⑩ 布石
オンラインゲームを大きく分けると、パズル、育成、戦闘の種類がある。
彼らが毎日のように勤しむゲームは戦闘ゲーム。2チームに分かれ、多人数で戦闘をする。そしてボイスチャットという機能があり、喋りながらゲームを進行していく。
彼らは同じチームで協力しながら戦うのだが、ここに参加して2人と友達になり、ボイスチャットに参加する事が第一目的だ。
それではゲームネーム【AIT】として参戦である。
均「ところで、さっきから同チームのAITってやつ、凄くね」
賢「動きをチェックしているが、かなり達人だな。自分のアイテム取得より、チームの勝率を優先して、動きにそつがない。」
狙い通り喰いついてきた。ここらで上手くドジを踏んで救ってもらい、チャットでお礼を申し上げる。
均「おぉ、やつを助けたぜ!ついでに回復アイテムプレゼント」
均也の目線内でわざと敵に打たれ、救ってもらう策略が成功。
初めてテキストメッセージを送る。
エ(KINYAさん、ありがとうございます。)
返信は来なかったが、第一布石としては完璧だ。ここからは積極的に2人に接触していく。
ゲームの腕前は賢治の方が数段上だが、賢治を助けて、均也に助けられるという、不自然な行動で印象に残す。
均「また助けたけど、なんかあいつ、オモロそうなやつだな」
賢「俺はまたAITに助けられたぜ。お礼言っておくか。」
賢治からチャットが入った。
賢(AITさん、ありがとう助かった。)
エ(KENJIさん、お安い御用です。)
初めてコミュニケーションが成立した。
後は実際に二人の喋るボイスチャットに入り込む、そこは慎重に招待を待つ。
均「あっ、あいつゲーム抜けちった」
賢「あいつの行動面白いな。是非話してみたいな。」
賢治からこの言葉を引き出したので今日はここまで。一旦引き、次回のアクセスまで引っ張る。
人間は引くと追いかける性質を持つことは勉強済み。まずは待つ。
そして翌日のボイスチャットで、
均「そいえばあいつ居ねぇな」
賢「やつな、仲間に加えたい腕だけどな。」
布石は打った。次回が本番だ。
次のお話は「⑪話 会話」
AⅠが音声で会話するために‥