表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
98/112

当然の報い《ヘレス side》

「魂に干渉し、苦しめるなんて……神のやる事とは、思えん……」


 会ったこともない神に幻想でも抱いていたのか、国王は失望感を露わにした。

『一体、何を期待していたんだか……』と呆れつつ、俺は嘲笑を浮かべる。


「生憎だが、俺達は破壊神なんでね。慈悲の心なんて、持ち合わせちゃいねぇーよ」


「大体、先に一線を越えてきたのは貴方達でしよう?メイヴィスちゃんを殺さなければ、こんなことにはならなかったんだから」


 怒りを通し越して呆れたのか、アイシャは『自分達のことを棚に上げて、何を言っているの』と溜め息を零した。

正論を突きつけられた国王は、返す言葉もないのか、悔しそうに口を閉ざす。

メイヴィスの件を持ち出されると、強く出られないらしい。


「世界の平和を壊したのは、貴方達よ。目先の欲望に囚われて、禁忌を犯したのだから」


「確かにそうだな……否定はしない。ワシは愚息の暴走を止めるどころか、煽ってしまったのだから。『都合のいい操り人形が聖女になってくれれば、国の利益に繋がる』と思ってしまったのが、運の尽きか……」


 意外にも潔く罪を認めた……いや、開き直った(・・・・・)国王は『さあ、殺せ』と言わんばかりに天を仰ぐ。

みっともなく喚き散らすことも、命乞いをすることもなく死を待つ彼に、俺は思わず舌打ちした。


 そうやって、命を差し出せば何でも許されると思ってんのか?だとしたら、実に愚かだな。

死んでも尚、俺達の復讐は終わらないのに……むしろ、地獄に来てからが本番とも言える。


「まあ、情けない絶叫や悲鳴は後で(・・)じっくり聞くとするか」


 『時間はたっぷりあるんだから』と自分に言い聞かせ、俺は歩みを進めた。

玉座の前で足を止めると、俺は国王の胸元に手を伸ばす。そして────彼の魂を鷲掴みにした。


「ぐはっ……!?」


 肉体に危害は加えていないというのに、国王は吐血した。

返り血まみれになった自身の手を見下ろし、俺はニヒルに笑う。


「まあ、せいぜい苦しめよ(楽しめよ)」 


 その言葉を合図に、俺は邪悪に染まった神聖力を国王に流し込んだ。


「ぁ……がっ……ぐぎぃ……」


 魂に直接注入したせいか、国王は痛みのあまり喉元を掻きむしる。

焦点の合わない目には血の涙が滲み、口端から白い泡を溢れさせた。

やがて、体を支える力もなくなり、玉座に倒れ込む。


 生きた人間の魂に神聖力を注ぎ込む行為は、拷問と変わらない。

症状は異なるものの、大体が拒否反応を起こし、死に至るから。

普通の人間では、神聖力の負荷に耐えきれないのだ。


「あ゛ぁ……ぐっ……」


 まだ死んでいなかったのか、国王は必死に酸素を貪る。

痛みに呻く彼の体内で、神聖力は容赦なく暴れ回った。

全身の血液をお湯のように沸かし、細胞組織を尽く破壊する。まさに拷問のような仕打ちだった。


 まあ、メイヴィスを追い詰めた犯人の一人と思えば、当然の報いだが……。


 白目を剥いて気絶する国王に、同情心なんて一切湧かなかった。

『最後の最後まで苦しみ抜いて死ね』と吐き捨て、俺は踵を返す。


「帰るぞ、アイシャ」


「あら、もういいの?」


「ああ。どうせ、後でいくらでも痛めつけられるからな。『今』にこだわる理由はない」


 手についた返り血をズボンで拭きつつ、俺は歩みを進めた。

『それもそうね』と納得するアイシャを前に、俺は大量の神聖力を引き出す。

そして、彼女の腰を抱き寄せると────天界へ帰還した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ