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説明

「私は偽聖女の濡れ衣を着せられた後、騎士達に地下牢まで連行され────トリスタン王子に『身も心も私に捧げると誓うのなら、助けてやる』と言われました」


 当時の状況を思い返す私は、苦々しい表情で話を切り出した。

今でも鮮明に覚えているトリスタン王子の言動に、私は憤りを感じる。

『あれほど屈辱的なことはなかった』と嘆く中、旦那様は驚いたように目を見開いた。


「な、なんだって……?」


 衝撃のあまり固まる旦那様は、パチパチと瞬きを繰り返す。

カシエルやハワードも動揺を隠し切れないようで、オロオロと視線をさまよわせた。

『神の花嫁になんてことを……』と絶句する彼らの前で、私は再度口を開く。


「正義のヒーロー気取りでふんぞり返るトリスタン王子に対し、私は怒りを抑えきれず……『貴方のものになるくらいなら、死んだ方がマシよ!』と啖呵を切ってしまいました」


 『もっといい切り返しがあった筈なのに……』と反省しつつ、私は当時の心情を振り返った。


「旦那様以外の方に娶られることだけは、絶対に避けたかったんです……私は旦那様一筋なので。何より────トリスタン王子には、反省の色というか……後悔が一切ありませんでした。神の教えに背き、ハワードの命を奪ったにも拘わらず……です。それがどうしても、許せませんでした」


 『助かる道はあったが、自分の意思で死を選んだ』と正直に語り、私はそっと目を伏せる。

後ろめたい気持ちでいっぱいになる私は、皆の顔をまともに見れなかった。


「その後、トリスタン王子に何度も説得をされましたが、私は頑なに応じず……結果、火あぶりの刑に処されました。下界での記憶は、民達に石を投げつけられたところで途切れています」


 絶望に染まった最期を思い出しながら、私は静かに説明を終える。

皆の反応が気になったものの、『どうでしたか?』などと聞ける勇気もなく……私は固く口を閉ざした。


 皆は下界での出来事を……自分の意思で死を選んだ私のことを、どう思ったのだろうか?

『妥当な選択だ』と納得してくれた?それとも────『我慢が足りない』と軽蔑した?

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