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7.顕現



 トラップを感知して、先へと進む。

 ――――もちろん解除した魔力の残滓に、手で触れるのを忘れない。


「タマー? 何してるの、行くよー?」

「あ、はいー! すぐ行きます!」


 一応奥の手として、備えておかないとな……。

 みんなにこれを話していないのは、ぶっちゃけこの行為(・・・・)が、不確定要素だからだ。


「教えてもらった通り、出来ればいいけど……」


 そう呟きつつ、再び罠を予想する。

 そして通路にて二つ罠を解除して大部屋に入った直後だった。



『ぐぅぅぅ~~~~~ッッ! 先ほどから邪魔ばかり! もう――――我慢なりませんわッ‼』



 突如として。

 部屋の中央の空間に、『亀裂』が入る。


「……っ⁉」


 邪悪さの中にも高貴さを思わせる声と共に、ソレは姿をあらわした。

 全員一気に警戒態勢に入り、眼前の影を見やる。


「お前、が……!」


 それはまさしく。

 このダンジョンの主であろう。

 これまで聞こえていた声と、ぴたりとイメージが合致した。


 すらりとした体型。立ち姿捺してはすめしと似ているが、足をクロスさせていたり、手を優雅に組んでいたりと、所作に優雅さを秘めている。

 百七十センチほどの身長だからか、俺と視線がばっちり合って。

 そのせいか、怒りがまっすぐに飛んできた。


 黄金のストレートロングの髪に、同じく金色(こんじき)の瞳。

 色白な肌は怒りのせいか魔力のせいか、やや淡く発光しているようにも見えた。


 薄淡いドレスをまとった美女は。

 あまりにも不釣り合いな暴言を、美しき声と美しき発音で言い放った。


「この――――イカレ〇〇〇野郎め! そのつっかえねー一本鎗を叩き折りますわよッッ‼」

「え、えぇ~……」


 月見 球太郎の周り、〇〇〇を躊躇せず言える女性多すぎ問題。


「失礼な! タマの〇〇〇は使えるよ! 立派だったよ!」

「私もそう伝え聞いているわ! 彼の〇〇〇は、カチカチで、平均くらいには立派だったと!」

「わっ、わたしは知りませんけれど、タマせんぱいのお〇ん〇んは、きっと硬そうな気がします……!」

「お前らちょっとは羞恥心を持とう⁉」


 このダンジョンのラスボス(?)を前にして、何とも緊張感のない我らがパーティだった。

 気を取り直して俺は、眼前に突如として現れた彼女を睨む。


「と――――とにかく!

 お前の目的はなんだ⁉ どうして俺たちをトラップまみれにしようとする⁉」


 困惑しながら俺が言うと、黄金の女は怒りの顔のまま言った。


「それは……、そこの女を支配するためですわ!」

「え? そこの……おんな……?」


 綺麗な指の先は。

 騎馬崎 駆馬を指していた。


「……ん⁉ ボク⁉」

「そうよ! あなたですわッ!」


 この場にいるメンバーの誰よりも驚くカルマさん。

 眼をぱちぱちさせる彼女へ謎のお嬢様風味美女は向き、綺麗な地声からは想像できないほどにドスのきいた声で言う。


「あなたを支配するために、わざわざワタクシはヒトの姿になったのですわよ!」

「はぁ~~~~~~っ⁉」

「あの、縦横無尽にダンジョンを駆け、破壊と共に魔力をまき散らしていく艶姿! それはまさに麗しき獣! たまりませんでしたわ!」

「麗しいのも獣なのも、どっちもキミだと思うんだけど……」

「ってことはつまり……」


 二ヵ月ほど前に俺を助けたカルマさんを見て、こいつは意志を持ったってことなのか……?


「同じ種族の姿で上に立つことで、徹頭徹尾分からせる! こんなにも完全なる支配はありませんわ!」

「そんな理由で……?」

「カルマせんぱいを支配するって、どういうコトなんです~……?」


 すめしたちの疑問に彼女は「オホホ」とプチ高笑いをし、悦に入った。


「支配……、そう、支配です! ワタクシがあなたを支配し、身も心も、全てこのダンジョンの中で溶け合い、一つの意思になり生きていく……! アァッッ! 最ッ高ですわよ~~~~ッッ‼」

「言ってることがめっちゃ狂気的⁉」


 なんかとんでもないことを言っていた。


「なるほど~……。好きな人とどろどろに溶け合いたい気持ちは、分かるかもです……」

「くっ! 敵ながら素晴らしい思想を持っているわね……!」

「納得しかけちゃう理由だね……!」

「おうふwwwうちのパーティ、おかしいでござるwwwwwwwデュフwwwwww」


 倒錯的なメンツしかいねえ。

 何がどうしてこんな空間になってしまったのか。


 頭を抱えていると。

 ギャグの空気を終わらせると言わんばかりに、敵対する彼女の魔力が膨れ上がった。


「タマ、構えて!」

「え――――」


 カルマさんからの注意と同時。

 視線の先から一筋の光が飛来する。


「なっ……!」


 俺の頬をチュン! とかすり壁へと突き刺さるソレは。

 一本の神々しい弓矢だった。


 そして。

 その矢の鋭さに負けない声が。

 俺たちに突き刺さる。



「――――ワタクシの名はトゥトゥリアス」



 先ほどまでの馬鹿げた高笑いとは完全に別種の声質。

 明らかに敵対の意志を示す(こえ)を持ってして。

 彼女は名乗りを上げた。


「異界を作りし形天海(ハズルバ)帯着土(ヤージュ)の狭間にて芽吹いた、意思を持つ(トラップ)


 紡がれる言葉と共に。

 一つ。また一つと。彼女は自分の周囲に矢を召喚していく。

 十本以上の(ひかり)が舞い踊る中。

 金の瞳の麗罠(れいびん)・トゥトゥリアスは、明確な敵意を持った後。

 俺を――――俺たちを、正面から見据えた。


「神々の城を守りし数多の罠にて、貴様らに存在としての違いを教えて差し上げますわッッ‼」


 戯れはここに終わり。

 最後の激闘の幕が上がる。


 俺は。

 掌に魔力を込めた。





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