花が咲いたよ
また花が咲いた。
ある日、私の首に咲いた花。
初めて見つけた時、茶色くて小さくてイボかと思ってすごく嫌だったけど
やがて緑になって気味が悪くなって
でもそれが開いて蕾だったと分かると私は嬉しくなった。
そして、花が咲いた理由にも。
彼に恋してたんだ。
花は私の体に次々、咲いた。頭、首、耳のうしろ。鎖骨に咲いた花は白く美しく
地味な私を多分、二割り増しぐらい可愛く見せてくれた。
大学では本当に咲いているんだって信じて貰えなくて
からかわれもしたけど、みんな、そういうキャラとして受け入れてくれた。
何より、彼が笑ってくれて、花が彼と話す切っ掛けになってくれたんだ。
病院に行く気は全くなかった。
だって、サンプルが欲しいとか何とか言って絶対、取られちゃうでしょう。
私を飾る綺麗な花。大丈夫、守ってあげるからね。
そう思い、撫でてあげたらと花も喜んでいるような気がした。
確かに私も少しは不安に思うこともあったけど、でも平気だった。健康に影響はなし。
引っ張られると根付いているみたいに、ぐいーんと伸びる。痛みはなし。
でもやめて、引っ張らないでと私が言うと彼は笑った。
つけたままでして。そう言った。彼と初めて入ったホテルの夜のこと。
それから何度も抱かれた。何度も。
抱かれるたびに、花は大きくなり、増え
それに白から赤や紫に青に色づき私を彩ってくれた。
でも花は散った。
栄養が足りなかったんだ。
愛が。彼が愛をくれなかったから。
大きくなったおなかのその下、彼を見下ろし私はそう思った。
首も頭も顔も胸も裂いた。
壁も床も彼も全部が真っ赤に花咲いた。