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幸せの定義

「では────聖女誕生に使われてきた世界は全て滅びてきたのですか?」


 一通り説明を聞いて、真っ先に思い浮かんだ疑問を、私はそのままぶつける。

コテリと首を傾げる私に、ヘレス様は難しい顔つきでこう答えた。


「いや、大抵の場合(・・・・・)は────聖女の夫が世界を保護し、神聖力で新たな結界を作る。実際、俺もそうしたからな。アイシャの故郷だと思えば、愛着も湧くし」


 『そのまま消滅させるケースは極稀だ』と主張するヘレス様は、ガシガシと頭を掻く。

────と同時に、アイシャさんが補足説明を付け足した。


「私の故郷はそこまで信仰心が厚かった訳じゃないけど、言い伝えの内容はきっちり守っていたわ。だから、保護対象として扱われたの────こう言ってはなんだけど、聖女を酷く扱う世界は少ないから……」


 まあ、普通は神の紋章まである娘を殺そうとは思わないものね。

どうせ、二十歳の誕生日になれば消えるのだから、適当にもてなすのが吉でしょう。

世界の存続は、聖女と神様の采配に掛かっているのだから。


 『アイシャさんの故郷の人々は賢明な判断を出来たのね』と、私は肩を竦める。

自分の故郷に住む人々を思い浮かべ、私は『あと二年我慢すれば、良かったのに……』と項垂れた。

愚かな決断をした人々に複雑な感情を抱く中、旦那様は話の軌道修正に入る。


「まあ、何はともあれ────あの世界はもう壊れかかっているんだ。僕達が危害を加えなかったとしても、そのうち滅びる。一応、世界の崩壊を止めることは出来るけど、今までのように豊かな生活を送ることは出来ない。常に自然災害に見舞われ、困窮した暮らしを送ることになるだろう」


 『不幸になるのは変わらない』と語り、旦那様は説明を終えた。

赤色の球体を消滅させる彼の横で、私は物思いに耽ける。


 世界崩壊を食い止めても、結局不幸になるなら意味がないわよね……。

辛くて苦しい思いをするくらいなら、いっそ死んでしまった方がいいかもしれない……天界に来て、輪廻転生すればまた新しい人生を歩める訳だし……。

でも、幸せの基準は人それぞれだから、一概にもこうとは言えないわね……。

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