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情けない《カシエル side》

「どれだけ頑丈な扉であろうと、問題ありません。人間の作り出した物など、たかが知れていますから」


 『所詮はただの悪足掻きに過ぎません』と主張し、私は手のひらを前に突き出す。

そして、黄金の光を放つと────観音開きの扉は勢いよく吹き飛んだ。

内側へ倒れ込んだ二枚の分厚い板は、ガンッと音を立てて床に落ちる。

あっさりと障害を取り除いた私は、『悪足掻きにすら、なっていませんでしたね』と呟いた。


 神の力に敵うとは、思っていませんでしたが……こんなに早く、突破出来るとは。

随分と呆気ないですね。行く手を阻む聖騎士()も、一人しか居ませんでしたし……。


 『つまらない』と肩を竦める私は、室内に視線を向けた。

嫌でも目に付く高価な家具を一瞥し、私はキョロキョロと辺を見回す。

『秘密通路でも使って、逃げたのか?』と思案する中────執務机の後ろに隠れる男性を発見した。


「ハワード、教皇はあれですか?」


「……はい、そうです」


 なんとも言えない表情で頷くハワードは、気まずそうに視線を逸らす。

『元』とはいえ、上司の情けない姿を見るのは色々堪えるらしい。


 まあ、確かにちょっと期待外れではありますね。

まさか、机の後ろでビクビクしながら、こちらの様子を窺う根性なしだとは、思いませんでした。


 『トップに立つ器ではありませんね』と吐き捨て、私は僅かに眉を顰める。

すると、教皇は何を思ったのか、机の後ろから這い出てきた。


「ひぃぃぃいいい!!ご、ごめんなさい!!ごめんなさい!!もう馬鹿な真似はしませんから、どうか命だけは……!」


 業火で燃える体に鞭を打ち、教皇は床に額を擦り付ける。

保身のことしか頭にない彼は、実に自分勝手だった。

どうやら、自分の身を犠牲にして、世界を救う気概はないらしい。


 まあ、教皇一人の命で贖えるほど軽い罪はありませんけどね。

どんな形であれ、人間達にはきちんと責任を取ってもらいます。


「今更、謝られても困りますね。許すつもりは毛頭ありませんし。何より────貴方の謝罪には、誠意がありませんから」


 『助かりたい一心で謝っているだけでしょう?』と零し、私は肩を竦めた。

(ことごと)く選択肢を間違える教皇に呆れ返る中、彼は驚きの行動に出る。


「────は、ハワード……!お前からも天使様に頼んでくれ……!私を許してやってくれ、と!」

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