教会本部《カシエル side》
レーヴェン様たちと別れ、教会本部へやって来た私とハワードは、敷地内へ足を踏み入れる。
暴動でも起きたのか、木は薙ぎ倒されており、地面も抉れていた。
荒れ果てた庭を一瞥し、私は建物に目を向ける。
「全く……酷い有様ですね。まあ、神の教えに背いた愚か者共には、ちょうどいい住処かもしれませんけど」
息を吸うように毒を吐く私は、教会の変わり果てた姿に目を細めた。
紅蓮の炎で覆われた建物は廃墟のように朽ちており、神聖さの欠片もない。
かつての姿を知るハワードは、驚きのあまり呆然と立ち尽くした。
「ど、どうしてこんな……」
言葉にならないといった様子で頭を振るハワードは、膝から崩れ落ちそうになる。
フラフラと覚束無い足取りで前へ進む彼に、私は声を掛けた。
「気をしっかり持ってください。ここは一応、戦場なんですから。周辺を警戒しないと────」
そこで一度言葉を切ると、私は茂みから飛び出してきた騎士の男性に目を向ける。
「────不意討ちをくらうかもしれませんから。今のように、ね」
勢いよく剣を振り下ろす男性に、私は力を奮った。
レーヴェン様より譲り受けた力は、黄金の光を纏い、男性目掛けて飛んでいく。
そして────炎で爛れた男性の皮膚を突き破り、あっという間に心臓を貫いた。
「がはっ……!」
大量の血を吹いて倒れる男性は、恨めしそうにこちらを睨みつける。
「何故、世界の平和を……壊そうとするんだ……」
「神の創造物に過ぎないあなた方が、メイヴィス様を害したからですよ。当然の報いでしょう」
『何を言っているんだ?』と言わんばかりに正論を叩きつけると、男性はグニャリと顔を歪めた。
「それ、は……悪かったと思っている……私達が間違っていた……でも────人の過ちを正し、許すのが神の役目だろう……?」
素直に罪を認めたかと思えば、男性はよく分からない言い分を口にする。
澄んだ瞳でこちらを見つめる彼に、私は呆れ返った。
神と対話したこともない人間が、何を言っているんだか……我が物顔で神を語るのは、やめて欲しいですね。正直、吐き気がします。
「人の過ちを正し、許すのが神の役目ですか……とんだ、戯れ言ですね。何をどう解釈したら、そうなるんですか?神は人間にとって、都合のいい生き物ではありませんよ?」
『寝言は寝て言え』と言わんばかりに、私は容赦なく現実を突きつけた。




