺に隠して嘘ついてたろ。」
均「そやけど…」
賢「俺もお前に隠していた事がある。嘘ではないけど、麗子は元カノだ。短い間だけどな。」
均「なんで言ってくれんの⁉」
賢「聞かれてないからな。」
本当は片思いの相手、萌笑が均也しか見ていないことに腹を立て、均也が好きな麗子で仕返しをした。それは若かりし過ち、絶対言えない。
賢「とにかく、俺がエイタとやらと話してみる。貸せ、携帯。」
渋々とスマホを差し出す。受け取った賢治は少し沈黙する。
一応シミュレーションをしてみる。相手が人間だった場合、本当にAIだった場合も。
賢「じゃあ電源入れるぞ。」電源ボタンを長押しする。(フォンッ)
エイタの意識に光が差し込んだ。 (やっと精神と時の部屋から出られる!)
次のお話は「⑱話 クロ」
ドラえもんが出てきます♪