⑯ 地元
久しぶりの首都高、ネオンを抜けると急に静かな街へと変貌する。東京が騒がしいのは一部だけだと気づかされる。
しかし、俺のスマホまで電源を切って話がしたいとは重症だな。何が理由か?スマホから盗聴されているっていうのか?馬鹿々々しい。
奴の陰謀論好きには困ったものだ。
俺は何事にもシミュレーションが癖である。あらゆる問題点と可能性を模索し、対策を立てる。均也落ち込みの場合は、仕事大失敗か女問題だろう。均也を慰めるなら、久しぶりに萌笑にも連絡入れとくか。
萌笑とは、同級生で癒し笑顔の女の子、名前は出雲萌笑。三人とも小学校の同級生で、いつも均也の宿題の世話をしていた。実は賢治の片思いの相手である。
萌笑は均也に思いを寄せていると賢治は思っていたので、告白できず誰にも言っていない。
卒業後も三人で会っていたが、最近は会っていない。というのが均也も大人になり落ち込むことが少なくなった。彼女は均也を元気付ける時に必須の存在なのだ。
(久しぶり!近々三人でメシでも行こうぜ。)とりあえずSMSでメッセージを送っておく。
高速を降りると、小学校時代に過ごした街。随分と栄えて知らない店が増えたが、懐かしい土の匂いは変わらない。
毎日行った駄菓子屋の跡地、お楽しみ会の練習をした公園、萌笑の親が経営している町中華を通り過ぎると均也のマンションに到着。
路上駐車という言葉が無い街、邪魔にならなさそうな所に停め、均也の部屋に向かう。
次のお話は「⑰話 光灯る」
はい!予想通りです♪